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ティプトロニック
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
ティプトロニック
ボディタイプ
外装色
サマーイエロー
年式
1993 年型
走行距離
21.100km
乗車定員
4 名
サイズ
長 424 cm 幅 166 cm 高 131 cm
エンジン形式
排気量
3600 cc
馬力
250
トルク
31.6
車検
令和9年9月
ハンドル
左
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

17インチホイール、リアワイパー、取扱説明書、保証証、記録簿(17枚)、スペアキー、ブック類揃っております。

1963年9月のフランクフルトショーで発表された「ポルシェ911」は、1991ccの空冷SOHCフラット6エンジンを搭載していた。このエンジンは、鋳鉄製のシリンダーにアルミ冷却フィンを組み込んだ“バイラル”シリンダー、7ベアリング鍛造クランクシャフト、ポルシェに入社して間もないハンス・メツガーが手がけたドライサンプによるエンジンオイルの潤滑方式を採用して、3ℓまで排気量を拡大する事を前提とした設計とされていた。車両重量の中では相対的に大きく重い強力なフラット6エンジンを、リアの低い位置に搭載することから強力なトラクションに恵まれ、当時の2ℓ級スポーツカーとしては驚異的なパフォーマンスを発揮する「911」となるが、同時にシャーシバランスとハンドリングに悩まされ、フロントバンパーに22kgのウェイトを仕込んで応急措置をする事態も招いた。このハンドリングを克服する為に、スタビライザー径を変更したり、ホイール幅を見直された1969年型となる「Bシリーズ」では、ホイールベースを57mm延長。更にボッシュの機械式燃料噴射装置を装備するエンジンは、性能を落とす事無く扱いやすさを手に入れる事に成功している。その後、2.4ℓへとエンジン排気量を拡大した1972年型の「Eシリーズ」では「911」は、高い性能とフレキシビリティーを得ることにより、ひとつの完成形ともいえる良好なバランスをもつドライバビリティをみせている。この頃、ポルシェ一族が経営から離れる事が決定されると「550スパイダー」などに搭載された4カム空冷フラット4エンジンの設計を手がけた、エルンスト・フールマンが社長に就任する。あわせて開発部門の責任者であったフェルディナント・ピエヒもポルシェを離れる事となるが、彼が関わったレーシングカーの「917」がきっかけとなり「911」シリーズには、更なる高性能化が図られたモデルがラインナップされる。ひとつは「917」のエンジンを半分にした2697ccの排気量と「917」にも採用されたニカシルめっきシリンダーをもつ「911/83型」とよばれるエンジンを搭載するホモロゲーション・モデル「ポルシェ911カレラRS」。そしてフェルディナント・ピエヒの指揮の元、開発されたCan-Amカー「917/30」やハンス・メツガー設計の「911カレラRSRターボ」のエンジンで培ったターボ技術を市販車に用いた「ポルシェ911ターボ」。これらのモデルに注がれた技術と高いパフォーマンス、そしてレースでの活躍は、大きな注目と高い人気を集める。しかし、同時に「911」が持つRRレイアウトによるシビアな限界特性と、空冷エンジンによる排ガス対策は困難を極める事から、フールマンは新たにFRでトランスアクスル・レイアウトを採用した水冷エンジンを搭載するモデルの開発を促進し、1980年代を迎えるまでにポルシェの主力スポーツモデルは、水冷エンジン搭載によるFRモデルに移行するのは既定路線とされていた。ところが新たに開発され発表された「924/928」の販売台数は「911」を超える事が出来ず、1980年末にポルシェの経営状況は、創業以来はじめての赤字に転落、フールマンは責任をとって任期を1年残して辞任する。フールマンの後任として1981年からは、ペーター・シュッツがポルシェの社長を務めることとなる。フェリー・ポルシェに直々に任命されたアメリカ系ドイツ人のシュッツは、米国のキャタピラー社でディーゼルエンジンのエンジニアを務めていた人物で、ポルシェファミリーの意向を踏まえてポルシェ社の経営再建に尽力する。その過程でシュッツは「911」の高いブランド性に着目。「911」の後継車として位置付けられていた、水冷FRモデルを主力とする路線から大きく舵を切り「911」を中心とする商品展開へと軌道修正を図った。休眠状態にあった「911」の再生計画を形にしたコンセプトモデルを1981年フランクフルトショーで発表、それが「911ターボ・カブリオレ・スタディ」となる。このショーモデルには、前後フェンダーがフレアした「ターボ・ボディ」を採用して「911」をベースに、新たに「4WD」と「カブリオレ」というバリエーション・モデルが提案されていた。「カブリオレ」は1983年から「911SCカブリオレ」として市販に移されると「356」以来の18年ぶりのポルシェ製フルオープンモデルとしてトピックとなり「911」のイメージ刷新と販売向上へとつながる人気モデルとなった。また「4WD」は、新設計の2.85ℓ・フラット6・空水冷DOHC4バルブ・ツインターボ・エンジンを搭載、可変トルクスプリット式4WD、6速MT、前後ダブルウィッシュボーン・サスペンションを装備したプロトタイプ「グルッペB」を経て、1986年から292台を販売したスーパーポルシェ「959」として現実のものとなった。フェルディナント・ピエヒとともに「917」の開発にも携わったヘルムート・ボットが、チーフエンジニアとしてこの「959」の開発にあたり「ポルシェ911」伝統のリア・エンジンを踏襲し、ボディデザインにも「911」のイメージを活かしながら先進技術を積極的に盛り込んだ。その結果「959」は、破格の性能を発揮するとともに、その後の「911」に多くの技術的な影響を及ぼすとともに「911」のイメージリーダーとして将来の大きな可能性を見せたモデルとなる。存続が決定した「911」は、1974年から生産が続けられてきたビックバンパーが特徴となる「930型」がいよいよフルモデルチェンジの時を迎え、新たに「964型」へと進化をみせる。この「964型」のボディデザインは「928S4」や「944ターボ」「959」のデザインを担当したベンジャミン・ディムソンによるもので、ナローボディ時代から長く続いてきた見慣れた「911」のディテールを活かしながら「930型」からは、実に85%もの部分がリニューアルされたモデルとなっている。前後バンパーは「959」や「928」を思わせる一体感のあるデザインが施され、新たに加えられたサイドスカートと併せて、時代に相応しいクラッシックとモダンの妙なる融合をアピールしている。紛れもない「911」でありながらイメージを一新した「964型」は、ダックテールスポイラーやターボウィングではなく、エンジンフードに収納される可動式リアスポイラー(電動モーターにより80km/h以上の速度で起き上がり15km/h以下まで減速すると、元の状態に自動格納され、マニュアル操作も可能となる)を採用することで、リアエンドへと続く「911」のフォルムを尊重するシルエットを維持している。この「964型」は、1988年9月をもってポルシェを定年退職したヘルムート・ボットが最高責任者として開発を担当したモデルで、最初にお披露目された4輪駆動システムを内包する「ポルシェ964カレラ4」は、1988年10月のパリ・サロンでデビューを飾る。それは「911」にとって誕生から25周年という記念すべき年のデビューともなった。「959」では電子制御式の前後可変トルクスプリット・システムという究極的なセンターデフを搭載し、4輪を駆動していたが「964カレラ4」では、1984年の”パリ-ダカール・ラリー“で実績のある遊星ギアをセンターデフに使い、前後トルク配分は31:64に固定。センター・リアのデフには電子制御による油圧多板クラッチを装備し、4輪それぞれの著しい回転数の差を感知すると瞬間的にロックする機構を備える他、手動でのロックも可能となっている。新設計によるモノコック・ボディには、4WDのメカニズムの搭載を考慮しキャビン側には少し高いフロアトンネルをもち、下面は空力にも有利な完全フラット化されたフロアが採用されている。可動式リアスポイラーや、ウィンドウ周りのフラッシュサーフェス化と合わせて、より高速化を見据えたCd値0.32(それまでの930型では0.395だった)という高い空力性能を実現している。このモデルチェンジに伴いスカットルには、新時代のエアコンディショニングの要求を満たすべく、新型空調システムが組み込める様に変更が施されている。また「959」用と類似したラック&ピニオン式のステアリングにはパワーアシストを装備。定評のある強力なブレーキには、4輪それぞれにセンサーを備えるボッシュ製ABSシステムが搭載されている。この「964カレラ4」の発表から1年近く遅れて、1989年9月のフランクフルトショーで発表されたのが「964カレラ2」となる。このモデルは「911」の歴史を引き継ぐ2輪駆動モデルであり、長らく生産されてきたビックバンパーが特徴の「930型/911」の純粋な後継車となっている。「964カレラ4」と共通の新型モノコックボディを採用し、新開発のフラット6エンジンを搭載、センターとフロントのデフを含む4WDシステムを持たない事で、「964カレラ4」に比べるとおよそ100kg軽量な車両重量をもつ。︎「964カレラ2」に搭載されるエンジンは、空冷水平対向SOHC6気筒12バルブで、ボア×ストローク100mm×76.4mmから3600ccの排気量を得るM64型と呼ばれるもの。ボッシュ・モトロニック電子制御式燃料噴射装置により総合制御されるこのエンジンは、11.3という高めの圧縮比をもち、最高出力250馬力/6100rpm、最大トルク31.5kgm/4800rpmを発揮、ドライサンプ方式が採用されエンジンオイル量は11.5ℓとなる。運転温度を一定に保つのが難しい空冷式のまま90年代へと送り出された新型フラット6エンジンには、排ガス浄化を狙ってツイン・プラグ方式を採用、各シリンダーに配された2本ずつのスパークプラグにより急速燃焼が効果を発揮している。セラミック・ポート・ライナーの採用やクランクシャフトの軽量化、更にクーリングファンの改良など、徹底したリファインが施された、この新型フラット6エンジンは、自然吸気のスポーツユニットとして、ポルシェならではの回転全域でのピックアップの鋭さや高回転域を苦にしないフィールなど、今でも多くの魅力を維持するエンジンとなる。組み合わされる変速機は、ボルグワーナータイプのシンクロを備えた5速マニュアル・トランスミッションと”ティプトロニック“と名付けられた4速オートマチック・トランスミッションが設定されている。ポルシェが「964カレラ」の為にボッシュとZFの協力を得て開発したこの”ティプトロニック“とよばれるATの特徴は、シフトレバーを動かすゲートを左右2列設定しているところ。左側のゲートでは通常の4速ATとして「P R N D 3 2 1」のポジションをもち、その中央にある「D」のポジションから右横にシフトレバーを移動させ、右側のゲートを使うことで前後1ストロークごとに任意に1段ずつの変速が可能となる。シフトレバーを前方向にストロークするとシフトアップ、後方向にストロークするとシフトダウンし、クラッチレスのマニュアルとしても使えるスポーツドライビングの為に生まれたATとなっている。「911」にはかつて、”スポルトマチック“とよばれた、4速MTにトルクコンバーターと電磁作動クラッチを組み合わせたセミオートマチック・ギアボックスが設定されていた時代が存在した。これに対して”ティプトロニック“は、トルクコンバーターと遊星ギアによる「911」に初めて設定されたフルオートマチック・ギアボックスで「アウディV8」用のZF製4ATをベースとしている。ATの「D」モードでは、ロックアップ機構を内蔵し、スロットル開度、エンジン回転数、前後左右方向の加速度をセンシングして、5種類の自動変速マッピングで電子制御されている。これにより、コーナー入り口での減速段階でスロットルを放してもシフトアップは抑止され、コーナリング中はギアをホールドする等、ドライバーの意思に反するシフトチェンジは行われず、きめ細かい自動シフトが可能なオートマチックトランスミッションに仕立てられている。マニュアルモードではドライバーが任意にギアを選択可能となるが、ATならではの機能が活用され6800rpmのリミットを超えると自動的に上のギアに切り替わり、逆にシフトダウンに際してもオーバーレブが想定される場面ではシフトダウンは行われない。フルスロットルでもパートスロットルでも自動的なシフトショックは小さく抑えられ、アクセルを踏み込む事で機能するキックダウンは鋭敏な反応を見せる。現代のATは多段化が進み、4段ではギア選択の幅に不満を感じるかもしれないが、3.6ℓ・フラット6エンジンの広いトルクバンドと、テストを繰り返し選択されたギア比により、スポーツカーらしい加速感がスポイルされる事は無い。︎足回りは、フロントにストラット式、リアにセミトレーリングアーム式が用いられ、それぞれスタビライザーを装備する。「911」にとってはお馴染みの足回り型式となるが、大きく変わったのは伝統的に採用されてきたトーションバー式スプリングが「964型」からは、一般的なコイル式スプリングに変更されている事。そしてリア・サスペンションにはブッシュの弾性を利用してコーナリング中に、トーアウトを防ぐ「928」に採用されていた「バイザッハ・アクスル」と同様のコンプライアンスステアの理論が引用されている。定評のあるブレーキには新たにABSを備え、4ピストンの軽合金製キャリパーとベンチレーテッド・ディスクが組み合わされて4輪に配されている。標準装備のタイヤサイズは、フロント205/55ZR16、リア225/50ZR16サイズとなり、フロント6J、リア8Jの16インチ・アルミホイールと組み合わされている。今回入荷した車両にはオプションとなるフロント7J、リア8Jの17インチ・アルミホイール(964RSと同じデザインの17インチ径となるが、RS用は7.5J、9Jサイズが採用されている)が装備され、それぞれ205/50R17、255/40R17サイズのタイヤが組み合わされている。︎インテリアは2ℓ時代の「911」からのイメージが継承され、奥行きのないダッシュボードに見慣れた形状で装備されるメーターナセルには、中央に大型のタコメーターを含む5つのVDO製のメーター類がレイアウトされている。タコメーターのレッドゾーンは6800rpmから、スピードメーターは頂上付近に150km/hが置かれるフルスケール300km/hとなり、メーター内にシフトポジションを示すインジケーターが装備される。これにより走行中も赤い矢印のLEDによりシフトポジションの確認が可能となる。またタコメーター下部にはオンボード・コンピューターのディスプレイが備わり、ステアリング・コラム左側のウィンカーレバー下の操作レバーにより外気温度、平均燃費、走行可能距離等の表示が可能となっている。1992年モデルから、ドライバー側、パッセンジャー側ともにエアバックが装備され、センターパッドが大型化された4スポークステアリングが採用されている。ステアリングポスト左側に位置するイグニッションキーや、電動調整機構を備えるハイバックタイプのシート形状、オルガン式となるペダル類、そのどれもが「911」ならではの装備となる。またアップデートされた空調システムにより「964型」ではフルオートタイプのエアコンが装備されている。パワーアシストが装備されたステアリングはドライバビリティの向上が図られるとともに「911」の特徴であった強いキックバックを大幅に軽減することにも成功している。後席は「911」登場時から変わらず大人が乗るにはスペースが限られるが、シートバックを手前に倒すことによりラゲッジスペースとしても有効なエリアとなる。フロントフード下にある荷室は、前後方向にはエリアが縮小されているが、大幅に深く設計変更された事でGTカーとしての資質を備えている。荷室のバルクヘッド側には燃料タンク、カーペット下にはスペアタイヤやバッテリーが収められている。︎全長×全幅×全高は4250mm×1652mm×1320mm、ホイールベース2272mm、トレッド前1380mm、後1374mm、車両重量1380kg。燃料タンク容量77ℓで、最小回転半径5.6m。「964カレラ2クーペ・ティプトロニック」の新車時販売価格は1160万円(1993年8月)。生産台数は「964型」の「カレラ2/4」のクーペ・モデルで約28500台となっている。メーカー公表性能値は、5MTモデルの0→100km/h加速5.9秒、最高速度260km/hに対して、ティプトロニックモデルでは、0→100km/h加速5.7秒、最高速度260km/hとなっている。カーグラフィック誌による実測テストでは、5MTモデルでは0→100km/h加速5.6秒、0→400m加速13.7秒、最高速度261km/h(1990年型クーペのカレラ2・5MT)を記録、ティプトロニックモデルでは、0→100km/h加速6.8秒、0→400m加速14.6秒、0→1000m加速26.2秒、最高速度は254.3km/h(1990年型タルガ・ボディのカレラ2ティプトロニック)を記録している。︎ポルシェを代表するスポーツモデル「911」の誕生から4半世紀が経過した1988年のパリ・サロンで発表された新型「911」は、その開発コードナンバーから「964型」と呼ばれ数多くのアップデートと新技術の投入により大きく進化したモデルとなっている。その佇まいは、丸く大きなヘッドライトから続くフェンダーの峰や、共通となるウィンドウ・グラフィックと立ち気味の細いピラー類からなるグリーンハウス、ルーフからリアバンパーへと緩やかに降る猫背なシルエット等「911」誕生時からの特徴を継承したものとなる。20世紀の終盤を迎えたこの世代のスポーツカー達は、一部のマニアの為のものから、所有者のライフスタイルを象徴するひとつのアイテムとなり、新たな顧客層を取り込むべく各社ドライバビリティの向上や装備の充実を図ったモデルの開発に注力していた。ポルシェは「964カレラ」開発にあたり、パリ-ダカール・ラリーで優勝した「953」や、限定生産されたスーパーポルシェ「959」からフィードバックされた技術を活かしてスタビリティの高い4WDモデル「カレラ4」を発表する。また少し遅れて発表された従来からの「911」の後継車となる2WDモデル「カレラ2」にも「カレラ4」同様に、パワーステアリングやエアコンディショナー、足回りには乗り心地に配慮して、長らく使われたトーションバースプリングからコイルスプリングへの変更が図られている。そして最もマーケットに歓迎された新たな装備が「ティプトロニック」となるだろう。トルコン式ATをベースに開発されたこのトランスミッションは、スポーツ性能を全く犠牲にすることなく「911」がもっていた日常性を高める事で、現在に繋がるスポーツモデルのAT化に大きく貢献している。それら全てが装備される今回入荷した「964カレラ2ティプトロニック」は、たいへん貴重なシリーズ最終モデルとなる1993年型で、1992年モデルから採用された「964ターボ」が装備するスタイリッシュなデザインをもつ”ターボ・ミラー“とよばれるドアミラーを装備し「964RS」と同じ17インチホイールにより完成された存在感を見せている。これまでの「911」から継承されたドアハンドルを引いてドアを開けると、そこには全く違和感の無い「911」ならではの世界が広がっている。ハイバック式のシートに腰を下ろし、ドアを閉める音や密閉感、眼前に広がる5連メーターをおさめるメータークラスターや奥行きのないダッシュボード、床から生えるペダル類、その全てが「911」を主張するものとなる。左手でイグニッション・キーを捻りエンジンをスタートさせると、それまでの「911」を体験した事がある人には、控えめになったと感じられるメカニカルノイズと独特のエキゾーストサウンドを伴いながら安定したアイドリングが始まる。シフトレバーを左側ゲートの「P」から「D」レンジに移動させると通常のATモデルと同様に走り出すことが出来る。低回転域でも粘り強いトルクを発揮する3.6ℓ・フラット6エンジンは「911」ならではのコンパクトなボディと良好な視界をもってタウンスピードでも軽快に走らせる。こういった場面に於いても、パワーステアリングと「ティプトロニック」は、ドライバーに緊張感を与える事無く、コイルスプリングに変更されたサスペンションによる良好な乗り心地と併せて、硬派なスポーツモデルという「911」の別の一面を見せてくれる。少しアクセルを踏み込むと、3.2ℓ時代のフラット6エンジンよりも、更に軽くフリクションという言葉とは無縁の、スムーズでシャープなエンジンフィールが楽しめる。低く抑えられたエンジン音は、けしてドライな感覚では無く回転を上げるのに伴い、より魅力的な音質に変化しながらドライバーとのコミュニケーションが失われることは無い。前輪を駆動する為のデフやドライブシャフトを持たない「964カレラ2」はノーズも軽く感じられステアリングフィールに雑味が無く、とても自然なフィールを味わう事が出来る。ワインディングロードやカーブの多い郊外に於いては「ティプトロニック」の「D」レンジから右側のゲートにシフトレバーを移動し、マニュアルモードを使うことで積極的にシフト操作をしてスポーツドライビングに興じる事も可能。さすがに「ティプトロニック」に現代の「PDK(ポルシェが開発したツインクラッチ式AT=ポルシェ・ドッペル・クップルング)」ほどのダイレクトさとシフトスピードは望めないが、トルコンによるシフトチェンジのタイムラグを見越して、コントロール性が抜群の強力なブレーキと併せて操作すれば、硬派な「911」の一面を感じながらスポーツドライビングを楽しむ事が出来る。「RS」や「ターボ」モデルの様に速さを求めればキリがないけれど「911」らしいコンパクトなボディと、鋭く吹け上がる空冷の3.6ℓ・フラット6エンジンのキャラクターはとても良いバランスを感じさせ、様々なシーンで多くのエピソードを共に紡いでいける、長く付き合える「911」であるといえるかもしれない…この「964カレラ2ティプトロニック」は、オリジナル「911」ともいえるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェがデザインした初代「911」のフォルムを踏襲しながら、登場から25年の時を経て大幅にマヌーバビリティをアップし、様々な場面に対応出来るオールマイティな一台となっている。その完成型といえる「964型」は、現代に於いても、スポーツカーの代表的なモデルの一台として高い資質と性能を保ち続け、多くのファンに支えられながらその存在価値を高め続けているモデルといえるだろう…