フォードフォーカスRS
Mk1 新車並行 ワンオーナー
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︎ヨーロッパ・フォードによる「フォーカスMk-1」の開発は、1969年にフォードに入社して以来、開発・デザインを担当し同社の副社長まで務めた“カーガイ”として名を馳せる英国人、リチャード・パリー・ジョーンズの指揮のもとで行われた。パリー・ジョーンズは、“ゆっくりと50m走らせればクルマの性能はわかる”という同じ英国人のF1チャンピオン、ジャッキー・スチュワートの影響を受けて確立されたテスト法に基づき、日常域の車両の動きを微細に観察する能力とダイナミクスを感じとる能力に長け、フォード・グループ全体で2万人にも及ぶ開発エンジニアを統括していた。ヨーロッパ・フォードの1980年代のエンジニアリングはライバルに比べ大きく遅れをとっていたことから、パリー・ジョーンズは改革に着手。当時の60億円もの巨費を投じて開発された「フォード・モンデオ」は1994年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高評価を受け、その後の中小型車の基礎を築き上げる。それまでのイメージを払拭しシェア拡大を狙って「フォルクスワーゲン・ゴルフ」を中心とするクラスに向けて開発された「フォーカスMk-1」は、1998年3月ジュネーブショーで発表され、パリー・ジョーンズによる徹底した足回りの造り込みと巧みなパッケージングにより、ベンチ・マークだった「ゴルフⅣ」を凌駕する高い評価を得て、1999年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに輝くフォードの意欲作となる。それまで生産されてきた「エスコート」の後継車として誕生した「フォーカスMk-1」は、当時の同クラスに投入されたモデルに比べ、1480mmという高い全高を活かし居住空間をしっかり確保。1969年にフォードに入社したフランス人デザイナー、クロード・ロボによる“ニュー・エッジ・デザイン”とよばれる、コンパクトカー「Ka」にひと足先に導入されたCAD(コンピューターによる支援設計)を使った大胆で鋭角的、斬新なデザインにより、その車高の高さを意識させないエクステリア・デザインは最大のトピックだった。ドイツを中心として開発が進められ、生産工場はドイツのザールルイとスペインのバレンシアに存在した。パリー・ジョーンズの狙い通り、デビュー直後から高い人気を得た「フォーカスMk-1」は、販売から4年で通算184万台以上を生産し、ヨーロッパに於けるこのクラスのベスト3に食い込むベストセラーを得る。また、アメリカ、メキシコ、アルゼンチンのフォード工場でも生産され、日本を含む80ヵ国以上で販売されたグローバルカーとなり、2000年〜2001年には世界一販売されたモデルという称号を得る。パリー・ジョーンズによる優れた足回りのキモは、当時のこのクラスとしては贅沢なマルチリンク式サスペンションをリア・サスペンションに採用していた事。これにより定評のある動力性能に加え、クラスを超えた生産クオリティに注力を注いだ「ゴルフⅣ」に対して「フォーカスMk-1」は、頼もしい足回りによるキビキビしたハンドリングと懐深いスタビリティによるダイナミクス性能、そして同クラスの他のモデルに比べ剛性の高い軽量なモノコックボディを活かしたユーティリティをアドバンテージとしていた。後にフォルクスワーゲン・グループの会長であったフェルディナント・ピエヒは「ゴルフⅤ」の開発にあたり、この「フォーカスMk-1」の開発に携わった技術者をヘッドハンティングし、マルチリンク式サスペンションの導入を図ったというエピソードを残している。また市販開始と時を同じくしてフォードは”ワールドラリーカー規定“で競われていたWRC用のラリーカー「フォーカスWRC(ワールドラリーカー)」を発表し、1999年にデビューを果たしサファリラリー、ポルトガルラリーで勝利を挙げ、ベースモデルのイメージアップにも繋げている。日本の自動車メーカー全盛の時代を迎えるWRCの中で、それまでの「エスコートRSコスワース」での活躍を引き継いでヨーロッパ・メーカーとしての意地を見せる。「フォーカスMk-1」には1.4ℓ〜2ℓの4気筒DOHCの“Zetecエンジン”が搭載され、ボディは3ドア/5ドア・ハッチバックを基本に、4ドア・セダン、5ドア・エステートというボディ・バリエーションもラインナップされていた。マイナーチェンジが施された2002年はじめに、スポーツイメージを強調した「フォーカス170ST」を加える。”SVE(Special Vehicle Engineering)“とよばれるヨーロッパ・フォード内の特殊車両開発部門が開発を担当したモデルで、車名の「ST」は「Sport Technologies」を意味している。このモデルに搭載される”DURAtec ST“とよばれるDOHC4気筒エンジンは、新開発のアルミ製ハイフロー・ツインカム・ヘッドと、連続可変吸気バルブタイミング機構、吸気管長切り替え機構により7000rpm以上迄軽く吹け上がるのを特徴とし、自然吸気2ℓエンジンで173馬力を発揮している。組み合わされるクロスレシオの6速MTはゲトラグ製となり、減衰力を高められた足回りにより本来「フォーカスMk-1」がもつ利便性を全く犠牲にする事無く、高いポテンシャルを発揮した。この「ST」モデルは、上のクラスの「モンデオ」、下のクラスの「フィエスタ」にも設定され日本にも正規輸入されていた。この「ST」モデルは、それぞれのクラスに於いて高い性能を評価されヨーロッパ・フォードがもつ技術力の高さが注目を集めた。︎ヨーロッパ・フォードのスポーツモデルの歴史は歴代の「RS」の称号をもつモデルの歴史そのものとなり、その起源は1960年代終盤の初代「エスコートMk-1」から始まる。小型軽量ボディに「ロータス・コルティナ」と同型の”ロータス・ツインカム“を搭載し、ツーリングカー・レースやラリー等、活躍するフィールドを選ばずに華々しい戦果を獲得している。1971年には16バルブヘッドをもつ4気筒DOHCエンジン”コスワースBDA“を搭載した「RS1600」が登場し「RS」の歴史が始まる。1970年代には人気のあったETC(ヨーロッパ・ツーリングカー・チャンピオンシップ)の総合優勝を目指し、ドイツ・フォード主導で開発されたホモロゲーションモデル「カプリRS2600」が登場。ETCに於けるライバル「BMW3.0CSL」を打倒する為、今度は英国フォード主導で「カプリRS3100」が開発され、このモデルにより1975年にETCで、フォードは念願のコンストラクターズ・タイトルを獲得している。1980年代になると狂乱のグループB時代に突入するWRC用に、フォードは総力を挙げて専用のミッドシップ4WDモデル「RS200」を開発する。しかし熟成を待たずしてグループBは終焉を迎え大きな戦果を挙げる事は出来なかった。それでもフォードはモータースポーツへの積極的な関わりを見せ「シエラRSコスワース」でグループA時代のETCの流れを汲むWTC(世界ツーリングカー選手権)に参戦、ヨーロッパでの一時代を築くだけに留まらず、日本の全日本ツーリングカー選手権でも活躍し圧倒的な速さを印象付けた。そして1990年代に隆盛を極めたグループA時代のWRCに向け「エスコートMk-5 RSコスワース」で参戦。このモデルは、本来FF・2輪駆動のコンパクトな「エスコート」に「シエラRSコスワース」用の縦置きFRから派生したフルタイム4WDシステムを組み合わせ、ラリー用スペシャル・モデルに仕立てられていた。強力なランチア・ワークス・チームの撤退後WRCを席巻するかと思われたが、日本勢の台頭とフォード自身のチーム体制の不安定さもあり、念願のWRCタイトル獲得とはならなかった。ヨーロッパ・フォードによる「RS」モデルのモータースポーツでの活躍の要因は、常に車両重量の軽さにこだわったモノコックボディと、実走行で鍛えあげられた高次元でバランスがとれたシャーシ特性、そこから産まれる優れたハンドリングと良好なスタビリティのバランスによる。ヨーロッパ・フォードでは1950年代に他の自動車メーカーに先駆けてモノコックボディの設計技術を高いレベルで完成させ、軽いボディの必要な部分に強度を加えることによりエンジンパワーを有効に活用する術を確立していた。ヨーロッパ・フォード伝統の「RS」の称号を与えられたモデルは、BMWの”M“や、メルセデスの”AMG“の様にスペシャルな部門が専用工場で一貫して生産しているシリーズとは異なり、それぞれの分野に特化したスペシャリストを効果的に使い、徹底した走り込みとシンプルで軽量な玄人好みのクルマ造りでまとめられ、ヨーロッパ・フォード固有の特別なモデルとして継承されている。︎その「RS」の称号を継承する、今回入荷した「フォーカスRS Mk-1」をヨーロッパ・フォードがプロトタイプとして初公開したのは2000年10月のバーミンガムショー、続いて量産プロトモデルが2001年3月のジュネーブショーで公開されている。当時、WRCに参戦していた「フォーカスWRC」が、2001年シーズンを闘うモデルとして車名を「フォーカスRS WRC」と改名し、搭載エンジンをマウンチューン製2ℓZetec Eターボから、コスワース製ターボエンジンに換装したのもアナウンスされていたが、ロード・モデルの「フォーカスRS Mk1」との直接的な繋がりは無く、純粋に高性能ロードモデルとして開発されている。この時代の同クラスのライバル・モデル「フォルクスワーゲン・ゴルフⅣ」には、伝統のスポーツモデルで FF・2輪駆動の「GTI」が存在し、更に高性能な241馬力・狭角6気筒エンジンを搭載し4輪駆動となる「R32」を発表、「アルファロメオ 147」には「156GTA」から250馬力・V6エンジンを継承する FF・2輪駆動の「147GTA」が販売された。またフランスのルノーでは「メガーヌⅡ」に、ルノー・スポールによるターボ・エンジンを搭載した225馬力・2輪駆動のスポーツグレード「メガーヌRS」がスタンバイされ、各メーカーとも高性能モデルの開発に注力していた。ヨーロッパ・フォードはこれらライバルに対抗するモデルとして「フォードRS Mk-1」の開発を計画、フォードの”SVEチーム“により15ヶ月間の開発期間を経て、基本コンポーネンツの7割を新設計または専用設計として、ドイツのザールルイ工場で生産される事となる。発売が開始されたのは2002年10月、ボディカラーはフォード・エンブレムのカラーにも似た”フォード・レーシングブルー“のみの設定となっている。専用となるエクステリアは、大幅にパワーアップが図られた”DURAtec RS“エンジンを搭載するにあたり、冷却系に配慮された事を物語る様にフロントバンパー下のロアグリルは大型化され、強化された足回りによりトレッドは拡大、大径ホイールを覆う前後の拡幅されたオーバーフェンダーが作り出す陰影は”ニューエッジ・デザイン“の魅力を更に引き立てる存在感を見せる。斜めに切られたヘッドライトの間の薄いグリルは、ロアグリルと同じ黒いメッシュで仕立て直されブルーオーバルのエンブレムを中央にレイアウトし、低められた車高とフロントホイールアーチ手前に縦に開けられた3条のアウトレットがベースモデルとは異なる迫力を作り出している。リアウィンドウ上部には庇状にリアスポイラーを装備し、リアバンパー下部はフィン形状のデザインが施され最下部までボディカラーで仕上げられている。ダブルラインで表現されたメタル製の「RS」エンブレムは、左右ドアの後方ピラー部分と、リアハッチの右側に配置される。これまでのヨーロッパ・フォードが送りだしてきた「RS」モデルと同様に、堅牢で軽量なボディをベースとして極めて良好なスタビリティをもつ優れたハンドリング特性に仕上げられている。「フォーカスRS Mk-1」は、13ヶ月間で4501台が限定生産されたモデルとなり、2147台が右ハンドル仕様として英国に渡り、日本への正規輸入は無くたいへん希少な1オーナーの1台となっている。︎フロントグリルのエンブレムをスライドさせキーでボンネットのロックを解除すると、鮮やかなブルーの吸気パイプがレイアウトされるエンジンが低く搭載されているのが確認出来る。「フォーカスRS Mk-1」が搭載するエンジンは、”DURAtec RS“とよばれる水冷・直列4気筒DOHC16バルブ・ターボで、ボア×ストローク84.8mm×88.0mmから1988ccの排気量を得る。アルミ製ヘッドと鋳鉄製ブロックで構成されるこのエンジンは、フォードEEC-V電子式エンジン制御装置とギャレット製GT2560LSターボチャージャーを装備、最高出力215馬力/5500rpm、最大トルク31.7kgm/3500rpmを発揮する。圧縮比8.0をもつ”DURAtec RS“エンジンは、鍛造アルミ製ピストン、鍛造コンロッド、ナトリウム封入エキゾーストバルブ、WRC由来の水冷式インタークーラーが装備され高出力化に対応している。このエンジンは、英国のティックフォード・エンジニアリングをパートナーとしてターボチャージャーのセッティングを中心とした開発が行われている。このティックフォード・エンジニアリングは、コーチビルダーの”ティックフォード“が元となり、かつて「アストンマーティン」のボディを製造していた「ニューポート・パグネル」とよばれる工場が元ティックフォードの自社工場だった。時代の変遷に伴いコーチビルダーからエンジニアリング・テスト会社に転身し、かつての「シエラRS500」の開発に携わり、2000年前後にはフォードの限定スポーツモデル「レーシングピューマ」の生産も手掛けた経緯をもつ。このエンジンと組み合わされるトランスミッションは、5速MTのみとなり、フォード製MTX-75を強化したものが採用され、AP製クラッチが用いられている。大幅に強化されたエンジンパワーに対してドライブシャフトも強化され、デフにはトルク感応型の作動制限機能を備えたクワイフ製デフが装備されていることで、余す事無く強力なトルクを路面に伝えることに成功している。足回りはフロント・マクファーソンストラット式+コイル+スタビライザー、リア・マルチリンク式+コイル+スタビライザーで構成されている。ショックアブソーバーは、ベースモデルから50%減衰力が強化されたザックス製が採用され、25mm短縮されたスプリングと組み合わされている。スタビライザーは強化方向では無く3mm細く弱められ、タイヤには1.5度のネガティブキャンバーが与えられている。ブレーキはフロントに大径の325mmサイズのベンチレーテッド・ディスクを装備、ブレンボ製4ポッドキャリパーが組み合わされている。リアは280mm径のソリッドディスクと2ピストンキャリパーを装備し、160km/h→0kmを4.1秒でこなすストッピングパワーをもちABSを備えている。ホイールはWRC用マシン「フォーカスRS WRC」に装備されるマグネシウム製ホイールと同じ5本スポークデザインが採用された、軽量アルミ製のO.Z.製8J×18インチサイズとなる。組み合わされるタイヤは「フォーカスRS Mk1」の為に専用開発されたミシュラン・パイロットスポーツが装備され、225/40ZR18サイズが採用されている。インテリアは、大胆に斜めにカットされたデザインが使われるダッシュボードの形状は、ベースモデルと同様となるが、4スポークステアリングは上部センターの一部と左右グリップ部分にブルーのレザーが使われる専用品となる。同じくブルーのレザーとアルカンターラがコンビで使われるバケットシート、シフトノブ、ペダル類はスパルコ製となる。メータークラスターにおさまる「RS」のレタリングがレイアウトされる大径のスピードメーター、タコメーターにもブルーが盤面に使われ、シフトアップを促すシフトアップ・インジケーターを備えている。ベースモデルではタコメーターの左側には水温計がレイアウトされるが「フォーカスRS Mk-1」ではブースト計に置き換えられている。シルバーのシフトノブ、サイドブレーキレバーが備わるセンターコンソール部はカーボンファイバーパネルが採用され、グリーンのエンジンスタート・ボタンが装備されている。オーディオ、エアコンも装備されスパルタンなインテリアではなく、充分な居住スペースが確保され、リアにはフロントシートと同じカラーが用いられたシートが備わりベースモデルより洒落たスポーティなインテリアとなっている。︎全長×全高×全幅は、4183mm×1762mm×1460mm、ホイールベースは2615mm、トレッド前1589mm、後1552mm、車両重量1278kgとなっている。燃料タンク容量は55ℓ、最小回転半径は5.6mとなる。英国での新車時販売価格は19995ポンドとされている。︎メーカー公表性能値は、0→60mph加速6.4秒、0→100mph加速16.4秒、0→400m加速14.8秒、0→1km加速26.2秒、最高速度144mph(232km/h)となっている。︎1975年のフランクフルトショーで発表された初代「フォルクスワーゲン ゴルフGTI」から始まる”ホットハッチ“とよばれるカテゴリー。販売開始から10年後には「ゴルフ」の販売台数の25%近くが「GTI」となり「ルノー5GTターボ」や「プジョー205GTI」をはじめとする、様々なメーカーによるこのカテゴリーに向けたライバルモデルが開発・販売された。それを引き継ぐカタチで、今世紀初頭には高性能化したスポーツタイヤと電子制御技術の発達により、許容できるエンジンパワーは拡大し、俊敏でより洗練されたコンセプトをもつ200馬力級のハッチバックモデルの一群が存在するようになった。その中で初代「ゴルフGTI」がもつコンセプトに最も忠実で、扱いやすい軽量ハッチバックボディをベースに、シンプルでありながらハイパフォーマンスを発揮するモデルとして登場したのが「フォーカスRS Mk-1」で、それはまたヨーロッパ・フォード伝統の高性能シリーズ「RS」モデルの正統な後継車ともなっている。ベースモデルから高いヴィークル・ダイナミクス性能を評価されてきた「フォーカスMk-1」だったが、その斬新なエクステリアデザインは、時の経過を感じさせる事無く、現代に於いても他のモデルとは明らかに異なる個性を感じさせるものとなる。特にこの「RS」モデルでは、低く構えた車高と前後65mm広げられたトレッドにより張り出した大径ホイールの存在と、扁平タイヤを覆うオーバーフェンダーによる迫力あるスタイルが高い性能を想像させる。大きめのドアを開いてキャビンを眺めると、エクステリアカラーと同じく「フォード」のエンブレムに使われる「ブルー」が効果的に配され、その中にシフトノブ、サイドブレーキレバーに代表されるクロームパーツがアクセントとして使われ、スペシャルなモデルを感じさせるインテリアとなっている。バケットシートに腰を下ろしドライビングポジションを確認してキーを捻り、シフトレバー後方にあるグリーンのエンジンスタート・ボタンを押すと、瞬時にエンジンが始動し迫力あるエキゾーストサウンドを響かせる。クラッチは軽く節度のあるシフトレバーを1速のポジションに送り、軽めのクラッチをエンゲージすると滑らかに車両は動き出す。強力なトルクを発揮するターボエンジンは低い回転数でも有効なトルクを発生し、足回りの硬さは感じられるが街乗りも難なくこなす。中間ギアで2000rpmからでも素早いレスポンスを感じさせるエンジンは、1速では発生トルクは25.5kgmまで、2速では29.6kgmまでに抑える事により、電子制御に頼ったトラクションコントロールは採用していない。そしてクワイフ製となるこのモデルの為に開発されたLSDにより、あらゆる場面でパワーは有効に速度へと転換されていく。強化されたダンパーによる乗り心地は荒れた路面では落ち着かないが、ステアリングの応答性はとても正確に感じられる。レブカウンターの左側に位置するブースト計の針は2500rpmあたりから反応を見せ、3速からはフルブーストが可能となる。現代のターボエンジンに比べれば、ターボラグは感じられるが、レブカウンターの針を3000rpm〜6000rpmの間に置く限り、俊敏なスロットルレスポンスと高まる吸排気音、そこにタービンノイズが加わり痛快なサウンドと加速が味わえる。「フォーカスRS Mk-1」の持ち味はこの加速力だけに留まらず、 FF・2輪駆動でありながらアンダーステアを感じさせない、高いコーナーリングスピードを維持した落ち着いたコーナーリングも特徴となる。ステアリングにリニアに対応するノーズは、行きたい方向にいくらでも反応してくれる。2速全開で右に左に忙しく切り返すようなツイスティーなコーナーもクワイフ製デフが効果を発揮して嬉々としてノーズは忠実な反応を見せる。またワインディングロードでは強力なブレーキもフェード知らずの信頼性を見せ、安全を見込んだスピードでコーナーに飛び込みエイペックス手前からスロットルを踏み込み始めると、コーナー出口でカタパルトから弾かれる様な加速を味わうことが可能となる。他のライバルモデルでは、なかなか辿り着く事の出来ないこのドライバビリティの高さとバランスの良さは、開発部門のこだわりと軽めに抑えられた強靭なモノコックボディによる軽めの車両重量が効いている。この絶妙なドライビング感覚をもつ「フォーカスRS Mk-1」は、間違いなくこの時代のホットハッチの基準を書き換えた1台となり、走らせる楽しみは今でも全く色褪せる事は無い。「エスコートRSコスワース」の様なホモロゲーション・モデルでは無いこのモデルを、これだけ痛快なキャラクターに仕上げる事が出来るヨーロッパ・フォードの開発部門の見識の高さと「RS」の伝統はこれからも輝きを失うことは無いだろう…