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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
フルレストア済
ボディタイプ
外装色
タンジェリンオレンジ
年式
1969 年型
走行距離
不明
乗車定員
4 名
サイズ
長 416 cm 幅 169 cm 高 127 cm
エンジン形式
排気量
1990 cc
馬力
170
トルク
車検
令和7年2月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

1963年の発表時には「901」とされ、その翌年9月のフランクフルトショーでは「911」と車名を変更して市販に移された「ポルシェ911」。1973年までのナローモデルとよばれる世代だけでも7つのシリーズに分けられる程、年を追うごとに小変更が加えられている。その中で「Bシリーズ」とよばれる1969年式では「ロングホイールベース」と「機械式インジェクション」というふたつのキーワードにより、ナローモデルの変遷の中でも注目すべき転機を迎えたシリーズとして位置付けられている。「ポルシェ911」は発売当初からリア・アクスル後方にエンジンを搭載する事でテールヘビーによる優れたトラクション性能を賞賛されながらも、オーバーステアリング傾向も指摘されていた。開発段階の想定より重量が嵩んでしまったエンジンとサスペンション組み付け許容誤差が、ライン生産ではクリアするのが難しいことが要因とされ、それに輪をかけて採用したタイヤの細さもその素性を助長していた。この特性を緩和すべく抜本的な解決方法として採用されたのが1969年式の「ロングホイールベース化」だった。エンジンとギアボックスの搭載位置を変更すること無く、ハーフシャフトのジョイント容量を増やしリア・サスペンション・アームを伸ばすとともにドライブシャフトに後退角をつける事で57mmホイールベースを延長し、2268mmとした。搭載位置をそのままとされたエンジンも材質が見直され軽量化することで、前後重量配分が1968年式(Aシリーズ)と比較すると、41.5:58.5から43:57まで改善された。またベースグレードの「911T」を除く「911E」と「911S」では185/70VR15サイズが標準化(1968年式では165/80HR15サイズだった)された事により、より安定したハンドリングが得られるとともに、もうひとつの大きな変更点となる「機械式インジェクション」が採用された。ウェーバーキャブレターの代わりに選ばれたのはボッシュ製となる機械式インジェクションで、カムシャフトにより駆動されるプランジャー式ポンプを用い、燃料噴射量をスロットル開度とエンジン回転速度によりコントロールするシステム。1966年からレーシングカーの「906」に組み込まれ、サーキットでの熟成が重ねられていて、採用当初から完成度の高いものとなっていた。インジェクション導入は、ドライバビリティやパフォーマンス向上だけでは無く、後に北米で実施される排ガス規制をも見据えた対策となっている。︎1969年式「ポルシェ911S」に搭載されるエンジンは「901/10型」とよばれる、空冷水平対向SOHC6気筒でクランクケースは軽量化の為、アルミ製から圧鋳造によるマグネシウム合金製に変更されている。ボア・ストロークは80.0mm×66.0mmで1991ccの排気量をもち、ボッシュ製プランジャーポンプ型機械式インジェクションを装備し、当時としては他を圧倒する9.8の高い圧縮比から、最高出力170馬力/6800rpmと18.5kgm/5500rpmの最大トルクを発揮する。機械式インジェクションは各気筒ごとに独立したスロットルを備えクランクケース同様マグネシウム合金製となる。1969年式「ポルシェ911」のラインナップは全て2ℓエンジン装備で、キャブレター装備のままの「911T」で110馬力、ベーシックな「911E」は140馬力、「911S」は高性能バージョンらしくマーレ製軽量アルミ鍛造ピストンで高められた圧縮比と、オーバーラップの大きめなカムプロフィール、吸排気バルブの大型化などにより170馬力となっている。1969年式「911S」は設計当初の2ℓエンジン搭載モデルの中で最も高いチューニングが施され、後に排気量が大きくなるエンジンは重量が嵩み、排ガス規制に対応したチューニングの為、ℓあたりの比出力は残念ながらこのモデルをピークに低くなってしまう。組み合わされるギアボックスは「902/1型」とよばれる5速マニュアルギアボックス。2速から5速までが通常のHパターンを構成するこのギアボックスは、強いセンタースプリングに抗するように、一番左側のスロットに手前に1速、向かい合う前方にリバースが位置する。1速から2速の変速にはクランク状にギアレバーを動かすイメージとなるが、1速にシフトした後、手を離すと自然とセンタリングスプリングにより、ギアレバーは右側に押し出されることで、2速へのシフトアップはそのまま前方に押し出すだけで完了する。続く3速へのシフトアップは、ギアレバーを再び手前に引き戻すだけとなり、はじめに1速のポジションにギアレバーをセットすれば、後は縦方向の前後に一往復するだけで1速→2速→3速とシフトアップが可能となる。2速から1速へのシフトダウン時は、シフトレバーをクランク状に動かさざるを得ないが、事前に1速ギアの入り口にあてがっておけばポルシェ・シンクロの働きにより、吸い込まれる様に簡単にシフトを完了することが出来る。スタート時にしか1速が使われる事の無い状況を考えると2速から5速がHパターンとなるこのシフトパターンは、大変使いやすいものと言えるかもしれない。︎足回りは、フロント・マクファーソンストラット式、リア・トレーリングアーム式となり、それぞれビルシュタインダンパーとトーションバースプリングが装備される。ブレーキはベンチレーテッドディスクを備え、組み合わされるキャリパーは「911R」にも採用されたATE製2ポッド・アルミキャリパーが組み合わされる。ホイールは5本スポークのフックス製鍛造アルミホイールとなり「ディープ・シックス」とよばれる1968年式911Sより0.5インチ幅広となる6J×15サイズとなる。タイヤは185/70VR15サイズ(今回入荷した車両には195/65R15サイズが装備されている)となっている。︎インテリアは、この年式からパッド付の新デザインの4本スポークステアリングが採用され、そのモダンなデザインが目を引く。ステアリングホイールはひとまわり小径化もされている。ステアリングを通してドライバー正面には、8000rpmまで刻まれたレブカウンター、その右側には250km/hまでのスピードメーターがレイアウトされ、メータークラスターにおさまるメーター類はVDO製となる。メーター類は1968年式からクロームリングが無くなり、盤面の文字も緑から白に変更された。「ポルシェ911」の特徴となっているステアリングポスト左側にイグニッションキーが備わり、ABCペダルはオルガンタイプとなる。1969年式からベンチレーション・システムの改善に伴い、三角窓は固定式となった。ダッシュボード下側には、装備されるクーラーの調整用ノブと吹き出し口がさりげなく備わる。エクステリアには、アルミ製エンジンフードを採用し、幅広タイヤ装着に対応して前後フェンダーは、僅かにフレアしたボディとなっている。またオルタネーターが490Wから770Wへ容量アップしたのにともない、バッテリーも電圧をあげるため、フロントトランク左右前端に2個のバッテリーが配置される。以前は左右それぞれ11kgのバラストが搭載されていたが、これにより改善される事となった。全長×全幅×全高は4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベース2268mm、トレッド前1374mm、後1355mm、車両重量1020kgとなっている。燃料タンク容量は62ℓで、最小回転半径は5.35m。1969年式「ポルシェ911S」の生産台数は1492台となる。メーカー公表性能値は、最高速度225km/h。︎「ポルシェ911」がデビューした1963年は、ロータスが「エラン」を発表した翌年であり、アルファロメオ からは「ジュリアスプリントGT」が、アバルトからは「シムカ2000GT」、そしてフェラーリ からは「250LM」とスポーツカー花盛りの時代だった。「ポルシェ911」に「911S」が追加デビューしたのは1967年。ベースとなる2ℓモデルの130馬力に対して、同じ排気量から160馬力を発揮し、レスポンスの良いエンジンとショート・ホイールベースボディによる斬れ味鋭い、アンダーステアを感じさせない乗り味は、乗り手を選ぶ辛口のスポーツカーとしての存在感をアピールしていた。その方向性を、57mm延長によるホイールベースと、更に10馬力増したエンジンで、マイルドとはけして言い切れない進化をとげて登場したのが1969年式「ポルシェ911S」となる。キーを捻りスターターを回すとインジェクション装備ながら、キャブレターモデルと同じ感じでエンジンは始動し、低回転域でのトルクのツキは僅かにキャブレターモデルを凌ぎ、レスポンスも鋭く感じられる。5500rpmでピークトルクとなるエンジンは5000rpmに近づくと勢いを増し7200rpmからのレッドゾーンに向け一気呵成に吹け上がる。その時のサウンドは、キャブレターモデルに一歩譲るかもしれないが、パワー感は上回って感じられる。延長されたホイールベースと太目のタイヤにより、安定感、安心感はあるが、それでもエンジン特性と車重を考えれば充分スポーティなものとなり、生産から50年以上経過したモデルとは思えない、クオリティの高さを味わえる。これはポルシェならではといえるだろう。同時代のモデルの中で、これを越えるモデルがあるとすれば、同じポルシェ製の「356」かもしれない。現在ではプレミアムなGTカーとSUVメーカーとして多くのユーザーに支持されるポルシェも、草創期の開発者達の熱がそのまま感じられるような、強い個性を持つモデルもまた古くからの多くの根強いファンに支持され続けている。それはポルシェでしか味わえない開発者のこだわりと時代を超えた高い製造クオリティの世界がそこには確実に存在し続けているからかも知れない…