BMW アルピナ B4S
BI TURBO CABRIO
[オプション装備]タンザナイトブルー・右ハンドル・ハーマンカードンオーディオシステム・ダッシュボードレザー・トップ&サイドビューモニター・アダプティブクルーズコントロール・ドライビングアシスト・レーンチェンジワーニング・アップルカープレイ・パーキングセンサー・
エアカラー・地デジチューナー・アラームシステム・アクティブプロテクション・エアブリーザークローム仕上げ 総額¥1.617.400 装備されております。 取扱説明書、保証書、スペアキー等 新車時からの備品等揃っております。
ドイツのミュンヘン西部、ブッフローエに拠点を置くアルピナ社、正式な社名はアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社という。創業60周年にあたる2025年末をもって同社は、アルピナ商標権をBMWに譲渡すると2022年3月10日に発表された。アルピナ社が生み出す生産車は、速さだけではなく快適性はもちろん、経済性を含めそれらを高い次元でバランスしたハイアベレージでの長距離移動性能に優れる特徴を持っている。アルピナ社は、創業者のブルカルト・ボーフェンジーペンの父、Dr.ルドルフ・ボーフェンジーペンが1952年にドイツ・バイエルン州に創業した事務機メーカーがその始まりとなる。その代表作となる機械式ポータブルタイプライターは、その初号機が1951年に完成し、アルプスの山頂が図案化されたエンブレムが付けられていた。1960年代になるとIBMが考案した電子タイプライターがシェアを伸ばし始め、ビジネス転換が余儀なくされた。創業者の息子であるブルカルト・ボーフェンジーペンは、自動車愛好家として1961年に発売されたBMW1500を購入、自らツインチョーク・ウェーバーによる、キャブレターのチューンナップを行う。タイプライター製造時に使われる精密機械製造技術のノウハウを転用するのに使えると考えたブルカルト・ボーフェンジーペンは、チューンナップキットの販売を開始する。このキットは評判をよび、その品質の高さからBMWの公認チューニングキットとして認められるとともに、BMWが販売した車両と同様の保証が受けられる事となり、ビジネスとして成長。1965年1月1日にドイツ・バイエルン州カウフビューレンにアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン合資会社を設立し、そのエンブレムにはきっかけとなったツインチョーク・ウェーバーと、エンジンの重要パーツであるクランクシャフトの図柄が採用される。従業員僅か8名からのスタートだったが、1966年にBMWが発表した「1600-2(後の1602)」用にも、積極的にチューニングパーツを用意した。その後1968年からモータースポーツに参戦すると「BMW2002」をベースとしたアルピナ製レーシングカーは大活躍をする。1969年3月にイタリア・モンツァサーキットで開催されたヨーロッパ・ツーリングカー選手権では「BMW2002」ベースのマシンで「ポルシェ911」や「アルファロメオGTA」「BMW」のワークスマシンまでも抑えて優勝を飾る。翌年1970年には「2800CS」をベースにレーシングカーを開発し、ヨーロッパ・ツーリングカー選手権を獲得する。この活躍が認められたアルピナ社は、1971年にはBMWの主力レーシングマシンの「BMW3.0CSL」の開発リーダーに抜擢され、デレク・ベルやニキ・ラウダのドライブにより数々のレースでの勝利を手中に収めた。アルピナ社は1977年にツーリングカー選手権のタイトルを獲得すると、このシーズンをもってレース活動を一時凍結。1978年に現在に続くミュンヘンの西、約70kmにあるブッフローエの街に工場を移設すると、BMWをベースとした高性能市販ロードモデルの開発に集中し、約100名の従業員を雇用し、初の市販モデルとなる「B6 2.8」「B7ターボ」の販売を開始する。1983年には当時の西ドイツの連邦自動車庁から自動車製造の認可を受け、小規模ながらも正式に自動車メーカーとして、他のチューニングカー・メーカーとは異なる存在感をみせる。高性能コンプリートカーというカテゴリーとしては、メルセデスベンツをベースとしていた「AMG」と同様に見られる事もあるが、アルピナ社の大きな特徴としては、BMWとの資本関係を持たずに、多くの手作業によりボディやエンジンを極めて高精度に加工している事が挙げられる。大トルクによるドライバビリティの高さと、それを活かす為の高いスタビリティを発揮する足回りのセッティングは、ひたすらエンジンのパワーを強調する為では無く、ラグジュアリーな内装と併せてハイスピードでのロングツーリングでも、最小限のストレスでの移動を可能とすることを持ち味としている。BMWから「ベントレー」や「アストンマーティン」等プレステージ・クラスに上級移行する顧客を対象とする、非常にニッチで意味のあるマーケットでのビジネスを展開してきた側面ももっている。アルピナ社は、BMWをベースに「スーパーカー並みのパフォーマンスを実現しながらも、快適性を犠牲にしない」というクルマ造りは、BMWやBMW Mモデルとは異なる味わいと満足感をユーザーに提供し、高性能車マーケットにおいて独自のポジションを確立し続けてきた。ブルカルト・ボーフェンジーペンはワイン愛好家でもあり、ワインを自製する為の広大なブドウ畑とワイナリーを所有し、ブッフローエのアルピナ敷地内では数十万本ものワインが貯蔵されている。微妙な味や香りの差にこだわるという意味では、造り出されるクルマ達との深い繋がりが感じられる。︎2013年にドイツ本国で「3シリーズ・クーペ」とよばれていたモデルが、新たに「4シリーズ(F32型)」として発表された翌年の東京モーターショーに於いて、アルピナ社は早くもこの「4シリーズ」をベースとする「B4ビターボ」をワールドプレミアする。かつてアルピナ社では車名につくアルファベットの「B」で6気筒エンジン・ベース(「C」はスモール6ベース)、続く数字でチューニング・レベルを表していたが、現在ではガソリンエンジン搭載モデルは「B」、続く数字はBMWでのベース・モデルを表している。BMWではM社によりN55型とよばれる、直列6気筒DOHCツインスクロール・シングルターボ・エンジンを同型クーペ・モデルの「M4(F82型)」に搭載するにあたりツイン・ターボ化し、強化・軽量化されたのがS55型エンジンとなる。同様に同型エンジンをツインターボ化して搭載する「B4ビターボ」だが、M社によるエンジンと大きく異なり、鍛造クランクシャフトに始まり、ターボチャージャー、大容量インタークーラー、冷却システム、ステンレス製エキゾーストシステム等、専用部品が組み合込まれる事で大きく異なるチューニングが施されている。またそのエンジン特性を活かすべくトランスミッションの形式も全く異なり、ダイレクトでレーシーな「M4」がツインクラッチ式の「M-DCT」を採用するのに対して「B4ビターボ」は、滑らかな変速のトルコン式・ZF製8速ATによる「アルピナ・スウィッチトロニック」が採用されている。この違いは、ハイパワーな2車のもつ性格の違いを最も良く表している。アルピナ自慢の足回りは電子制御ダンパーで煮詰められ、ハイパワーエンジンに相応しい強力なブレーキシステムが組み込まれている。410馬力と61.1kgmのトルクを発揮するエンジンにより、0→100km/h加速4.2秒、最高巡航速度303km/h(カブリオ・ボディ=F33型のB4ビターボ・カブリオは4.5秒と301km/hとなっている)の性能を標榜していた。これほどの性能を誇りながら2017年末になるとアルピナ社は、車名に「S」を加えた更なる進化を遂げたモデルとして「B4Sビターボ」を発表する。︎今回入荷した「B4Sビターボ・カブリオ」は「4シリーズ・カブリオレ(F33型)」のボディを用いたモデルとなっている。同じオープン・モデルでも、アルピナ社では「カブリオ」、BMWでは「カブリオレ」と表現する。このオープン・モデルでは、ライバルのメルセデスベンツとアウディでは、キャンバス・トップを用いているが、BMWは先代の「3シリーズ・カブリオレ(E93型)」からリトラクタブル・ハードトップを採用している。3分割式となるハードトップはオープン時にはトランクリッドに納められ、その開閉は室内からボタンひとつで約20秒で完了する。速度が18km/h以下なら走行しながらの開閉も可能となっている。︎「B4Sビターボ・カブリオ」が搭載するエンジンは、水冷式直列6気筒DOHC24バルブ直噴ツインターボとなる。ボア×ストローク84.0mm×89.6mmから2979ccの排気量を得る。ポンピングロスを抑え可変バルブリフト機能をもつバルブ・トロニック機構と、アルピナ向けに専用開発されたターボチャージャー、10.2の高圧縮比から最高出力440馬力/5500〜6250rpmと最大トルク67.3kgm/3000〜4500rpmを発揮する。注目すべきは61.2kgmという高トルクを2000〜5000rpmという広い回転域で得られるというところ。そこにはアルピナ社が高性能市販モデルを販売開始した頃の「B7ターボ」や、1989年に生産され世界最速のセダンといわれた「B10ビターボ(E34型)」での過給エンジンへのノウハウが活かされるとともに、広い回転域での扱いやすいトルク特性は一貫したものとなっている。またBMW M社による「M4(F82型)」が搭載する、S55型エンジンよる、最高出力431馬力/7300rpm、最大トルク56.1kgm/1850〜5500rpmを見ると、高回転・高出力型となり、それぞれの高性能エンジンのキャラクターの違いは一目瞭然となっている。組み合わされるトランスミッションは「B4Sビターボ・カブリオ」ではZFと共同開発によるトルコン式8速ATを採用し、ステアリング・スポーク裏の+と-のボタンによる変速が可能な「アルピナ・スウィッチトロニック」となっている。︎足回りは、フロントにダブルジョイント・ストラット式、リアはマルチリンク式となる。組み合わされるショック・アブソーバーは電子制御式となり、高性能スプリング、バンプ・ストップ・ラバー、スタビライザーと併せて「アルピナ・アダプティブ・スポーツ・サスペンション」を形成する。これによりドライバーはECO PRO、コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラスの中からドライビング・エクスペリエンス・コントロールスイッチにより、サスペンション・セッティングとドライビング・ダイナミクスを選択出来る。ブレーキはフロントに370mm径、リアには345mm径のベンチレーテッド・ディスクを装備し、フロントには4ポッド、リアには2ポッドのアルミモノブロック製・対抗型ピストンキャリパーが組み合わされている。ホイールはリム部に向かって細くなる放射線状のスポークが特徴的な「アルピナ・クラシック」とよばれる伝統的なデザインが採用された20インチ・サイズのホイールが備わる。エア・バルブとスタッドボルトはセンターキャップ内にレイアウトされ、サイズはフロント8J×20インチ、リア9J×20インチとなり、それぞれ245/30ZR20 90Y、265/30ZR20 94Yサイズのタイヤと組み合わされる。インテリアは、アルピナ伝統のブルーとグリーンのステッチが施された、熟練職人による手仕上げのラヴァリナ・レザー(フルグレインの成牛の皮革)が巻かれたスポーツ・ステアリングが目を惹く。そのステアリングの先には、赤いニードルとコーポレートカラーでもあるアルピナ・ブルーの盤面をもつ、左側に大径の330km/h(ベースモデルのBMW4シリーズは260km/h迄となる)迄のスピードメーター、右側には7500rpm迄刻まれたタコ・メーターがレイアウトされる。ダッシュボードはじめドア、マルチファンクションダイヤルを囲むフロアコンソールに使用されるウッドパネルは、クラフトマン・シップ溢れる最上級の素材が用いられている。スイッチ類のレイアウトはBMW4シリーズのインテリアに沿ったものとなるが、シフトノブ前方にはアルピナ社のプロダクション・プレートが誇らしげに配置されている。電動調整機構が備わる前席のヘッドレスト部分には、オープンモデルにはありがたいエアカラーとよばれるネック・ウォーマーが装備され、シート表皮は表情豊かで手触りの良い、アルピナ・オリジナルの本革素材が採用されている。背もたれ部分には4座席それぞれにメタル製のアルピナ・エンブレムが配置されている。︎全長×全幅×全高は4640mm×1825mm×1400mm、ホイールベース2810mm、トレッド前1550mm、後1575mm、車両重量1890kg(クーペモデルに比べ220kg増)となる。燃料タンク容量60ℓ、新車時車両価格は1330万円(Lhd)1358万円(Rhd・2018年)となっている。︎メーカー公表性能値は0→100km/h加速4.3秒、0→200km/h加速15.2秒、巡航最高速度(アルピナでは伝統的に最高速度を巡航最高速度と表記する)304km/hとなっている(クーペ・モデルはそれぞれ4.2秒、13.6秒、306km/hとなる)。︎「アルピナB4Sビターボカブリオ」の佇まいはアルピナ社製モデル特有の、僅かに低く落とされた車高と少し前下がりの姿勢がとても美しい。円弧を描くホイールアーチにおさまる「アルピナクラッシック・ホイール」のポジションも絶妙といえる。クローズ状態だとクーペと変わらないリトラクタブル・ハードトップのボディは、フロント・サイド・リアに高効率で控えめなエアロパーツが組み込まれ、細いアルピナ・ピンストライプが映える。ドアを開いてシートに腰を下ろし、ラヴァリナ・レザーのステアリングを握ると指先に吸いつくかの様な感触が得られる。エンジンを始動してみると、高圧のバーナーに点火したような高密度な圧を感じさせるそのサウンドは、エンジン音のみならずアクラポヴィッチ製となるステンレス製エキゾーストシステムからの音と併せて印象的なものとなっている。シフトを「Dレンジ」に移動してゆっくりとスロットルを開けて走り出す。その滑らかな走り出しと低速域でのしっとりとした走行感は、30%扁平のタイヤと20インチホイールの存在を忘れさせてくれる程となる。その足回りと同様にステアリングの感触や、ブレーキの効き具合も極めてリニアな操作感覚が味わえる。少しずつスロットルを開けていくと、スムーズに回転が上昇し、芳醇なトルクと天井知らずのパワーが溢れ出すが、それも右足の動きによりいかようにもなる。ターボ・エンジンでありながらパワー・デリバリーの秀でたリニアリティと、繊細な感覚はアルピナの手がけたパワーユニットならではと言えるだろう。ドライバーの気分次第で、繊細にも大胆にもパワーを引き出す事が可能となっている。人がクルマを動かす為に操作する様々な部分が高い次元でバランスされ、それが全て心地よさを生み出す方向に統一されている。パワーを引き出して走行してみると、どのドライビング・モードに於いても、想像より僅かに柔らかめな乗り心地の良さを残しながら、しなやかにワインディングロードもこなして行ける。アナログ・チューニングによる一発決めの足回りではなくても、まさにアルピナらしく減衰力設定が電子制御された見事なチューニングが施されている。低速での優しい乗り味から、ハイスピードのワインディングロードでのドライビング迄、そのどちらの走り方に於いても流麗な振る舞いを崩す事なく、継ぎ目なく連続性が感じられる。この熟成された足回りによる「アルピナ・ライド」といわれる乗り心地は、ロングツーリングでのストレスを排除し、快適に余裕をもって駆け抜ける歓びを味わう事が出来る。それにも増してトップを開けて走行することにより、そのオープン・エアによる解放感に加え、ダイレクトに調律されたエンジンとエキゾーストサウンドが楽しめるのは、オープン・ボディをもつ「B4Sビターボカブリオ」ならではと言える。2023年にこの世を去ったブルカルト・ボーフェンジーペンの意志を継ぐ、アルピナCEOのアンドレアス・ボーフェンジーペンは、自らレーシングドライバーとして活躍しながらシャーシ開発や、マーケティング部門も担当してきた。そのキャリアで身につけたノウハウは現代のアルピナ各車に活かされ、年間で約1700台といわれた生産台数も、ディーゼル・エンジン搭載モデルやSUVモデルを加える事により2020年代に入ると、2000台まで伸ばす事に成功している。それでも本年末をもってBMWに商標権が移譲される事には変わりはない。世に残されたアルピナ製スポーツモデルは、これからもクラフトマンシップあふれる、熟練工による手作業が感じられる貴重なモデルとして多くのクルマ好きに求められる存在となっていくのかもしれない…