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V63.2
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
V63.2
ボディタイプ
外装色
グリージョボッティチェリ
年式
2009 年型
走行距離
23.200km
乗車定員
5 名
サイズ
長 488 cm 幅 183 cm 高 147 cm
エンジン形式
排気量
3179 cc
馬力
229
トルク
29.5
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
並行輸入
内装色
ナイビーポルトローナフラウレザー
燃料区分
ガソリン
幌色

「ランチア」と聞いて、どんな自動車メーカーというイメージを思い浮かべるだろうか?日本では1980年代後半〜1990年代前半まで、人気を得ていた「デルタHFインテグラーレ」のWRCでの活躍を想像してモータースポーツに積極的なメーカーであるとか、その頃、同時に販売されていた4ドアサルーン「テーマ」を想像してプレミアムカーメーカーと答える人もいるかもしれない。「ランチア」のレース部門で長い間テクニカルディレクターを務めた生粋のランチア人、ジャンニ・トンティはライバルを研究したり、既存の技術を組み合わせる事で挑もうとはしないで、目標とする勝利に対してイノベーション(=革新)で挑む。これこそがランチアのエンジニアリング哲学と語る。トンティは「ランチア アウレリア」に搭載される世界初となるV6気筒エンジンを、自動車史に於ける最高のエンジニアの一人、ヴィットリオ・ヤーノの元で開発したフランチェスコ・デ・ヴィルジリオから、この哲学とエンジニアとしての姿勢を伝授された。このヴィルジリオがランチアに就職したのは1939年で「ランチア」の創始者ヴィンチェンツォ・ランチアは、その2年前に既に他界していた。しかし古くからのエンジニアやテストドライバーが在籍し、その中でヴィルジリオもまた「ランチア」の社名を世に知らしめた名車「ラムダ」の独創的なモノコックシャーシやスライディングピラー式サスペンションを開発したバッティスタ・ジョバンニ・ファルケットからエンジニアとしての薫陶を受けていた。そしてファルケット自身も、若かりし頃に創始者ヴィンチェンツォ・ランチアの開発姿勢や哲学に影響を受けていた。こうしてトンティがヴィルジリオから伝授された「ランチア」のエンジニアリング哲学とは、創始者から「ランチア」の歴代エンジニア達へと連綿と受け継がれたものとなっている。その開発姿勢とは、理想のために技術開発を行うこと。そしてイノベーションとは手段であり、それを駆使してより良いクルマを造る事が目標とされた。そして創始者ヴィンチェンツォが、その条件として常に重きを置いていたのは高い走破性良好な乗り心地と優れたハンドリング、そして高い信頼性であったとされている。これらの条件が融合した創始者ヴィンチェンツォによるランチアイズムが高い次元で結実して、成功を収めた最初のモデルが192210月のパリサロンで発表された「ラムダ」だった。このモデルは狭角V4エンジンモノコックシャーシスライディングピラー式前輪独立懸架サスペンションという特徴を備え、それぞれエンジン、シャーシ、サスペンションというクルマを構成する主たる要素に新しい技術が採用されていた。どの技術も、ヴィンチェンツォ自身による知識と、かつてのレーシングドライバーとしての経験から生み出されたものとなりイノベーションそのものとなる。この「ラムダ」で示されたランチアイズムは、その後に続くモデルに受け継がれ、高い独自性と革新性をカタチにしながら自動車史に影響をもたらすモデルを生み出し、イタリア随一の高級ブランドとして自動車に高い鑑識眼を持つコニサー達から絶大な支持を受けて行く事となる。世界情勢を鑑みて小型車として設計された「アウグスタ」では、小さくても開口部の広いピラーレスの観音開きのドアを採用し「ラムダ」で用いられたセミモノコックシャーシ構造は、フルモノコック構造へと進化をみせ1933年にデビューする。この「アウグスタ」の後継モデルとして、空力に配慮した発展型のフルモノコックボディで設計された「アプリリア」と、一回り小型の「アルデア」は、ヴィンチェンツォのもとで最後に造られたモデルとなる。戦後、亡き父ヴィンチェンツォの後を継いだ息子のジャンニ・ランチアと、ヴィットリオ・ヤーノの時代になると「アプリリア」はフランチェスコ・デ・ヴィルジリオ設計による世界初のV6気筒エンジンと、エンジンと変速機をフロントとリアに分けて搭載するトランスアクスル方式を採用した「アウレリア」に代替わりし、量産車初のGTを車名に採用する。「アルデア」は狭角V4エンジンを引き継いだ「アッピア」にモデルチェンジし、複数のカロッツェリアによるクーペやコンバーチブル・ボディを架装したスペシャルモデルも製作される。その後「ランチア」は、財政危機を抱える中でヴィットリオ・ヤーノが退職すると、自身も「ランチア」を深く尊敬する実業家カルロ・ペゼンティにより買収され、設計は航空機メーカー「カプローニ」傘下の自動車会社「CEMSAカプローニ」から招聘された元フィアットのエンジニア、アントニオ・フェッシアに託される。ここでもランチアイズムは継承され「アウレリア」は「フラミニア」に、「アッピア」は「フルヴィア」に、そしてミドルクラスに新開発の水平対向4気筒エンジンを搭載したモデル「フラヴィア」が発表された。この時代の「ランチア」のラインナップにはV6気筒エンジン水平対向4気筒エンジン狭角4気筒エンジンを搭載するモデルが同時に並べられていた。どのモデルも革新的な技術と品質至上主義に重きを置いて製造されるが、「ランチア」は会社としての経営状況は好転することなく19691024日に慢性的な経営不振を理由にフィアット・グループの傘下となる。以降「ランチア」は、フィアット車のコンポーネンツを流用しながら、常にシックでスポーティに仕立てられ、同クラスのフィアット車より常にハイクラスの実用車という独自性を活かしたモデルの生産へと移行しながらランチアイズムを継承する事となる。1972年に発表された「ベータ」は、ダンテ・ジアコーサによる「フィアット128」のFWDレイアウトを継承し「フィアット124」に搭載される直列4気筒・DOHCエンジン(ランプレディ・ユニット=以前フェラーリに在籍し12気筒エンジンの設計を担っていたアウレリオ・ランプレディ設計によるフィアット製エンジン)を搭載し、ランチア技術陣主導による設計とされるクーペ、スパイダー、HPE(ハイ・パフォーマンス・エステート=クーペスタイルのワゴン)等、多くのボディバリエーションを展開する。1976年ジュネーブショーで発表された上級中型車「ガンマ」は、「フラヴィア」譲りの新開発の水平対向4気筒・SOHCエンジンを搭載したFWDモデルで、カロッツェリア・ピニンファリーナのデザインによるベルリーナ(セダン)としては使いやすいファストバックスタイルをもつ革新的な5ドアボディと、エルメネジルド・ゼニアによるインテリアとのコンビネーションで表現されたモデルで、美しいボディスタイルをもつ2ドア・クーペもラインナップされる。19799月に発表された小型車「デルタ」は「フルヴィア」に続く1.31.5・直列4気筒SOHCエンジンを搭載した2ボックスの5ドア・ハッチバックとして開発されたモデルで、横置きエンジンによるFWDレイアウトと、主要コンポーネンツは同じグループ内の「フィアット・リトモ」と共有している。前後マクファーソン・ストラット式となる独立式サスペンションや、アルカンターラ生地を用いた上質なインテリア、ファインチューニングによりパワーアップされたエンジンなど随所にランチアイズムが散りばめられ小さな高級車という新境地を拓くとともに、セダンモデルの「プリズマ」を派生させ「ランチア」に新たな局面を構築する。これまで生産されてきた「ランチア」の量産モデルは、時代や環境、そして経営の変化の中でもランチアイズムを維持しながら個性際立つモデルとして存在感を放ってきた。それはモータースポーツ分野に於いても同様で、大きな成果を挙げてきた「ストラトス」「ベータ・モンテカルロ・ターボ」「037ラリー」「デルタS4」「デルタHFインテグラーレ」を見れば、その独自性と革新性が貫かれているのが良くわかる。同時にこれらのモデルの設計の裏にはジャンニ・トンティの様なエンジニアが存在しランチアイズムは継承され続けている。そしてフィアットとの関連性を更に深めたモデルが「フィアット・クロマ」「アルファロメオ164」「サーブ9000」との共同開発プロジェクト「ティーポ4」により1984年に発表された4ドアセダン「テーマ」となる。「デルタ」に続きカロッツェリア・イタルデザインのジョルジェット・ジュジァーロによりデザインされたクリーンでエレガントなボディデザインと、ルーミーで上品なインテリアが爆発的な人気を呼び、後にステーションワゴンを加え358千台を生産するヒット作となる。そのトップモデルには「フェラーリ308GTBクワトロヴァルボーレ」に搭載される3V8気筒DOHC32バルブ・エンジンをデチューンして搭載した「テーマ8.32」がラインナップされ「デルタHFインテグラーレ」とともに、この時代を象徴する存在となる。ランチアイズムを継承しながらエレガンスを追求したこの時代の「ランチア」では、エルメネジルド・ゼニアやミッソーニ、そしてポルトローナフラウといった、イタリア高級ブランドと組み合わされたインテリアが新たな独自性として加えられている。「デルタ」と「テーマ」のヒットにより開発に拍車がかかった後継車「デルタ」と「カッパ」は、カロッツェリア・ザガートの黄金期を支えたエルコーレ・スパーダがチーフを務めるデザイン会社I.DE.Aによるデザインが採用されている。「ランチア」の矜持でもある高いセンスでまとめられた後継車達ではあったが、生産台数が伸びた事で前作の生産期間が延長された影響を受け、そのデビューは遅れ「デルタ」「テーマ」を超える生産量は見込めなかった。それでも1996年に発表された、ピニンファリーナ出身のエンリコ・フミアによるボディデザインをもつ小型車「イプシロン」は「カレイドス(=万華鏡の語源)」と称される幅広いオプションカラー展開と、ボディ内外のデザインに強いこだわりを見せることで販売台数を伸ばし、ここでも他社では見ることの出来ない独自性を印象付けている。21世紀を迎え2001年のフランクフルトショーでデビューを果たしたモデルが、特徴的なフロントマスクをもった「ランチア」のフラッグシップモデル「テージス」となる。このボディデザインの元となったのは1998年に発表されたコンセプトモデル「ディアロゴス」で、このモデルには1950年代の「アウレリア」や「アッピア」など旧き佳き時代の「ランチア」をモチーフとするフロントグリルを始め、観音開きとなる4ドアボディを採用しクラッシックなエクステリアと、恐ろしくモダンなインテリアによる新時代の上級サルーンが表現されている。それまでの何処か控えめなエレガンスを感じさせる「ランチア」のフラッグシップモデルに対し、これまでの歴史を反映させながら伸びやかなイメージをもつ「ディアロゴス」は、この翌年、ローマ教皇の為にフィアットが贈ったリムジーネ「ジュビレオ」として再び衆目の前に姿を現す。長いホイールベースを更にストレッチして、防弾ガラス備えて後席頭上のルーフが大きく開くランドレー型式のボディのデザインは、明らかに「ディアロゴス」がベースとされていた。「テーマ」の後を継いで「ランチア」のフラッグシップとされた「カッパ」の後継車として開発コード841のナンバーをもって開発が進められていた「テージス」、そしてベースとなった「ディアロゴス」のデザインは、マイク・ロビンソンによるものとなる。19967月にチェントロ・スティーレ・ランチア(ランチア・デザインセンター)を去ったエンリコ・フミアの後を継ぎ、そのポジションに就いたマイク・ロビンソンは、1956年にロスアンゼルスに生まれたアメリカ人。カーデザインを志したきっかけは、シアトル在住時に図書館の雑誌に掲載されていた1970年のコンセプトカー「ストラトス ゼロ」の写真だった。シアトルのワシントン大学で美術と工業デザインを専攻し「フォード」「ボルボ」でインターンシップを経験後、イタリアに渡りトリノの「オペル」でデザイナーを務め、カロッツェリア「ギア」を経て「フィアット」に移籍する。1986年にロビンソンが「ランチア」に来た頃には、社内では自社製品のデザインに対して、野心溢れる精神が失われた状態に感じられた事から、複数の知覚や触覚から受ける目に見えない美しさをひとつの感覚として捉え、これをCADデザイン作業に盛り込むというデザイン改革を行い、これが反映されたモデルが「ディアロゴス」だった。このデザインを量産モデルへと進化させた「テージス」は、ハイクラスのサルーンを必要とする限られた人々に密かに公開され、その反応を拾い上げて入念に仕上げられたモデルとされている。当時の「メルセデスベンツEクラス(W211)」や「BMW5シリーズ(E39)」と同等か少し大型のボディをもつ「テージス」は、このクラスと更に上のクラスを担ってフィアットグループ内だけにとどまらず、イタリアを代表する最高級サルーンとしても位置付けられている。「アウレリア」のイメージをもつフロントグリルからAピラーへと伸びる稜線と、緩やかにエッジが走るフェンダー上の峰の間には彫刻的で複雑な造形の谷が形成され、いにしえの甲冑の面の様なデザインがライトカバーには施されている。これらのデザインは多くの人々がイメージする、シャープな造形を明るく鮮やかな色で染め上げた営業用のイタリアンデザインとは異なる趣を見せ、どこか無口で影のある中世的なニュアンスをもつ地のイタリアを感じさせる、イタリアを深く理解した者に向けたデザイン手法で纏められている。絞り込まれたリアフェンダー後方にレイアウトされた細く長く弧を描くLEDテールライトは、ルーフから緩やかに下るCピラーに呼応した流麗かつフォーマルなリアデザインに溶け込んで、後続車に新たな時代の高級サルーンを印象付ける独自性の高いデザインとされ、車名の「テージス=thesis=主張」と同様に静かに「ランチア」を「主張」したものとなっている。今回入荷した2009年型「テージス」が搭載するエンジンは、水冷60°V6気筒DOHC24バルブのベルト駆動によるオールアルミ製となり、ボア×ストローク93mm×78mmから3179ccの排気量を得る。10.5の圧縮比とボッシュモトロニック燃料噴射装置を装備し、最高出力230馬力/6000rpm、最大トルク29.4kgm/4800rpmを発揮する。アルファロメオ製となるこのエンジンはアルファロメオのエンジニア、ジュゼッペ・ブッソにより1979年にアルファロメオの大型サルーン「アルファ6」の為に造られた2.5SOHCV6気筒エンジンに端を発するブッソーネ・エンジンの愛称で呼ばれるもの。DOHCエンジンを主とするアルファロメオ がFWDの小型車「アルファ スッド」に搭載する水平対向エンジンに次いで開発したこのSOHCエンジンは、半球型燃焼室とする為にV字形に吸・排気バルブをレイアウトしている。SOHCエンジンの場合、吸・排気バルブの中心線上にカムシャフトを配置し、ロッカーアームでそれぞれのバルブを作動させるのがセオリーとなるが、このブッソーネ・エンジンでは、吸気バルブの上にカムシャフトを配置しそれを直接作動させ、排気バルブはプッシュロッドとベルクランクにより作動させている。このメカニズムは1934年のフェルディナント・ポルシェ設計による「アウトウニオン・グランプリカー(=Pヴァーゲン)」に搭載されるV16気筒エンジンの流れを汲んだものとなり、同じく60°のバンク角も共通となる。軽い回転感と快音を響かせるこのエンジンは名機の誉れ高く、その後、排気量をアップしながらDOHC化されるなどの進化を経て「テージス」に搭載される3.2版は、最終進化型でもある。「ランチア」ではフラッグシップだった「テーマ」の後期仕様のトップグレードから、後継車「カッパ」のトップグレードともに、このアルファロメオ製 となるブッソーネ・エンジンを搭載し「テージス」も発表時にはトップグレードに3版のブッソーネ・エンジンを搭載している。2004年にラインナップに存在するマルチジェット・ターボディーゼル・エンジンが、DOHC4バルブ化されるタイミングで「テージス」には、この3.2版のブッソーネ・エンジンがラインナップに追加されている。アルファロメオでは、この3.2・エンジンは、本来「156/147GTA」というスペシャルモデルの為に開発され、250馬力を発揮し6MTと組み合わされていた。その後「GTV/スパイダー」「GT」へとこのエンジンの搭載モデルは広がりをみせるが、いずれもチューニングは240馬力とされ、フラッグシップモデル「166」にもフェイスリフトを機に本国仕様には搭載モデルが存在している。ATトランスミッションとの組み合わせが設定されていなかった事から「166」の日本仕様ではフェイスリフト後も3エンジン+ZF4AT・スポルトロニックのみの設定とされていた。「アルファロメオ」各モデルに搭載されるこのエンジンは、小気味良いレスポンスと軽い回転感、3000rpmあたりからその存在をアピールするスポーティなサウンドが特徴となるが「ランチア」に搭載されるにあたり、味わいはそのままにサウンドは遠くから響く程度に抑えられた独自のコンフォートなチューニングが施されている。「テージス」搭載されるエンジンは、3版、3.2版ともに組み合わされるトランスミッションは「アルファロメオ166」のZF4AT・スポルトロニックではなく、スムーズな変速を得意とする日本のアイシン精機製5ATコンフォトロニックとされ、任意にギアチェンジが可能なシーケンシャルモードが装備されている。足回りは、フロント、リアともにアルミ製のパーツを多用した、凝ったアーム形状をもつ専用開発されたマルチリンク式が採用され、前後ともにスタビライザーを装備する。コイルスプリングと組み合わされるショックアブソーバーは、ザックスと共同開発された6センサー式の電子制御減衰率可変型で、最適なダンピングレートを演算するスカイフック・ロジックが適用され、減衰特性を複雑精妙に電子制御しながら、フラットライドの追求とハンドリングの向上が図られている。ブレーキはフロントに305mm×28mm、リアに281mm×22mmサイズのベンチレーテッドディスクが採用され、ABSが装備されている。また電動メカニカル式アクチュエーターにより、リア・ブレーキキャリパー内のサイドブレーキを作動させるEPB(エレクトリック・パーキング・ブレーキ)が、世界初装備されたモデルとなる。ホイールは16インチ径×7Jの純正ホイールを装備するモデルが多い中で、今回入荷したモデルには17インチ径×8Jサイズの美しいデザインの純正オプションホイールが装備され足元を引き締めている。組み合わされるタイヤは215/55R17サイズとなっている。ウッド、軽金属、皮革ともにフェイク無しのマテリアルが採用されるインテリアは、機能性と趣味の良い落ち着いた控えめな造形が見事な調和を見せている。エアバックを備えた4スポークステアリングを通してドライバー正面に向かい合うメータークラスター内にレイアウトされたメーター類のデザインは、1950年代の「アウレリア」や「フラミニア」に採用されていたイェーガー製のメーターを模したものとなる。少し斜めの方向からメーターを覗くと文字盤の白い数字はグレーの背景から浮いた状態で配置され、針は更に手前にレイアウトされている。立体的な凝った造りのこのメーターは、ライト点灯時にはグレーの背景部分が白く変化し数字の輪郭を浮かび上がらせ異なる表情を見せる。メータークラスターの下部の高さを曲線を描きながら走る細めのウッドトリムは、マホガニーの木目が活かされたナチュラルな仕上げが施され、後部ドアまで緩やかに下降しながら柔らかい雰囲気をキャビンにもたらしている。同じ仕上げのウッドパネルはギアセレクター基部にも用いられ、スタッガート式が採用されるセレクターの頂部に使われるウッドノブには、象嵌細工風に埋め込まれた「LANCIA」の文字がレイアウトされている。電動メカニカル式のサイドブレーキスイッチやナビゲーションまわり、パワーウィンドウスイッチ、ドリンクホルダーの蓋には、冷んやりとした感触をもつマグネシウム合金が採用される。暖かみのあるウッドとは対照的に手で触れるパーツは素材から感じられる触感にこだわるデザイナーの配慮が伺える。ドリンクホルダー後方にはエアコンと連動した保冷・保温が可能なセンターコンソールボックスが装備され、このクラスのモデルらしくリアウィンドウには電動式サンシェードを装備する。サンバイザーの間と後席上方に備わる洒落たカットが施された2つのルームランプは、点灯時には徐々に明るさを増し消灯時には見事にその存在感を消す上品な仕立てとなっている。高級家具メーカーとして知られるカッシーナを傘下におさめるポルトローナフラウ社製のレザーが採用される、電動調整式のシートには「ディアロゴス」に装備されていたエンブレムの形状を模した特徴的なデザインが施された逆三角形のヘッドレストが4席に備えられ、背面・座面にはラウンドした柔らかいフォルムが用いられている。乗員の身体を包む、たっぷりとしたサイズのシートに張られているレザー表皮のきめ細かさは、他のプレミアムクラスのモデルでもなかなかお目にかかれない、妙なる手触りをもつ上質な素材が用いられている。空調システムはフルオートマチック式で、前席左右と後席を個別にコントロール出来るマルチゾーン式となる。この空調システムによる風はダッシュボードに配された可変ルーバーをもつ吹き出し口からだけでは無く、助手席前方のパネルに無数に穿たれた子孔からも柔らかく送り出され、後席用のフェイスレベルのエアアウトレットは、Bピラー上にレイアウトされることで、このクラスのモデルに相応しい空調環境を再現している。また今回入荷した車両には、本国仕様ではオプション扱いとされているソーラー電池付きの電動サンルーフが装備されている。このサンルーフには、ソーラー電池で発電された電力を使ってファンを稼働させ、駐車中にキャビン内の換気をする機能が備えられている。全長×全幅×全高は、4890mm×1830mm×1470mmとなり、ホイールベースは2805mm、トレッドは前1570mm、後1540mm、車両重量は1850kgとなっている。最小回転半径は6.1m、燃料タンク容量は75となる。2001年〜2008年の間に生産された「テージス」は15661台となり、2004年から追加された今回入荷した3.2エンジン搭載モデルを含む、2004年以降に生産された台数は7379台となっている。メーカー公表性能値は、0100km/h加速は8.8秒、最高速度は240km/hとなり、3版のエンジンを搭載するモデルの9.2秒と234km/hを上回る性能を誇る。1950年代の「アウレリア」をはじめとするヒストリック・ランチアの造形をモチーフとする「テージス」のフロントフェイスは、そのフォルムの中に見事な調和を見せ、高い独自性と存在感を放っている。ヘッドランプ下の拭き残された涙の様なヘッドランプウォッシャーカバーから始まり、フロントフェンダーの頂部からサイドウィンドウ下部へと続くウェストラインは、絞り込まれたリアに下降して2条の弧を描くLED式テールランプへと続き、緩やかに美しい弓なりのラインを形成する。5mに届かんとする大型のボディは一見オーソドックスなサルーンのアウトラインの中に、実に巧妙に印象的なデザインモチーフが散りばめられている。クロームメッキの施された電磁式のドアノブを引いて、ずしりとしたドアを開いてシートに腰を下ろす。電動式となるシートやステアリングコラムは、あらゆる調整が可能で望みどおりの理想的なドライビングポジションを得る事が出来、前方にはフロントグリルへと続く長いボンネットが視界に残されている。キャビン内のドライバーを囲むあらゆるデザインは、奇をてらったものとはならなずに、ひとつひとつが凝っていて優しくエレガントな雰囲気に調律されている。この時代のハイクラスのモデルの多くがダッシュボードをボタンやスイッチ、レバー類で埋め尽くす中「ランチア」のデザイナーは、それを追うことはせずに合理性と美しさを両立させることに成功している。エンジンを始動させてもエンジンからの音量は低く抑えられ、直接的に響く事無く粛々とアイドリングが続く。贅沢に厚めのウィンドウ類が採用されドアのシーリングは3重構造、トーボード周りも入念に遮音が施されている。Dレンジにセレクターレバーを移動し、ゆっくりとアクセルを踏み込むと1.8トンを超えるボディは緩やかに走り出し、タウンスピードではこのクラスに求められる落ち着いた乗り心地が味わえる。ゆったりとした身のこなしと同様に、しっとりとした感触をもつステアリングからは、使われるギアの高い精度が感じられ、ボディサイズと車両重量を忘れさせる操作フィールから麗しいハンドリング特性を披露する。ATは、常にドライバーの要求する加速を満たすべく、エンジン回転数をある程度キープしながらスムーズな変速を繰り返し、タウンユースでも大きなボディを持て余す感覚を覚える事は無い。加減速時や旋回時においても凝った足回りに使われるスカイフック・ダンパーは、ごく自然にコンフォートライドを維持し続けてくれる。「テージス」が最も得意とするのは高速巡行で、その類稀な資質を心ゆくまで堪能するには、高速道路の右側の車線のスピード域を維持することが必要となる。矢のように直進するという表現がしっくりと当てはまる高い直進安定性と、横風からの影響にも強いボディ形状を活かして風切り音も極めて低く抑えられている。こういった場面では、高いボディ剛性がドライバーに安心感を与えフロアからの振動が無く、サスペンションアームの取り付け剛性の高さから、長時間のドライブでも疲れは軽微なものとなる。また高速巡行ではロングホイールベースをもつ重量級のボディのアドバンテージと、スカイフック・ダンパーによるフラットライド感が強調され、バネ下が上下動を繰り返すことによりキャビンでは良好な乗り心地が維持される。フロントにエンジンを搭載するFWDという事から、フロント寄りの重量配分によりワインディングロードではアンダーステア傾向を想像させるが、ここでもスカイフック・ダンパーは有効に機能し、ステアリングのコントロール性を上げつつアンダーステアを低減し、車体を安定方向に維持し続けボディの大きさを感じさせない回頭性を見せる。高回転域で活気付くブッソーネ・エンジンは、シーケンシャルモードを使えばレブリミットまで引っ張る事が出来、自動シフトアップしないで軽い快音を響かせながら心地よいレスポンスを味わう事が可能となる。いざという時の為にASR(アンチ・スリップ・レギュレーション=センサーにより発進・加速時のタイヤの空転を感知して自動でブレーキを作動させたりエンジン出力を絞る車体安定装置)や、ESP(エレクトリック・スタビリティ・プログラム=センサーにより旋回時や危険回避時に車体のスライドやスピンを察知し自動で適切に個々のブレーキを作動させる安全支援システム)も装備し、8(フロント前面+側面、リア前面、およびカーテンエアバック)のエアバックを備え、安全に配慮することも怠りない。「テーマ」「カッパ」の後継車であり、遠く「アウレリア」や「フラミニア」の時代から継承される「ランチア」らしさを、視覚のみならず嗅覚や触感などを含め統合的な質感を良き伝統として引き継ぎながら開発された「テージス」は、当時、多くのドイツ製サルーンで占められていたハイクラスモデルのマーケットに全く異なる独自のアプローチで挑んだモデルとなる。それは創始者ヴィンチェンツォ・ランチアが提唱したランチアイズムの伝統と、その核となる社内で繰り返されてきたイノベーションの中で育まれた深い見識が活かされた賜物となる。エレガントさが滲み出る「ランチア」ならではのデザインで仕上げられ、高いコンフォート性能と走破性を併せもつ、凛とした高級サルーンが「テージス」となる。こういう仕立て方で高級サルーンを開発出来る「ランチア」は、自動車メーカーの中では多くの自動車好きのファンをもつ稀有な存在となり、その独創性に於いては未だに右に出るメーカーは存在しないといえるのかもしれない