フェラーリチャレンジストラダーレ
2025年12月 60.323km時 コーンズにてタイミングベルト交換、点検記録資料17枚、備品、スペアキー他揃っております。
2003年3月のジュネーブショーでデビューを飾る「チャレンジストラダーレ」は、ワンメイクレース用のサーキット専用モデル「360チャレンジ」のルックスをもった「360モデナ」に過ぎないと思われていた。しかし、その広報資料には「360モデナ」を上回る性能データが並び、開発に当たっては全てに於いて性能を第一に置き、余分な装備を省いたロード・ゴーイング・レーサーである事が明らかにされている。これは創業主エンツォ・フェラーリ亡き後を引き継いで、1990年代初頭から始まったルカ・ディ・モンテゼーモロ主導によるフェラーリ改革を経てデリバリーされてきたフェラーリ製のロードモデルが、それぞれ高性能であることを継承しながらも、日常での高いコンフォート性能とラグジュアリーな方向性を盛り込んだ造りにシフトしてきた事に着目。”生産台数が限られる「288GTO」「F40」「F50」の様なモデルが見せたピュアでベーシックなフェラーリへのノスタルジアから、性能向上に寄与しないあらゆる装備を省略し、公道走行可能なレーシングモデルというピュアな本質を取り戻したモデルとして「チャレンジストラダーレ」を誕生させた“と、広報資料には開発秘話が綴られている。創業主エンツォ・フェラーリがアルファロメオのレーシングドライバーだった事に始まり、レーシングモデルのコンストラクターでもあるフェラーリによるピュアな往年のロードモデルへのオマージュは、”ミッレミリア“や”タルガフローリオ“に代表される、人気のあるロードレースが盛んだった1950年代〜60年代を中心としたイタリアならではの歴史的な背景によるところも影響している。フェラーリによるこの時代のロード・ゴーイング・レーサーが、数々のレースに勝利し、モータースポーツとの深い繋がりをもち、創業主エンツォを亡くしても、その歴史と伝統を引き継いでレース活動を主軸としながら高性能ロードモデルの開発を続けてきた。2002年9月のパリサロンに於いて、当時の持てる技術と最先端のマテリアルを駆使し究極のロードモデルとして「エンツォ・フェラーリ」を発表したフェラーリは、ひとつの達成感とともにその反動からレーシングモデルのピュアな本質を感じさせる往時のロード・ゴーイング・レーサーを、スモール・フェラーリ・シリーズで再現する事を発案、発表されたモデルが「チャレンジストラダーレ」となる。フェラーリ主導のワンメイクレースで使われるサーキット専用モデル「360チャレンジ」や、フェラーリが設計を担当するコンペティションマシン「360GT」から多くのノウハウをフィードバックしてピュアでスパルタンな方向性を目指して開発が進められたモデルとなっている。フェラーリは、1993年から「348」を使ったワンメイク・レース・シリーズ、”フェラーリ・チャレンジ“を開催しながらアマチュア・エンスージャスト・ドライバーの夢を現実のものとする活動を続けている。それはフェラーリ本社及び、各国のインポーターのバックアップにより開催されるワンメイク・レース・シリーズで、1994年には北米で、1995年からは日本でも本格的なシリーズ戦として開催されてきた。「348」のモデルチェンジに伴い、ヨーロッパでは1995年から「F355」に競技車両は変更され、2000年からは「360モデナ」に切り替わり開催は継続されている。このワンメイク・レース・シリーズで使われてきた車両は、基本的に世界共通の厳格なレギュレーションの下でコントロールされ、エンジン、ギアボックスはノーマルのまま、ECUも限定され改造は認められていなかった。サーキットを安全に走行する為のロールバーや消化器、バケットシートを含め、レース用サスペンションパーツ、タイヤなどの専用部品もフェラーリが直接指定したパーツの使用が義務づけられていた。レース車両は「360チャレンジ」からはサーキット専用車としてホワイトボディからフェラーリで製造されるようになり、限りなく理想的なイコールコンディションの中で、ドライビング・スキルを競う激しいレースが展開されている。またこの「360チャレンジ」をベースとし、そのパフォーマンスを更に高めた「360GT」は、「F40LM」や「333SP」などフェラーリの競技用マシン製作で深い関係をもつレーシングカー・コンストラクターの”ミケロット“が製作したFIA-GT選手権の、”N-GTクラス“をはじめとする様々なカテゴリーでも活躍を見せ、勝利を挙げたモデルで大型のウィングスポイラーを装備するのが特徴とされている。これらのレーシングモデルから得られた技術により開発が進められた「チャレンジストラダーレ」は、車名に含まれる”ストラダーレ(イタリア語で”公道“を意味する言葉で、ストリート・バージョンを表現する場合に用いられる)“が示す様に、公道走行が可能な「360チャレンジ」という意味だけに留まらず、フェラーリ・ロードモデルの未来への挑戦を含んだ車名とされている。またライバルともいえるポルシェは、フェラーリ同様にモータースポーツとの深い繋がりをもち、既に自社が主導するワンメイク・レースは1986年の「944ターボ・カップ・レース」を経て「カレラ・カップ」として開催されている。リーズナブルなコストでレースへの間口を広げながら安全性を確保し、フェラーリより早い時期から技術のフィードバックをレースフィールドからロードモデルに行い、高性能な限定モデルの開発から販売へと結びつけていた。2000年を迎える直前に「911」伝統のフラット6エンジンが水冷化されると、それを搭載した「996型カレラ」に高性能モデル「GT3」を設定、更なる進化モデルの開発が噂される後期型の「996型GT3」に、かつての「ナナサンのRS」を思わせるエクステリアをもつ「GT3RS」を「チャレンジストラダーレ」が発表された同じ年の9月のフランクフルトショーでデビューさせている。期せずして「チャレンジストラダーレ」に搭載されるエンジンと同様にチタン製コンロッドを採用し8000rpm以上回る「GT3RS」に搭載されるM96/79型エンジンは、最高出力こそベースモデルの「GT3」と同じ381馬力に留まるが、軽量化されたフライホイールにより俊敏なレスポンスを誇り、強力なトラクションとボディの軽量化等により「チャレンジストラダーレ」とほぼ同等の加速力と最高速度をアピールしていた。フェラーリは「チャレンジストラダーレ」により”V8スペチアーレ“というカテゴリーを生み出し、ベースモデルが更新される度に、そのモデルの末期にピュアなモデルを開発し数量限定で販売、シリーズ化するとポルシェも同様に世代が替わる毎に新たな「911GT3RS」を開発、更新しながら両車は鎬を削る関係を築いている。 「チャレンジストラダーレ」を開発するにあたりフェラーリは、全長3kmあまりのフィオラーノテストコースのラップタイムを、ベースモデルの「360モデナ」から”3秒短縮“することを目標として掲げていた。「チャレンジストラダーレ」のフォルムは、カロッツェリア・ピニンファリーナのダビデ・アルカンジェリによるボディラインを活かしながら、サーキット走行に於ける効果的な空力のフィードバックが取り入れられている。フロントバンパーのエアインテーク部分は、ロードモデルの「360モデナ」がもつ格子型から、メッシュグリルへとデザイン変更され、このエアインテーク下方のスポイラー部分は大きく張り出したデザインを採用、フロントバンパー及びリアバンパーは「360チャレンジ」と同じ工法で造られる軽量タイプに変更されている。併せてボディサイド下方は、スカート状のフラットな形状とされ、リアゲート後端にはダックテールの様にスポイラーが高く盛り上がったデザインとなっている。またリア下方に採用された本格的なカーボンファイバー製の大型ディフューザーにはスプリッターも装備。これらのエアロパーツとアンダーフロアの整流の見直しにより、Cd値はベースモデルと同じ0.355を維持しながら、ダウンフォース量は50%増やす事に成功している。テールライトが埋め込まれたリア・パネルは放熱効果に優れたメッシュ形状の通称”チャレンジ・グリル“が装着され「Challenge Stradale」のエンブレムが付く。リア・ゲートに備わるウィンドウ部分は、航空産業を手がけるゼネラル・エレクトリック(GE)社が開発した、軽量なポリカーボネイト樹脂の”レキザン“という素材が採用され、同じ厚さのガラス製に比べると55%も軽量化されたものとなる。このレキザンは、サイドウィンドウにも用いられ、手動によるスライド式サイドウィンドウも用意される。リア・ゲート両脇にレイアウトされたエア・アウトレットはオーバル状に開口され、カーボンファイバー製に置き換えられている。リア・ウィンドウから見えるエンジン上を横切るハッチゲートを補強する為の2本のバーもカーボンファイバー素材となるのは「360チャレンジ」と共通。ステー部分が細く長めの専用ドアミラーは、コンペティションモデル「360GT」と同様のデザインを採用した軽量なCFRP製となるが、ミラー部分はロードモデルらしく電動調整式となる。フューエルリッドは「360モデナ」ではボディに沿ったフラットな形状とされているが「チャレンジストラダーレ」では立体型の専用デザインが採用され、シルバーで小型の”跳ね馬“のチャームがレイアウトされている。フロントフェンダー上部サイドには、”フェラーリ・スペチアーレシリーズ“と同様に「スクーデリア・フェラーリ」の”跳ね馬“が描かれた七宝エンブレムが埋め込まれている。「チャレンジストラダーレ」のボディカラーに採用されるフェラーリ・ロードモデルのメインカラーとなる”赤“は、通常のロードモデルの”ロッソ・コルサ“に加え、”ロッソ・スクーデリア“とよばれる当時のF1マシンを意識した蛍光成分を含む特別な”赤“が新色として用意される。「チャレンジストラダーレ」は、数々の軽量化技術の導入によりロードモデルとしてエアコンを含む空調装置やエアバックを装備しながら110kgの減量に成功。パフォーマンスアップされたエンジン、足回り、効果的なダウンフォースを得るべく施された空力効果により、フィオラーノテストコースのラップタイムは”3秒短縮“という目標を超える”3.5秒短縮“を実現、フェラーリが誇る技術力の高さを証明する。「チャレンジストラダーレ」に搭載されるエンジンは、水冷90°V型8気筒DOHC40バルブのF131B型とよばれるもので、ボア×ストローク85.0mm×79.0mmから3586ccの排気量を得てドライサンプ式が採用されるのは「360モデナ」用エンジンと同様。1気筒あたり吸気が3本、排気が2本からなる5つのバルブを放射状に配置する「F355」由来のヘッドを装備、マーレ社製アルミ鍛造ピストンやパンクル社製チタンコンロッド、ニカシル皮膜が施されたスチール製シリンダーライナーも継承されている。このエンジンのアルミ製エンジンブロックは、1973年に発表されたスモール・フェラーリ・シリーズの起点となる「308GT4」に搭載された、ジュリアーノ・デ・アンジェリス技師の設計による”F106A型“に端を発するV型8気筒エンジンの最終進化型となり「GTO/F40」を経て、ここまでのV8エンジンと同じ94mmのボア間ピッチをもつ。F106A型エンジンと同様、タイミングベルトにより駆動されるカムシャフトには可変吸気・可変バルブタイミング機構を備え、作動するバルブは油圧式ラッシュアジャスターによりバルブクリアランスは常に適正値が保たれている。ボッシュ・モトロニック7.3燃料噴射装置とマニエッティ・マレリ社製電子制御スロットルを装備し、圧縮比は11.0から11.2に引き上げられ、吸排気系の見直しとECUの変更に伴い、最高出力は425馬力/8500rpm(360モデナに搭載されるエンジンと同回転数で25馬力アップ)、最大トルクは同一の38.0kgm/4750rpmを発揮する。これにより「チャレンジストラダーレ」は「360モデナ」と同じ“400馬力エンジン”を搭載するサーキット専用のレーシングモデル「360チャレンジ」のパワーウェイト・レシオ2.9kg/psを凌ぐ、2.8kg/psを達成している。搭載されるエンジンルームのインナーパネル、及びエアクリーナー・ケースはカーボンファイバー製に変更、小型化されたサイレンサーに加え、マフラーは4000rpmから開くバルブ機構を装備するチタン製とされ、ここでも軽量化へのこだわりを見せている。組み合わされるトランスミッションは、シングルクラッチ式のセミオートマチックトランスミッションの「F1システム」のみが設定されている。F1マシン直系のテクノロジーとして「F355」の時代から採用されているこの「F1システム」は「360モデナ」開発時には大幅なアップデートが図られ、電子制御スロットルが装備されることにより、ダウンシフト時に自動ブリッピングによる回転合わせが可能となり、スムーズで瞬時のシフトダウンを可能としている。加えて「F355」の「F1システム」では、マニュアルトランスミッション用のコンパクトな横置きギアボックスが流用されていたため、1速、2速をダブルコーンシンクロとするのが精一杯だったところを「360モデナ」用「F1システム」のギアボックスでは、1速と2速にはトリプルコーンシンクロ、それ以外は全てダブルコーンシンクロとされた「エンツォ・フェラーリ」と同じグラジアーノ社製の新型ギアボックスが採用されている。これは「360モデナ」では、リアにディフューザーを装備することから、より多くの空気の流れを確保する為にギアボックスをそれまでの横置きから縦置きに変更、これを機に「F1システム」をメインとしてギアボックスが新設計されシンクロナイザーの大容量化が図られてクラッチへの負担を軽減、滑らかな変速を可能としている。また「F1システム」用の油圧アクチュエーターの配置も設計段階からギアボックス右側面に組み込まれ、追加装備とされた「F355」時代からは大きく変化している。この「F1システム」は「チャレンジストラダーレ」に採用されるにあたり、ギア比は「360モデナ」と共通となるが、制御ソフトの書き換えと強化されたクラッチの採用により最速変速タイムを「360モデナF1」の250ミリセカンドから「エンツォ・フェラーリ」と同じ150ミリセカンドまで縮めるとともに、中間領域でのシフトチェンジが速くスムーズに行われるように進化している。オートモード(AUTO)の設定は無く、レーシング・スタートを意味するローンチ・コントロール(L.C)が新たに装備されている。リア・ディファレンシャルには機械式のLSDが装備されロック率は加速側、減速側ともに40パーセントとなっている。足回りは、前後ともにダブルウィシュボーン式となりスタビライザーを装備する。アーム類は全てアルミ製で「チャレンジストラダーレ」専用としてショックアブソーバーは強化されたザックス製の電子制御連続可変式を採用、コイルスプリングは軽量なチタニウム製となり、車高は「360モデナ」から15mm低く設定されている。コイルスプリングは20%、リア・スタビライザーは10%強化され、より姿勢変化が少なく明らかに硬めな乗り心地を特徴としている。高い制動力と軽量化の為にブレーキは、カーボン・コンポジット・マテリアル製のドリルド・ベンチレーテッド・ディスクを装備する。フロント・ディスクのサイズは380mm径×34mm(200馬力以上パワフルな”エンツォ・フェラーリ“と共通サイズ)、リア・ディスクは350mm径×34mmで、それぞれ6ポッドと4ポッドのブレンボ製アルミ・モノブロックキャリパーが組み合わされ、ABSを装備する。ブレンボと共同開発されたカーボン・コンポジット・マテリアル製のディスクは、フェノールレジンやシリコン・カーバイドを浸透させたもので、低温時でも制動力をしっかりと確保し耐摩耗性にも優れたものとなる。これにより「360モデナ」に比べ制動力は15%向上し、制動距離は5%短縮が図られ、重量は16%軽減されている。ホイールは「360チャレンジ」と同じデザインが採用されたBBS製となり、サイズは1インチ大径化され、フロントに7.5J×19インチ、リア10J×19インチサイズを装備。組み合わされるタイヤは「チャレンジストラダーレ」専用に開発されたピレリ製のP-ZeroCorsa Systemで、フロントには225/35ZR-19サイズが採用され、トレッド中心から左右対称パターンをもつディレツィオナーレを装備。リアには285/35ZR-19サイズの非対称パターンをもつアシンメトリコが装備されている。またホイールを固定する為のスタッドボルトは軽量化に配慮されたチタン製が採用されている。 インテリアは、基本的には「360モデナ」と共通のデザインとレイアウトが採用されているが、ドアのインナーパネルやフロア・コンソールには軽量なカーボンファイバー素材が採用されている。ドア・オープナー、ドアハンドルはアルミ製となり、防音材やカーペットが省略され金属や溶接跡、リベットが剥き出しとなるフロアがスパルタンなこのモデルの成り立ちを物語る。またダッシュボードやバケットタイプのシート表面にはアルカンターラが採用され、軽量化と上質感をバランス良くデザインに取り入れたイタリア車らしいセンスで仕上げられている。今回入荷した車両には、レザー張りとなるバケットシートのヘッドレスト部分に”跳ね馬“のエンボス加工が施された仕様となっている。この仕様では、サイドウィンドウはスライド式では無く、普通に昇降するパワーウィンドウを備え、オーディオも装備されている。「チャレンジストラダーレ」では、この仕様でもバケットシート背面はカーボンファイバー素材が用いられるだけで無く、そのジョイント部分や手動式調整ダイヤルまでカーボンファイバー製とされ軽量化へのこだわりを見せる。またシート後方には新車時オプション設定されていたチタン製ロールバーがシート生地と同じレザーカバーで覆われて装備されている。ダッシュボード下部はシート表皮と同様にレザー張りとされ、中央部には「360モデナ」と同じ空調用の調整ダイヤルが備わりエアコンが装備されるとともに、運転席、助手席ともにエアバックも装備される。また助手席の前方にはフェラーリがF1コンストラクターズチャンピオンを獲得した年を表示する記念プレートがレイアウトされている。簡素化されたデザインをもつカーボンファイバー製のフロア・コンソールにはエンジンスタート・ボタンやローンチ・コントロール(L. C)、ドライブモードのレース(RACE)選択ボタン、電動ドアミラー調整用スイッチ、パワーウィンドウのスイッチ等がレイアウトされている。「360モデナ」と異なるのは、同じ「F1システム」でもリバース用の小さなT字型レバー・スイッチが「R」と表記されたボタン・タイプに変更されていること。またステアリングホイールは真円では無く上下がやや潰れた形状をもつ、F1マシン用を模した新たなデザインが採用され、ステアリングの裏側には「F1システム」のギア・チェンジ用パドルが左右に装備される。右側に付くシフト・アップ用のチェンジパドルは、左側のシフト・ダウン用パドルに比べ上下に大型化され、ステアリングを操作しながらのアップシフトが可能となる範囲が広げられている。メータークラスター内のレイアウトは「360モデナ」と同様となるが、メーター類を囲むパネルはアルミ製からカーボンファイバー製に変更を受け、中央に置かれる大径のレブ・カウンターの文字板は鮮やかなイエローでペイントされる。専用のフォントデザインが採用されるメーター類のスケールは「360モデナ」と共通となる。またダッシュボード上にレイアウトされる空調用の吹き出し孔のデザインが格子型から、5本スポークタイプのデザインに変更されている。ペダル類はアルミ製の軽量でレーシーなデザインが採用され、助手席足元にも同様のデザインを用いたフットレストが装備されている。全長×全幅×全高は4477mm×1922mm×1199mm、ホイールベースは2600mm、トレッド前1669mm、後1617mm、車両重量は乾燥重量1180kg(装備重量1280kg)となっている。最小回転半径は5.4m、燃料タンク容量95ℓ、新車時価格は「360モデナF1」が1795万円、「360スパイダーF1」が1930万円という中で「チャレンジストラダーレ」は、2130万円となっている。ベルリネッタ、スパイダーモデル合わせて16244台が生産された「360モデナ」に対し「チャレンジストラダーレ」は1288台が生産されている。メーカー公表性能値は、0→100km/h加速4.1秒、0→200km/h加速14.0秒、0→400m加速12.1秒、最高速度は300km/hとなる。英国オートカー誌による実測テストでは0→97km/h加速4.4秒、0→400m加速12.7秒、0→1km加速22.6秒、最高速度312km/hを記録している。︎ひときわ低い車高をもつ「チャレンジストラダーレ」は、大径化されたBBS製ホイールとホイールアーチの隙間に35%扁平の薄いタイヤが採用されている事で、レーシーな佇まいがより強調されて見える。緩やかなアールで構成されるボディは、”ロッソ・スクーデリア“のボディカラーで包まれると、そこだけスポットライトが当てられ、自らのオーラで発光しているようにも見える。ドアノブを引いてアルミ製のスカッフプレートを跨いでバケットシートに腰を下ろすと、改めて目線の低さを感じさせるドライビングポジションとなる。ステアリングポストにキーを挿して捻る事で電源をONにし、センターコンソールにある赤いエンジンスタート・ボタンを押す。始動したエンジンからは「360モデナ」よりやや大きめな振動とサウンドがキャビンに伝わってくる。右の変速パドルを引くと黄色い盤面をもつタコメーター内のインジケーターの表示がニュートラルの「N」から「1」に変わり1速が選択されている事が表示される。アクセルをゆっくりと開けていくとクラッチが自動でエンゲージされるポイントがあり、そこでクルマがゆっくり動き出し、しっかりとクラッチが繋がるのをほんの一瞬だけ待ってからアクセルを開け始めると滑らかにスタート出来る。2速に上げるべくもう一度右のパドルを引いて、ギア・チェンジの瞬間にアクセルの踏力を僅かに緩めることで、よりスムーズなチェンジが可能となる。自動クラッチによるシフトアップ時のギクシャク感は、制御ソフトの進化により軽減され、この「チャレンジストラダーレ」では滑らかな変速が可能となる。低速でも固められたサスペンションは、荒さを感じさせることは無くタウンスピードでの走行も苦にはならず充分デイリーユースにも耐えうる仕上がりを見せる。レースと深い繋がりをもつフェラーリにより開発された「F1システム」は、本来はサーキットでコンマ数秒を競う為のツールとなるが、ギアチェンジの度にドライバーが間合いをとる感覚は、マニュアル・ギアボックスを装備した車両をドライブする時にも似て、速度を問わずクルマと対話する感覚を抱くことも出来る。ドライバーが積極的にクルマを走らせる事に関与出来る余地が残された変速システムとなる。乗せられているのでは無く、ドライバー自らが走らせている感覚を重視した「F1システム」は、いかにもフェラーリらしいシステムと言える。6速トップで50km/hからでも加速を受け付ける程、充実した低速トルクを感じさせるエンジンとなるが、そこには軽量化された車両重量の影響も見逃す事は出来ない。エンジンが2000rpm以下ならキャビンにサウンドが溢れる事は無いが、3000rpmあたりからボリュームが上がり始め、4500rpmを超えるとレーシーなサウンドとともにパワーも盛り上がりを見せる。ここからのサウンドは「360チャレンジ」を超える程の音量をもって響きわたり、パワーは7000rpmからは更に伸びを見せる。左側のパドルを引くと回転合わせの為の自動ブリッピングが行われ、瞬時にシフトダウンが完了する。この一瞬のシフト・ダウンを味わうとオープンロードがサーキットに変わった様な錯覚を覚える。負荷が軽い時には、ややオーバーサーボ気味に感じられるブレーキは、速度が上がる程にソリッドなフィールを見せ始め、信頼に足る充分なストッピングパワーを発揮する。車両停止時にはギアポジションは自動的に1速に戻り、そのままアクセルを開ければ再スタートが可能で、両方のパドルを同時に引く事でニュートラルとなる。フロア・コンソールにある「RACE」モードを選択すると、電子制御されるダンパーは更に引き締められ、シフト・チェンジの時間も短縮されることで、車両の動きがよりタイトになりボディはひとまわりコンパクトに感じられる様になる。このモードではトラクションコントロールの「ASR」の介入が遅くなり、ワインディングロードではステアリングの反応を含め、車両全ての機能がバランスの良い繋がりを見せてくれる。高いエンジン回転数を維持し、素晴らしいサウンドを聴いていると、そのサウンドは8500rpmのレッドラインに近づく程に、まるでシングルシーターのレーシングカーを走らせている様な乾いた唸りと咆哮を響かせる。ワインディングロードでベストラインをトレースする様に意識して走らせていると、ドライバーは正確なフィードバックとレーシーなサウンドに包まれドライブに集中し「チャレンジストラダーレ」の虜となる。この極めてレーシングカーに近いソリッドな感覚をストリートで楽しめるのは、レースで培ってきた技術を効果的に優れたベースモデルにフィードバック出来た結果でもある。また車両に施された徹底した軽量化技術や空力特性も、正確な車両の動きを表現するのに有効に作用している。これだけ高い性能を誇りながらもドライバビリティがしっかりと確保され神経質な動きを見せない「チャレンジストラダーレ」は、ベースモデルに比べてより高い路面トレース性をもつシャーシに仕上げられドライバーに高い寛容性を見せる。レーシングモデルに限りなく近いロードモデルとして開発された「チャレンジストラダーレ」は、このモデルから始まる”V8スペチアーレ“初のプロダクトモデルでありながら高い完成度を見せている。後に続くこのシリーズでは、それぞれのモデルが開発された時代の最先端のレース技術をフィードバックしながら、モデルサイクルの終盤に投入され、高い性能と完成度をもち、フェラーリを象徴するキャラクターに仕上げられている。公道走行はもちろん可能となるが、その本籍はサーキットといえるのかもしれない…