マセラティグランツーリズモ
MCストラダーレ
イソッタフラスキーニを辞職したアルフィエーリ、ビンド、エットーレのマセラティ兄弟が、自分達で会社を創立したのは2025年から111年前の1914年。フェラーリよりずっと長い歴史をもつマセラティは、フェラーリとは異なり技術者である彼ら自身が会社を起こし、理想とする自動車を創り出す事を目標としていた。フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリはレーシングドライバーとしての経験があり、組織をまとめる統率力や交渉力はあるが、設計は出来なかったのでプロデューサー的な立ち位置で会社を経営していた。同じイタリアで同じモデナをベースにレースで競い合うこともあった両社であるが、フィアットの総帥ジャンニ・アニエッリの要請によりロードモデル製作に於いて協力体制を開始したのは1997年だった。エンツォ亡き後、ルカ・ディ・モンテゼーモロ率いるフェラーリ傘下となったマセラティは、本格なGTメーカーへの回帰を目指し1998年秋のジュネーブショーで「3200GT」を発表する。好評をもって迎えられた「3200GT」であったが、モンテゼーモロは更にマセラティを本格的なGTカーメーカーとして確立し、生産台数を伸ばすべく北米市場への復帰を考えていた。手始めに華のあるオープンモデルを発表し、続けてクーペモデルを発表する計画が立案された。2001年9月のフランクフルトショーでデビューする「マセラティ・スパイダー」は、久しぶりにフェラーリにF1コンストラクターズ・チャンピオンをもたらしたミハエル・シューマッハと、モンテゼーモロによりアンベールされた。ホイールベースを22cm短縮し2シーター化された「スパイダー」に続き、年明けにはボディデザインをリファインされた「クーペ」がデトロイトショーで発表される。「スパイダー/クーペ」ともに「3200GT」のデザインイメージを継承しながらも、その特徴ともなっていたブーメラン型LEDテールランプは、北米の法規制に適合する様にコンベンショナルなタイプにモディファイされていた。パワートレインは、新開発となるノーマルアスピレーションのV型8気筒エンジンを投入し、V型8気筒DOHC・4.2ℓのティーポ136R型とよばれるオールアルミ製のこのエンジンは390馬力/45.1kgmのトルクを発揮。「3200GT」のビトゥルボ・エンジンに比べ20kg軽量コンパクトでエンジン単体重量184kgを達成している。マセラティらしく90°スローのクロスプレーン・クランクシャフトをもち、マーレ社製の鍛造アルミピストンや、パンクル社製チタンコンロッドを採用し、2004年に登場する「フェラーリF430」に搭載されるティーポ136E型エンジンと共有パーツを多くもったマラネロ産のエンジンとなる。ジュジャーロによるボディとV8エンジンによるGTは、往年の初代「マセラティ・ギブリ」を思わせる。組み合わされるギアボックスはディファレンシャルと一体化され、車体後方にマウントし、カーボン製プロペラシャフトを内装するトルクチューブでエンジンとつながるトランスアクスル方式となっている。コンベンショナルな6速MTに加え「カンビオコルサ」とよばれる、マニエッティマレリ社と共同開発によるシングルクラッチ式セミATが設定されている。この新たなパワートレインと50年ぶりにピニンファリーナ・デザインによるボディが組み合わされた新型マセラティは、2003年フランクフルトショーで、5世代目の「マセラティ・クワトロポルテ」として発表される。威風堂々たるセダンの存在感と、このセグメントでは考えられなかったスポーツカー的なパフォーマンス、豪華なキャビンを誇るこのモデルは、フェラーリ傘下になったマセラティにより全くの白紙から生み出されたニューモデルとなる。「スパイダー/クーペ」では「カンビオコルサ」とよばれトランスアクスル方式で搭載されていたセミATの変速システムは、この「クワトロポルテⅤ」では「MDS(マセラティ・デュオ・セレクト)」と改名され、発表時、変速機はこれのみの設定となっていた。クラッチのコントロール・プログラムには大幅な進化を加え、得られた変速マナーはトルコン式ATの変速に近いものとなった。2000年当初の年間総生産台数2000台たらずだったマセラティは、この「クワトロポルテⅤ」のみで2005年6月には累計2万台の出荷を記録し、マセラティでは久しぶりのヒット作となる。生産台数の増大に対し少量生産メーカーであった親会社のフェラーリには、良好な利益を上げるノウハウが乏しく、2005年にマセラティはフィアットのマネージメント下となる。独特のスポーティさを味わえる「MDS」ではあったが、多くの市場からの声に応えコンフォート性能が向上する、ZF製トルコン式6速AT搭載モデル「クワトロポルテ オートマチック」を2007年初頭のデトロイトショーで発表、そのラインナップに加えた。「MDS」モデルではトランスアクスル方式が採用されていたパワートレインは、「オートマチック」モデルではエンジン直後に変速機がレイアウトされるオーソドックスなFR方式となった。それでもエンジンは、前輪車軸より完全に後ろに配置されるフロントミッドシップ方式となるので理想的な前後重量配分は維持されている。マセラティのメインストリームともいえる2ドアGTモデルは、1990年代の「3200GT」から進化、熟成して「スパイダー/クーペ」が継続して生産されていたが、このカテゴリーはフェラーリ傘下に於いては、フェラーリ製ロードモデルとオーバーラップする事もあり、開発方針が定まらずなかなか発表出来ずにいた。それもフィアットのマネージメント下に移行した事により、ラグジュアリーでエレガントなマセラティらしいテイストでまとめられた新型2ドアGTとして、2007年春のジュネーブショーで「グランツーリズモ」がデビューを果たす。ボディは「クワトロポルテⅤ」に続きピニンファリーナによるデザインが採用されている。ピニンファリーナとマセラティの関係は、1947年ジュネーブショーで発表されたマセラティ初の市販GTモデル「A6 1500」にまで遡る。この時期アルファロメオから独立し自らの会社を創業したエンツォ・フェラーリは、同じモデナのマセラティをライバル視し、ピニンファリーナの独占を図る。この直後、マセラティからでは無くローマのディーラー経由で発注され1954年に完成した4台の「マセラティA6GCS/53ベルリネッタ・ピニンファリーナ」以降、久しく関係は途絶えていた。マセラティがフェラーリ傘下となった事から再びピニンファリーナとの関係が復活、当時ピニンファリーナ在籍の日本人デザイナー「ケン・オクヤマ」こと、奥山清行のデザインによる「クワトロポルテⅤ」が発表された。奥山は「A6GCS/53ベルリネッタ・ピニンファリーナ」をモチーフとしたユニークなフロントマスクをもつ後輪駆動の大型セダンを試作した。当初、低くおかれたグリルから独立し立ち上がったフロントフェンダー上に縦に並んだヘッドライトは、ジャンニ・アニエッリのリクエストでエレガントな横並びのスタイルとされた。これによりスポーツセダンでありながら、フォーマルさも併せ持つ新たな印象が生まれた。ここからピニンファリーナとの新たな関係を築いたマセラティは、新型2ドアGT「グランツーリズモ」でも素晴らしいコラボレーションを見せる。「エンツォ・フェラーリ」「クワトロポルテⅤ」「612スカリエッティ」と立て続けにデザインを担当した奥山は、その後、自身の母校であるカリフォルニアのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで学部長に就任。2003年の秋に、突然アンドレア・ピニンファリーナからの電話で、デザイン部門の責任者としてピニンファリーナへ復帰すると、コンセプトモデル「マセラティ・バードケージ75th」を完成に向け指示する。このモデルのデザインは、ピニンファリーナ在籍のアメリカ人デザイナー、ジェイソン・カストリオータによるもので「バードケージ」の愛称でよばれる「マセラティ・ティーポ60/61」のモチーフを使って仕上げられたピニンファリーナ創立75周年を記念するコンセプトモデル。この「バードケージ75th」のイメージをロードモデルに引用し、カストリオータによりデザインされたのが「グランツーリズモ」となる。流れる様なプロポーションと力強さが両立され、女性的ともいえるフェラーリ・ロードモデルとは差別化が図られている。同世代の「クワトロポルテⅤ」とも通じるマセラティらしさを維持しながら、筋肉質なボディとホイールの存在感を強調させたデザインは4.8mを超えるボディの大きさを全く感じさせる事なく、恒久的にモダンなピニンファリーナ・スタイルを表現している。後にオープンモデルを加え、多くのバリエーションを展開することになる「グランツーリズモ」は2007年から12年間でクーペモデル28805台、オープンモデル11715台が生産され、合わせて4万台を越える人気モデルとなる。発表された「グランツーリズモ」は、先にデビューし好調な販売を記録した「クワトロポルテⅤ」のパワートレインと高剛性シャーシを使い、ホイールベースは122mm短縮しブラッシュアップして採用されている。搭載されるエンジンはボア×ストローク92.0mm×79.8mmから4244ccを得る、90°V型8気筒チェーン駆動によるDOHC32バルブのウェットサンプ式となる。405馬力/7100rpmと47kgm/4750rpmのトルクを発揮するF136型とよばれるエンジンは、フロントミッドシップで搭載され、回転を上げる程に官能的なサウンドを発生する。組み合わされる変速機は、ZF製の6速トルコン式ATをエンジン直後に配置、コンベンショナルなFR方式となる。マセラティならではのポルトローナ・フラウ製のレザーを使った4人の大人が快適に移動出来るキャビンと、前後49:51の理想的な重量配分、鍛造アルミ製アーム類やハブで構成された足回りをもつ。美しいエクステリアに、高い居住性、その上高性能な万能GTモデルとなっている。翌年2008年3月のジュネーブショーで、早くもそのラインナップに追加されたのが「グランツーリズモS」となる。エンジンの排気量は4691cc迄アップされ、ブルーに塗られていたカムカバーは赤い結晶塗装が施されて強化されたエンジンは、最高出力440馬力/50.0kgmのトルクを発揮する。組み合わされるトランスミッションは「MCシフト」とよばれるもので「クワトロポルテⅤ」に採用されていた「MDS」と同じシングルクラッチ式のセミオートマチックATとなる。「MC」とは「マセラティ・コルセ」の頭文字でマセラティのレース部門を表し、今世紀に入りFIAのGT選手権に於いても数多くの勝利を獲得している。このレース部門のイメージをもつ「MCシフト」は、スポーツモード選択時にエンジン回転数5500rpm以上、スロットル開度80%以上という条件下に於いて、変速時間を0.1秒まで短縮することを可能としている。このタイムは「フェラーリF430」の0.15秒を凌ぐだけで無く、搭載位置もリアアクスル直前となるトランスアクスル方式が採用される。また「MDS」に比べ進化した制御システムと、クラッチのダイヤフラム部分のデザインが変更され、耐久性が大きく向上している。ホイールを20インチにアップし、足回り、ブレーキを強化、可変エキゾーストシステムを備えるスポーティな仕上がりとなる。最高速度は4.2ℓエンジン搭載のベースモデルに対し10km/hアップした295km/hに、0→400m加速は0.4秒短縮し13.0秒となる。翌年の2009年には4.7ℓエンジン搭載の「グランツーリズモS」にZF製6速トルコン式ATを組み合わせた「グランツーリズモS オートマチック」がラインナップされる。このモデルはエンジン直後に変速機を搭載するコンベンショナルなFR方式となる。同じ年の10月パリサロンで発表された「グランツーリズモMCストラダーレ」は、車名に付くMCが示す様にマセラティ・コルセによるワンメイクレース用モデル「トロフェオ・グランツーリズモMC」や、FIAによるGT4ヨーロピアンカップ参戦している「グランツーリズモGT4」からフィードバックされた走行性能をアップする為のノウハウを詰め込んだ、レーシーな仕上がりのモデルとなっている。マセラティ兄弟により創設された時代のマセラティのイメージを再び取り戻した「MCストラダーレ」は「グランツーリズモS」と同排気量の4.7ℓエンジンから、10馬力/2kgm上回る450馬力/52.0kgmのトルクを発揮する。トランスアクスル方式で搭載されるパワートレインは「MCシフト」が採用され、100kgの軽量化が図られるとともに、足回りはスプリング、ダンパー、スタビライザーともに強化され車高は10mm下げられている。フロント、リアのスポイラーにより空力にも配慮され、マフラーはフロア下のエアフローを向上させるべくエキゾーストパイプをセンター寄りに配置している。ブレーキにはカーボンセラミックローターが採用され、最高速度はマセラティ量産モデルとして初めて300km/hに達したモデルとなっている。今回入荷した2015年式「マセラティ グランツーリズモMCストラダーレ」は、2013年ジュネーブショーでデビューした「MCストラダーレ」の後期モデルとなる。エクステリア、インテリアともに変更が加えられ、同じ排気量のエンジンのパフォーマンスは更に10馬力と1kgmの強化が図られている。ボディにはフロントグリル左右にブレーキ冷却用インテークをもち、前方にせり出したフロントスポイラーと、フロントタイヤ後方のフェンダー上にスリットが開けられ、トランクリッド上に高めのスポイラーが装備されているのは前期モデルと同様となる。ボンネットは軽量化の為にカーボン製が採用され、その中央にはトロフェオモデルの様にエアインテークを追加、エンジン冷却と140km/h走行時のダウンフォースを25%増しで発生させる効果をもつ。カーボンパーツとアルカンターラが多様され2シーター化することで軽量化が図られていたインテリアは、新たに4シーターに変更を受けている。今回入荷した「グランツーリズモMCストラダーレ」が搭載するエンジンは、F136型とよばれる水冷90°V型8気筒DOHC32バルブとなる。ボア×ストロークは94.0mm×84.5mmとなり4691ccの排気量を得る。圧縮比11.0とウェットサンプ方式が採用され、最高出力460馬力/7000rpmと最大トルク53kgm/4750rpmを発揮する。このエンジンのカムシャフトの山と、そこに接するバルブリフター部分には、極度の硬度とフリクションロスを目的とするレース由来の技術、DLC(ダイヤモンド・ライク・コーティング)が施される。軽快なレスポンスと自然吸気エンジンならではのリニアなトルク特性、それに印象的なサウンドをもつエンジンとなっている。組み合わされるトランスミッションは「MCシフト」とよばれるシングルクラッチ式のセミオートマチックで、リアに搭載されトルクチューブによりエンジンと繋がるトランスアクスル方式となる。「MCストラダーレ」ではドライブモード設定の「SPORT」モードの上に「RACE」モードが存在し、それを選択することで最短0.06秒でのギアチェンジを可能としている。これは2007年に発表された「フェラーリF430スクーデリア」に搭載されていたシングルクラッチ式セミATの「F1スーパーファスト2」と同タイムで、当時のF1マシンより速い変速タイムとなる。更に「MCストラダーレ」では「F430スクーデリア」と同様にブレーキング中に変速パドルを引いた状態をキープすると、連続してシフトダウンが行われるシーケンシャル・ダウンシフティング機能がプログラミングされている。足回りは前後ともにダブルウィッシュボーン式となり、ビルシュタイン製の減衰力がアップされたシングルレートのショックアブソーバーと、アイバッハ製コイルスプリング、大径化されたスタビライザーにより強化され10mm車高が落とされている。ブレーキはフロントに380mm径×34mm厚、リアに360mm径×32mm厚のブレンボ製カーボンセラミックディスクが装備される。これで同サイズの鋳鉄ディスクより約60%の軽量化が図られている。組み合わされるキャリパーはフロントに対抗6ポッド、リアは4ポッドとなっている。ホイールはフロント20インチ径×8.5J、リア20インチ径×10.5Jとなり、組み合わされるタイヤは、フロント255/35ZR20、リア295/35ZR20サイズの「MCストラダーレ」専用にピレリが開発した「P Zero Corsa」となる。本来「MCストラダーレ」4シーターモデルでは「トロフェオデザイン」とよばれる鍛造20インチのホイールが装備されるが、今回入荷した車両には「MCデザイン」とよばれる鍛造20インチのホイールが装備されている。このホイールは、フローフォーミング(リムに圧をかけて板厚を薄く伸ばしながら成形し、強度を確保する)製法で製造され、高強度と軽量化を両立したものとなっている。︎インテリアは、レーシングカーのロードモデルをイメージさせる「ストラダーレ」を名乗っていてもそこはマセラティ、軽量化を考慮しながらアルカンターラとカーボンパーツを使い、高いレベルでのアレンジが施されている。今回入荷した車両ではダッシュボードの下部、シートのセンター部分、ドア引き手部分やピラー、ルーフにはコーポレートカラーでもある深いブルーのアルカンターラが採用され、アイボリーのレザーとの美しいコントラストを見せている。サイドサポートが少し張り出したホールド性の高いシートのヘッドレスト部分にはトライデントの刺繍が施され、足元のペダル類はアルミ製となる。カーボン製のステアリングを通してドライバーと対面するメーター類は、ブルーの盤面を使う伝統があるマセラティだが「MCストラダーレ」では黒い盤面が採用されている。「MCシフト」となる為、センターコンソールにシフトレバーは無く、1とRが表示されたボタンがレイアウトされ、それぞれ押すことで1速とリバースのギア選択が可能となっている。ドライブモード選択用のボタンは、ナビ用モニター左側に縦にレイアウトされ、最上部に「RACE」その下に「SPORT」がレイアウトされる。本来ここに配置される自動変速モードの「AUTO」のボタンはセンターコンソール上の、1とRが表示されたボタンの左側、パーキングブレーキ用スイッチの前に移設されている。このコンソール周りとダッシュボード、ドアに施されたトリミング部分やスカッフプレートにはカーボンパネルが採用される。ステアリング裏側、左右には固定式の上下に長いカーボン製のギアチェンジ用パドルが備わる。ダッシュボードセンター部分にレイアウトされるナツメ型のアナログ時計は、レーシングモデルの「トロフェオ・グランツーリズモMC」でもはずされる事は無く、これも「ギブリⅡオープンカップ」や「クーペ・トロフェオ」などから引き継がれるマセラティGTレースモデルの伝統ともなっている。2シーターの「MCストラダーレ」では、アルカンターラ製ステアリングが備わり、リアシートが外され2脚の軽量バケットシートを装備、ロールバーと消化器によりスパルタンなインテリアとなっていたが、4シーターモデルでは快適なリアシートが装備され、日常使いにも対応出来るスポーティな仕上がりを見せている。︎「グランツーリスモMCストラダーレ」の全長×全幅×全高は4935mm×1915mm×1345mm、ホイールベースは2940mm、トレッドは前後ともに1590mm、車両重量1850kgとなっている。燃料タンク容量は90ℓ、最小回転半径は5.35m、新車時販売価格は2216万円となる。「MCストラダーレ」の生産台数は少なく、2シーターモデル502台、4シーターモデル469台(そのうち左ハンドル車は271台となる)。メーカー公表性能値は0→100km/h加速4.5秒、最高速度303km/hとなる。450馬力を発揮するモデルに比べ0→100km/h加速で0.1秒短縮し、最高速度では2km/h上回る。︎カーグラフィック誌による実測値は、450馬力仕様の「MCストラダーレ」で、0→100km/h加速5.2秒、0→400m加速13.4秒、0→1km加速23.8秒となっている。︎車高が低められたボディはある程度の大きさを感じさせるが、抑揚と絞り込まれた曲面で構成される為、間延びして見える事は無い。リアに大人が座れる空間が確保されるので、ルーフのエリアが広くホイールオープニング部が広く強調されているところががフェラーリとは異なる。カーボン製のドアハンドルに手をかけドアを引くと、そのドアの大きさに改めて驚かされる。シートに腰を下ろしドライビングポジションを確かめながら、レザーとアルカンターラ、そしてカーボンパーツで構成されるインテリアは、レーシーというよりエレガントさが勝る空間となり、マセラティらしく居心地の良さが感じられる。スタートボタンでは無く、キーをステアリングコラムに差し込み、捻ってエンジンを始動してみると、クランキングの後に威勢の良いサウンドとともに目覚めたエンジンは、安定したアイドリングで動き出すのを待っている。ステアリング裏にある右側のパドルを引くか、コンソール上の1のボタンを押すと、1速がスタンバイされメータークラスター中央のモニター表示がNから1に変わる。この状態でアクセルペダルを踏み込んでいくと、クラッチがエンゲージするポイントがあるので、そこで一度踏力をキープしてクルマが動き出して、完全にクラッチが繋がってからアクセルを踏み込む。するとスムーズに動き出す。ある程度速度を上げて右側のパドルを引き2速へ。自動変速モードは、慣れる迄は変速時に少しギクシャクするのでパドル操作で自らシフトする方がタイミングが取りやすいかもしれない。変速のタイミングがわかるようになると、エンジンとのやり取り楽しく感じられる。レスポンスの良いエンジンを搭載する「MCストラダーレ」なので、その楽しみは更に広がる。ある程度速度を上げていくと、無闇に固められた足回りでは無い事がわかり、軽量化されていると言っても2トン近い車重と長めのホイールベースにより高い安定感を見せる。そして不思議なのは、走らせていると乗車する前に感じたボディの大きさを意識しなくなること。軽い操舵力によるものなのか、よく切れるステアリングのせいなのか大柄なボディは、想像以上に取り回しやすいものとなる。そしてカーボンセラミックディスクや軽量ホイールにより足取りが軽快になっているせいか乗り心地も良く、しなやかなストローク感が味わえる。フラットなライド感を伴いながら長距離のドライブも全く苦にならない。スロットルを無闇に開けないで巡航する限り、サウンドもそれほど気になる程高まらず、パッセンジャーとの会話を邪魔するものではない。「SPORT」モードに切り替えてみると、マフラーのサウンドがボリュームアップし、パドルによる変速も小気味良さが感じられる。エンジン回転数を高めに保ってのワインディングロードなどでは、ひとまわりクルマが小さく感じられ、気持ちの良いひと時が味わえる。カーボンセラミックディスクは、それほど意識しなくても踏力の加減によりしっかり減速してみせる。更に上の「RACE」モードを選択すると瞬時の変速が味わえる。硬質な一瞬のショックを伴いながらのギアチェンジとストレートなサウンドは、スピードを上げる程にステアリングや足回りの動きと連携を見せて、フォーカスが合っていく様に感じられる。コーナーの侵入でブレーキを踏みながら、左側のパドルを引き続けると、1段ずつギアが連続して落とされていく。その度に回転合わせの中吹かしのサウンドが響き、コーナー出口でアクセルを開け始めれば後輪のトラクションにより、押し出される感覚がとても心地良い。1mmアクセルにチカラを入力すれば、しっかり1mm分のトルクが加えられる自然吸気エンジンならではの感覚は、とても電制スロットルが採用されているとは思えない程、リニアで官能的な息遣いが味わえるエンジンとなっている。そこには高性能GT造りに長けたマセラティの手腕が遺憾なく発揮されている。1950年代に高性能GTメーカーへとシフトし、走りのテイストで楽しむドライバーを魅了し続ける事をメインに据えたクルマ造りのノウハウの蓄積が活かされている。そのノウハウを凝縮してカタチにしたのが「グランツーリズモMCストラダーレ」となる。数値だけでは表現出来ない造り手の温もりが感じられ、これ以上深いドライビングプレジャーを提供してくれるロードゴーイングレーサーは、このモデル以外にはなかなか存在するものではない。










