ポルシェ 912
project car
ナンバーズマッチング 車両
こちらの車両は、弊社で総合判断して、もう少し手を加える事により、車両価値の向上が出来る素材です。
project carとして、今の現状にて販売させていただいております。
車両状態として、直近にて総合点検、機関系、足回り等整備を行っております。
ボディー色は、現代のオフホワイトカラーにオールペイントされており、60年代のアイボリーホワイトに変更をおすすめします。
ペイント施工処理等芳しくなく、モール類も欠損してる部分があり、フロント、リアウィンカーレンズは、クリアタイプに変更されております。
内装は、天張り要張替、リアシート座面欠品、サンバイザー劣化、ダッシュボード変色等がございます。
欠品、交換部品等、入手でき他の部分はリペア可能となります。
有償となりますが、弊社が1台1台心を込めて、内外装お客様お好みの仕様変更を、お手伝いさせていただきますので、是非お申し付け下さい。
︎「ポルシェ」の名前を世界に広めたのは「356」の成功があったからに他ならない。「ポルシェ356」の正式デビューは1949年3月のジュネーブショーとなりフォルクスワーゲンのパワーユニットを用いながらも全く異なるクルマに仕上がり、従来のスポーツカーの概念を覆えすような新しい設計が施されていた。1965年9月にその生産が終了するまでに約7万8千台近くがシュトゥットガルトからデリバリーされた。その「356」シリーズの大いなる成功を引き継いで、現代まで進化を続けながら生産が続けられるのが「911」シリーズである。当時のポルシェ社の社長であり「911」開発計画の最高責任者であったフェリー・ポルシェは、新たに誕生した「911」を「ポルシェの哲学である『最も純粋なカタチでのドライビング』を基調に「356カレラ」に匹敵する性能を備え、より高い居住性と実用性を備えたクルマとして設計した」と説明している。フェリー・ポルシェが目指したのは、新たな時代に向けた高いパフォーマンスと、優れたコンフォート性能を両立することであった。それを達成するために空冷水平対向6気筒エンジンが開発され、全く異なるサスペンションシステムを備える、ポルシェ初のモノコックボディが誕生した。「911」は「356」とは異なり「VWビートル」からの完全なる決別を表明しながら、エンジン搭載位置はポルシェの哲学に従いトラクションに優れるリア・エンジンが継承されていた。1964年から生産が開始された「911」は、確かに「356」シリーズを全ての面で上回るピュア・スポーツとして登場した。しかし「356」より7割近くも跳ね上がってしまった車両価格は、唯一の問題点でもあった。そこでポルシェは1965年に、安価なポルシェ製スポーツ・モデルを望む多くの人々にむけニューヨーク・オートショーに於いて「ポルシェ912」というニューモデルを発表する。このモデルの最大の特徴は「911」と共通のボディに「356」シリーズの最終モデルである「356SC」に搭載されたタイプ616/16型をベースとする616/36型・空冷4気筒OHVエンジンが搭載され、コストが抑えている事となる。1965年4月に販売が開始された「912」は、日本では同年5月15日に東京プリンスホテルに於いて輸入元である三和自動車により「911」とともに発表された。それまで販売されていた「356」のベースモデルが235万円で販売されていたのに対して新型「911」は200万円上乗せされた435万円。この販売価格のギャップをうめるべく「912」は、315万円で販売され「911」と同じ新開発のモノコックボディをもち、同じ形式のサスペンションが採用されている。同型のスチールホイールにクロームメッキされたホイールキャップが装備され、すっきりとしたスレンダーなフェンダーをもち、プレーンな佇まいは「911」と変わる事が無かった。また、インテリアでは5連メーターが3連とされ、ウッドパネルが張られたダッシュボードはアルミ製のプレートに、ウッド・ステアリングはエボナイト製にそれぞれ簡素化が図られている。130馬力の2ℓ・フラット6エンジンを搭載する「911」に対して、1.6ℓ・フラット4エンジンの「912」は、動力性能が低下するのは否めない。しかしリアが2気筒分、軽量化されることにより、アンダーステア/オーバーステアの急激な変化に苦悩するこの時代の「911」に対して、遥かにアンダーステアは軽く、ニュートラルに近い理想的なハンドリング特性をアドバンテージとし持っていた。︎「ポルシェ912」は、1968年4月に4台が輸入元である三和自動車から警察に寄贈された。これは1960年代に入り、名神高速道路、東名高速道路が相次いで開通し、日本のモータリゼーションの発達に寄与するために、当時の国産車より高性能なパトカーが必要という考えと、「ポルシェ」がパトカーになることで宣伝効果を狙ったものでもある。しかし、民間会社である三和自動車が、警察にクルマを寄与するという事は、前例がなく暗礁に乗り上げかけたアイデアだったが、損害保険会社の寄付金により「912」が買い上げられるという打開策により解決。三和自動車は「912」をパトカーに無償で仕立て上げる事で、この計画に参加出来る事となった。パトカー製作はことのほか苦労し、当時のパトカー用サイレンや赤色灯は、大型で「ポルシェ」には全く似つかわしくなかった。また車載の無線機も高額な移動用超短波無線機でないと、受領出来ないと言われ、結局1台、375万円と高額な「912」となってしまう。費用が嵩んだ「912パトカー」だったが、ポルシェ・クラブ・オブ・ジャパン関東支部の寄付もあり、何とか納車まで辿り着くと、はじめに京都、愛知県警に、続いて神奈川、静岡県警に無事納車された。神奈川県警の高速隊用に配備された1台は、1968年から1974年まで約6年間で、総走行距離は15万5943kmにも及んだ。検挙総数8460件を数え、その中には178km/hの速度違反検挙も含まれている。引退した後は神奈川県警察学校のロビーに展示され、1990年代前半迄そこで余生を過ごしていたといわれている。今回入荷した1966年型「ポルシェ912」が搭載するエンジンは、616/36型とよばれる空冷・水平対向4気筒OHVでボア×ストローク82.5mm×74.0mmから1582ccの排気量を得る。圧縮比は「356SC」用となる616/16型の9.5から若干低い9.3となり、ソレックス40PⅡキャブレターが装備されている。最高出力90馬力/5800rpm、12.4kgm/3500rpmを発揮し、616/16型(95馬力/12.4kgm)よりドライバビリティを重視した味付けとなっている。組み合わされるトランスミッションは4段MTが標準装備され、オプションで「911」と同じ、左手前に1速が位置する902/1型・5段MTも用意された。この5段MTは、クロスレシオにより少ないトルクを有効に活用することで「356」より重い「912」のボディを活発に走らせる事を可能とした。︎足回りはフロントにマクファーソン・ストラット式+トーションバー・スプリング、リアはセミトレーリングアーム式+トーションバー・スプリングとなり「911」と基本レイアウトは変わらない。フロント・スタビライザーは省略され、エンジン・ウェイトの違いから、リア・トーションバースプリングの取り付けアングルが変更されている。サスペンション・ストロークは充分にとられ、サルーン並みともいえる乗り心地をもつ。ブレーキは4輪ソリッド・ディスク・ブレーキが装備され、Ate製キャリパーと組み合わされ、サーボアシストは付けられていない。ホイールは4.5J×15インチのスチールホイールに、メッキ仕上げのホイールキャップが標準で装備され、165HR15サイズのタイヤが組み合わされている。今回入荷した車両には「911S」に装備される5.5Jのフックス製鍛造アルミホイールが装備され、フロントに185/65-15、リアに195/65-15サイズのタイヤが組み合わされている。インテリアは、発表された当時の「911」が、フラット6エンジンを搭載し、まだ併売されていた「356」より高額だった為、ダッシュボードにウッドパネルを、ステアリングはウッド製とするなど豪華な装備が施されていたが「912」ではシンプルなインテリアとなっている。初期モデルではメータークラスターには3つのメーターしかレイアウトされていなかった「912」だが、1967年型からは「911」同様に5つのメーターが備わるようになる。それ以前のモデルでは、左右2つのメーターはオプションで追加装備が可能とされていた。今回入荷した車両も5連メーターが装備され、中央に大径のタコメーターが位置するのも「911」と同様になるが、そのスケールは千回転低い7000rpmとなり、6000 rpmを超えたところにレッドゾーンが記されている。その右側には200km/h迄の速度計、左側には燃料/油量のコンビメーターを備える。両端には時計と温度計が配置され、メーター類はVDO製でメッキのリングをもち、全てグリーンのレタリングが採用された初期型「911」と同様の特徴をもつ。ステアリングはやや大きく感じられるブラックスポークの純正4スポーク・ステアリングが装備され、材質は異なるが「911」と同じデザインが採用されている。また吊り下げ式ではなく床から生えるオルガン式のペダル類と、ステアリング・ポストの左側にキーシリンダーがレイアウトされる特徴も「911」と同様。サイドウィンドウには開閉可能な三角窓が備わり、レザー張りとされたシートは、ヘッドレストの付かないローバックタイプとなる。リア・シートは+2の補助的な広さしか確保されず、背もたれを手前に倒してラゲッジ・スペースとしても活用出来るものとなっている。︎全長×全幅×全高は、4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベースは2211mm、トレッド前1337mm、後1317mm、車両重量970kgとなっている。燃料タンク容量は62ℓで、新車時価格は315万円(5MT)/295万円(4MT)となっている。1965年から1969年まで生産された「912」は、およそ3万台とされ、1968年から販売された「911T」や、1969年に発表された「914」にそのポジションを譲ることになる。メーカー公表性能値は0→400m加速18.2秒、0→1000m加速33.0秒、最高速度185km/hとなっている。軽量な「356SC」と同等の最高速度を誇るが、フラット6エンジンを搭載する「911」の、0→400m加速16.5秒、最高速度210km/hとの性能差は、搭載されるエンジンを考慮すれば致し方ないところとなる。︎今回入荷した1966年型「912」は、華奢なドアハンドルや、フレアしていないプレーンなフェンダーラインをもち、そのオリジナルともいうべき1963年9月12日に始まったフランクフルトショーに展示された「901」に近い瀟洒な佇まいをもつ。エルヴィン・コメンダによりデザインされた「356」の後継車として、ブッツィーの愛称で親しまれるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが表現したかったモダンな「911」そのもののカタチがそこにある。この貴重なオリジナル・ボディは、その後操縦安定性を高める為にホイールベースを拡大し、パワーアップされたエンジン搭載により太いタイヤをおさめる為にフェンダーを拡幅、安全基準を満たす為に大型バンパーを装備されたりと、僅かずつその容貌とサイズを変化させながら、現代まで存在し続けている。全くことなるディメンジョンをもちながらも、常に「911」は「ポルシェ」そのものといえるイメージを維持しながら生きながらえてきた1台といえる。その「911」と同様のドアハンドルを引いてシートに腰を下ろすと、細めのピラー類により開けた視界が広がり、低めの目線から眼前にはヘッドライトの峰が2本伸びる景色が広がる。ドアを閉めれば、金庫の様だと表現される、しっかりとしたモノコックボディを感じることが出来る。左手でキーを捻ると、セルモーターのメカニカルな音がリアから聞こえ、続いて空冷フラット4エンジン特有の渇いた快音が響く。「356」のエンジン音に近いそのサウンドは、回転を上げた時にヒューンという独特の高周波音を響かせる。クラッチを踏んで1速を選び、アイドリングから少し回転を上げたところでクラッチをエンゲージし、クルマが動きだしてから完全にクラッチを繋いで回転を上げる、という空冷ポルシェ特有のスタートをしてみる。1500 rpmでも10.5kgm、2000 rpmも回せば11.0kgmを発生するフラット4エンジンは、低回転域から充実したトルクを発揮し「911」より110kgも軽量なボディをもつ「912」は、容易に市街地を走り抜ける事が出来る。フレキシブルな1.6ℓエンジンの性格は、現代の交通下でもストレスを感じることは少ない。サスペンションは、低速域ではやや硬めのフィーリングを感じさせるが、速度上昇とともに改善を見せる。パワーアシストを持たないステアリングは、切り始めに少々抵抗感はあるが、一度回しはじめてしまえば、多くの操舵力を必要とはしない。5000 rpmまで軽く回るエンジンは、高速道路に入れば、5速・100km/hが3200rpmとなり、全域にわたって厚いトルクをもつエンジンによりシフトダウンしなくても、ここから力強い加速をみせてくれる。加速フィーリングに「911」の様な官能性は感じられなくても、高速巡航は「912」にとって得意種目のひとつとなる。直進安定性も良好となり、路面のうねりや、繋ぎ目なども安定した姿勢を維持して走る事が可能となっている。ワインディングロードでは、上り勾配がきついコーナーでは、じれったい思いをさせられる事もあるが、それも下りで挽回することが出来る。基本的にサスペンションやタイヤが、完全にエンジンパワーに優っているので、安全なコーナリングを楽しむ事が可能となる。ステアリングは路面状況をダイレクトに返してくれるが、ブレーキはサーボアシストを持たないことから、それなりに踏力を要求するのでブレーキング・ポイントは手前に取るにこしたことはない。発表された時のシチュエーションから、廉価モデル的な目線で見られる「912」となるが、日々使えるドライバビリティやコンフォート性能には「911」より多くのアドバンテージを見い出す事も出来る。その上、何より最もシンプルで無垢な「911」誕生時のスタイリングを持つことは「912」の最大の魅力と言えるのかもしれない…