メルセデスベンツAMG
GTR ロードスター
世界限定750台 国内23台
︎「AMG」とはレース用エンジン設計会社として1967年に創業し、創業主のハンス・ヴェルナー・アウフレヒト、エンジニアのエアハルト・メルヒャー、そして創業主の故郷であるグローザスバッハの頭文字を順に合わせて社名としている。アウフレヒトとメルヒャーの2人は1960年代にダイムラーベンツの開発部門に籍を置き「300SE」に搭載されるレース用エンジン開発に携わっていた。しかしダイムラーベンツは全てのモータースポーツ活動の中止を決定、それでも諦めきれない2人は、仕事が終わってからもエンジン開発技術を磨き続ける日々を過ごしていた。それを知る同僚のマンフレッド・シークは、不要になった「300SE」を購入しこの2人に預けると、搭載されるエンジンに新しいカムシャフトと軽量バルブを組み込み、燃料供給装置に手直しを施して1965年の「ドイツ・ツーリングカー選手権」に参戦。マンフレッド・シークのドライブにより、1965年にエントリーした10回のレースで10回のポールポジションと、10回の優勝を成し遂げる圧倒的な勝利を収める。2人の評判は高まりをみせるが、アウフレヒトはこの結果に満足せずダイムラーベンツを退社すると、メルヒャーを説得して「AMG」を立ち上げた。1967年に製粉工場の跡地を使って創業した「AMG」は、少ない従業員ながら強いチームワークにより最大の成功を手にすることになる。この「AMG」の名前を世界に知らしめたのは、1971年の「スパ・フランコルシャン24時間レース」で、その赤く大きなボディから“レッド・ピッグ(紅の豚)”の異名をもつ「メルセデスベンツ300SEL6.8AMG」が、大方の予想を覆してクラス優勝を果たし総合2位に入った時となる。当時の「Sクラス」の最上位のモデルとして存在した「600」用の6.3ℓ・V型8気筒の「M100型」エンジンをベースに「AMG」が持てる技術を全て注ぎ込んで作製した6.8ℓエンジンを搭載し、多くのレースカーが脱落していく中で24時間を走り続けた。この時に現代も継承される「One Man,One Engin」という“エンジン1基の組み上げに対して1人のマイスターが全責任をもつ”という「AMG」の哲学が誕生する。現在でも「AMG」製エンジンは、ひとつのエンジンを1人のエンジニアが責任をもって組み上げ、その証として担当したエンジニアの署名が刻まれたプレートが付けられている。1635kgの車両重量をもつ巨大なレーシングモデルをレーシングスピードで走らせ続けるということは、激しいタイヤの摩耗や頻繁な給油というハンディを負うことにもなる。それに打ち勝って歴戦のフォード、BMW、アルファロメオ等と闘うのは並大抵の事では無い。この偉業とも呼べる戦果により「AMG」はその後の躍進の端緒を開く事になる。創業の地はブルグスタルだったが、僅か12人の従業員で1976年に現在のアファルターバッハに移転し、エンジンチューナーとしてビジネスを軌道に乗せる事に成功する。「AMG」のエンブレムには左側にリンゴの木と川が、右側にはカムとバルブが描かれている。「リンゴの木と川」は本社を構える地、アファルターバッハを表し「カムとバルブ」は、2人のエンジニアリングに対する熱い情熱を表すとされている。アファルターバッハの地名はドイツの古い言葉で「リンゴの木」を表す「アファルター」と、ネッカー川流域のシュツットガルト郊外に位置する事からドイツ語で「流れ」を意味する「バッハ」に由来する。周囲を囲む「月桂樹」は勝者の象徴となり、上部に「アファルターバッハ」下部に「AMG」がレイアウトされ「AMG」の「A」の左側に描かれた5本の斜線はタイヤ痕とされている。1980年代に入るとメルセデスベンツのバックアップを得てDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)での成功を経て、1999年にダイムラー・クライスラー(現メルセデスベンツ)がその株式の過半数を取得、2005年には完全に子会社化される。新たに設立された「メルセデスベンツAMG」は、それまでのモータースポーツ活動を通して培ってきた「AMG」のレーシングカーテクノロジーと、メルセデスベンツの最先端技術を結集して、これまで以上の強い関係と更なる結果を生み出すべく歩み始める。そこで産み出された「メルセデスベンツAMG」モデルとしては初の専用ボディをもつスーパースポーツ・モデル「メルセデスベンツSLS AMG」は、2009年9月のフランクフルトショーで発表される。車名とガルウィング式ドアが採用される事から、明らかに初代「メルセデスベンツ300SL」をリスペクトしたモデルでもある。搭載されるエンジンは「AMG」が独自開発したハイパフォーマンスエンジンとして定評のある自然吸気6.3ℓ・V型8気筒となり、このモデルをベースとした「SLS GT3」は、2011年のFIA GT3ヨーロッパ選手権を獲得している。また「メルセデスベンツAMG」として2010年からレースの最高峰となるF1にも54年ぶりに復帰を果たす。そして2014年にF1のパワーユニットが、1.6ℓ・V6ターボエンジンにハイブリッドシステムを加えた新レギュレーションに変更されると、この年のコンストラクターズチャンピオンと、ドライブするルイス・ハミルトンによるドライバーズチャンピオンを獲得する。︎その2014年10月、パリサロンの前夜祭で世界初公開された新型スポーツクーペが「メルセデスベンツAMG GT」となる。FRレイアウトを採用するロングノーズにショートデッキのプロポーションは前作「SLS」同様、戦後のメルセデスベンツ復活の象徴ともいえる「300SL」以来のメルセデスベンツ・スポーツモデルの伝統に倣ったもの。今世紀初頭のマクラーレンとのコラボレーションによる「SLR」から「SLS」、そして「AMG GT」と、その伝統のスタイルは継承されている。この「AMG GT」のボディデザインは、メルセデスベンツ・デザイン部門の責任者ゴードン・ワグナーによるもの。「SLS」のデザインも担当したワグナーだが、この「AMG GT」では「300SL」から継承されてきたガルウィング・ドアと訣別。厳密に見れば「SLR」では、ディヘドラル・ドアが採用されていたが上方に開くドアという意味では「300SL」のイメージが引用されている。「メルセデスベンツAMG」専用モデル第二弾となる「AMG GT」では、このイメージの引用を断ち切る事で、更なる軽量化と低重心化が図られ、新設計のパワーユニットとあわせて、より本格的なスポーツカーとしての新たな資質を手に入れた。「SLS」での経験を活かし設計された「AMG GT」のボディ・シェルは、スペース・フレーム構造を基本とし質量比率90%以上をアルミニウム合金が占め、その単体重量は231kgという軽量設計となっている。テール・ゲートは鋼板製で、シェル前端部のノーズ・デッキ部分はマグネシウム合金が採用され、フロントオーバーハング部の軽量化が図られている。フロント・ミッドシップ方式で搭載される新たなエンジンは、フルドライサンプ潤滑方式で極めて低く搭載され、リアにトランスアクスル方式で配置されるデュアル・クラッチ式変速機と太いアルミ軽合金製トルクチューブで剛結されている。前後重量配分は47:53とされトラクションをかけやすいリアがやや重くなる理想的な数値となり、トルクチューブ内を走る1ピースのプロペラシャフトはカーボンファイバー製で、回転慣性モーメントと質量を軽減されている。クラッチ・ユニットはトランスアクスル前端に位置し、出力はアクスル後方にオーバーハングする7速DCTに入力される。サスペンションは鍛造アルミ製アームを採用するフロント・ダブルウィッシュボーン式、リア・サスにはトー・コントロール・アームが加えられマルチリンク式が採用されている。搭載される4ℓ・V型8気筒ツインターボエンジンは、これまでのどのメルセデスベンツ製エンジンより小型軽量設計が徹底して行われ「AMG GT」以外にも搭載されるモデルをもつが、ドライサンプ式となるのは「AMG GT」用のみとなる。このエンジンには2種類のグレードが設定されベースとなる「AMG GT」で最高出力は462馬力、より高出力な「AMG GTS」で510馬力を発揮する。「GT」「GTS」共にLSDを装備するが、前者は機械式で後者は電子制御式となり「GTS」では、可変ダンパーと連動するドライブセレクトシステムに「レース」モードが加えられている。車両重量は「GT」で「SLS」より80kgも軽量化された1540kgに、「GTS」で1570kgとなり「GTS」では0→100km/h加速3.8秒、最高速度310km/hを達成する。この「AMG GT」にも初代「300SL」と同様にオープンモデル「AMG GTロードスター」が追加されたのは2016年9月のパリサロン。またこのパリサロンでは、同年6月下旬に行われた、英国グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、ひと足早くお披露目された「AMG GT」シリーズ最強の585馬力を発揮するエンジンが搭載された「AMG GTR」も同時にショーデビューを果たす。圧倒的なパフォーマンスと爽快なオープンエアが楽しめる「GTロードスター」は「アコースティック・ソフトトップ」とよばれる3層構造の幌を装備する。クローズド状態での高い静粛性を誇るこのソフトトップは、マグネシウム、スチール、アルミニウムを組み合わせたフレームによりとても軽量に仕上げられている。開閉はスイッチひとつで簡単に行うことが出来、50km/h以下ならば走行中でも11秒間での開閉を可能としている。この「GTロードスター」の登場を機に全ての「AMG GT」には15本の垂直フィンを備える「パナメリカーナ・グリル」が採用されている。この「パナメリカーナ・グリル」とは、1952年11月の「カレラ・パナメリカーナ」に出場した、2台の初代「300SL」プロトタイプが揃ってフィニッシュラインをトップで通過し、その「300SL」のグリル形状が起源とされ「メルセデスベンツAMG」のレーシングスピリットと高級感の象徴とされている。また搭載されるエンジンもアップデートが施され、ベースモデルの「GT」は14馬力アップの476馬力となる。2グレードが用意される「GTロードスター」はこのベースグレードと「GTS」よりハイパワーな、557馬力を発揮する「GTCロードスター」がラインナップされる。このモデルには「GTR」譲りの、広げられたトレッドと幅の太い後輪(295→305mmサイズ)を収めるリア・ワイドフェンダー、走行モードに追加された「レース」モード、磁性流体を使ったエンジン・ミッションマウント、リア・ステア、電子制御式LSD、大径化(前360→390mm)されたドリルド・ベンチレーテッド・ディスクなどが装備される。オープン化に伴い、リアトランクリッド上には120km/hでせり上がり、80km/hで格納される電動ウィングや、暖かい風が首元に送られるエアスカーフ機能をもつ「AMGパフォーマンスシート」が装備される。クローズドボディの「GT」に対して、アルミ合金製のスペースフレーム構造のトップ部分をカットアウトされた「GTロードスター」は、サイドスカートの肉厚をボリュームアップし、内部のボックス構造を増やして、ダッシュボードのクロスメンバーにストラットを追加、リアにもタワーバーを加えボディ剛性をしっかり確保している。これによりボディは、オープン化によるネガを全く感じさせる事無く剛性感に溢れたものに仕上がっている。唯一、増えてしまった車両重量に対応して、フロントボンネットをカーボンファイバー製に変更しているが、車両重量はクーペモデル比で100kg増となっている。メーカー公表性能値は、0→100km/h加速3.7秒、最高速度は315km/hを誇る。一方、シリーズ最強の「GTR」は、2016年の「ニュルブルクリンク24時間レース」に勝利したレーシングモデル「AMG GT3」のロードゴーイングモデルともよべるスパルタンな内容をもつ。シリーズ中、最もパワフルな585馬力を発生するエンジンは、専用ターボチャージャーを採用により過給圧をアップ(1.2→1.35)し、排気ポート形状変更と制御プログラムの見直しが施されている。拡幅されたフロントフェンダーとルーフパネル、トルクチューブはカーボンファイバー製とされ、マフラーはチタン製にシートは軽量フルバケットシートが採用され軽量化に配慮されている。また機構面ではレーシングモデルの「AMG GT3」由来のデバイスとして、ESPをOFFにした時にセンターコンソール中央にレイアウトされた黄色のダイヤルで、トラクションコントロールの介入レベルを9段階の中から選択可能となる「AMGトラクションコントロール」が専用装備される。電子制御ダンパー「AMGライドコントロール」を装備する足回りは一番ソフトな「コンフォート」を選択しても、ショックはやわらぐが低速では路面の荒れがわかる程に留まる。フロントに対向6ピストン、リアに4ピストン・キャリパーを備えるブレーキには「AMGカーボンセラミックブレーキ」が組み合わされ、軽量なアルミ鍛造ホイールには専用のドライグリップ優先となるミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2タイヤが組み合わされている。センタートンネル上に備わる「ダイナミック・セレクト・コントローラー」により選択できる走行モードは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「レース」となる。順に切り替えていくと、段階的にエンジン・レスポンスが向上しながらマフラーからのバブリング音が増え、変速スピードが短縮されるとともにサスペンションの減衰力が高まりを見せる。特に「レース」モードでは「機敏」ともいえる程の挙動を伴う。500馬力を超えるスーパースポーツにフルスロットルを与えると、見える世界は一点に狭まり切迫した状況の中「GTR」は高いライントレース性を見せる。これは「ポルシェ911GT3」にも匹敵するもので、ベースモデルから共通する優れた車体の特性となり、優れた重量バランスに由来するものと高い評価を得ている。0→100km/h加速は3.6秒、最高速度は318km/hを公表するが、100km/h巡航時の燃費は10km/ℓを超える値を示すという一面も合わせ持つ。︎今回入荷した車両は「メルセデスベンツAMG GTRロードスター」となり、2019年3月のジュネーブショーで発表された世界限定750台のたいへん希少なモデルとなっている。これまでの「AMG GT」のラインナップは、ベースモデルの「GT」からはじまり「GTS」「GTC」そして「GTR」が存在し、この「GTRロードスター」が発表されたのを機にマイナーチェンジが施され、トップモデルに新たに設定された「GTRプロ」を加えると「AMG GT」シリーズは9車種まで拡大する。このラインナップの中で、スポーツとスペシャリティを高次元で融合させたエクスクルーシブ・モデルが「GTRロードスター」と言えるだろう。そのエクステリアは「GTR」と同様に、広げられたトレッドとフロント・リアに太いタイヤを収める為のワイドフェンダー(全幅は+55mm)が採用され、前後に装備されるカーボン製エアロパーツによりただならぬ迫力を湛えている。トランク上のウィングは2段階調整可能となりフロント下部に80km/h時に40mm展開しベンチュリー効果を発生する事で揚力を減らす「アクティブ・エアロダイナミクス・システム」を「 GTR」と同様に装備する。トルクチューブはカーボンファイバー製、センター出しとされるマフラーはチタン製へと変更、足回りには鍛造ホイールやカーボンブレーキシステムが装備され、軽量化に配慮されているのも「GTR」と同様となる。マイナーチェンジによるアップデートが反映されているので、ヘッドライトはアロー型ポジショニングライトを装備するLEDパフォーマンスライトとされ、テールランプにもLEDライトが備わる。インテリアには液晶ディスプレイが導入されデジタルコックピット化が進められているが、MBUXは「AMG GT」には未設定となっている。︎「メルセデスAMG GTRロードスター」に搭載されるエンジンは、M178型とよばれる水冷90°V型8気筒DOHC直噴ツインターボで、ボア×ストローク83.0mm×92.0mmから3982ccの排気量を得る。圧縮比は「GT」の10.5から9.5へと下げられながらも、最高出力は585馬力/6250rpm、最大トルクは71.4kgm/1900〜5500rpmを発揮する。このエンジンは専用ターボチャージャーをVバンク内に収めるホットインサイドVレイアウトとすることで、排気は最短距離でターボに導かれ自然吸気エンジン並みに素速いスロットルレスポンスを実現するとともに、ターボラグも感じさせずに即座にピックアップトルクが立ち上がる仕組みをもつ。ドライサンプ化されたこのエンジンは低重心化に貢献しターボ過給圧は1.35barとされ、シリンダー内壁にスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE加工が施される。アルミブロックを採用するこのエンジンは、通常鋳鉄ライナーを鋳込むところを僅か0.1〜0.15mm厚のこの鉄系の粉末を溶射コーティングする事で補い軽量化と熱伝達性の向上が図られている。組み合わされるトランスミッションは、トランスアクスル方式でリアに搭載される7段DCTの 「AMGスピードシフトDCT」となる。エンジンとトランスミッションには磁性流体マウントが採用され、快適性とパフォーマンス向上を高いレベルで両立させたものとなっている。またリアアクスルのコンパクトなトランスミッションハウジングに内蔵された電子制御式LSDは、きめ細かい制御と素早い反応速度で、走りの物理的限界を新たなレベルへと引き上げる事にも成功している。︎足回りはフロント・ダブルウィッシュボーン式、リア・マルチリンク式が採用され、アーム類、ハブキャリア、ステアリングナックル等は軽量化の為にアルミ鍛造製となる。リアのロアアームにはトー/キャンバー角変化を抑える目的でピロボールジョイントが用いられ、リアの中空スタビライザーは大径化されている。電子制御ダンパーの「AMGライドコントロール」を装備しダンパーの硬さは「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」が選択可能となる。また「リア・アクスルステアリング」が装備されることで、電子制御で車速、ステアリングアングル、サイドスリップアングルを感知し100km/h以下では最大1.5°の逆位相、100km/h以上では最大0.5°の同位相で安定した高速コーナリングを可能としている。この「リア・アクスルステアリング」と電子制御LSD、トルクベクタリングを統合制御して、好みのハンドリング特性と安定性を確保する「AMGダイナミクス」は「ベーシック」「アドバンスド」「プロ」「マスター」の4つのモードから選択可能となっている。この機能はドライブモードを選択する「AMGダイナミックセレクト」を補助する機能となっている。ブレーキはフロントに402mm径、リアに360mm径のカーボンセラミック・ドリルド・ベンチレーテッド・ディスクを装備、それぞれ対向6ポットと4ポットのキャリパーと組み合わされている。このカーボンセラミック製ディスクは、通常のスチール製ディスクに比べ17kgも軽量化されるとともに、より高い耐久性と耐フェード性能を備えている。ホイールは「AMGパフォーマンス5ツインスポーク」とよばれる軽量な鍛造アルミホイールが装備されフロント・10J×19インチ径、リア12J×20インチ径となり、それぞれ275/35ZR19、325/30ZR20サイズの専用のドライ路面優先となる、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2と組み合わされている。︎インテリアは、幅と高さにボリュームを感じさせるセンターコンソールにV8エンジンをモチーフにしたデザインが採用され、各種スイッチやカラーディスプレイボタンが機能的にレイアウトされている。アルカンターラ巻きの「AMGパフォーマンスステアリング」には、4時と8時の方向に液晶付きスイッチが装備され、ステアリングから手を離す事なく走行モードの切り替えが可能としている。スロットルレスポンス、ギアボックスの特性、ダンパーの減衰力、排気音などが統合制御できる「AMGダイナミックセレクト」とよばれるドライブモードには、従来の「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」「レース」に「スリッパリー」を加え6モードが設定される。高精細12.3インチのメーターディスプレイと、ダッシュボードセンターにレイアウトされる10.25インチのマルチファンクションディスプレイが装備される。これらのディスプレイはAMG独自の「クラッシック」「スポーティ」「スーパースポーツ」の3種類の中から好みのデザインが設定可能となっている。スパルタンな高性能を誇りながらも、シートデザインやドアインナーパネルにはエレガントなダイヤモンドステッチが採用されているのがこのモデルの特徴となる。カーボンパネルと対照的な明るいカラーのレザーが張られた「AMGパフォーマンスシート」には、首元を暖めるエアスカーフ機能や、シートベンチレーターが装備される。シート背後のロールオーバーバーの間には、ドラフトストップ(透明のプレート)が装着されているので、後方からの風の巻き込みは軽減される。それぞれの装備は季節を選ばずオープン走行を楽しむ為のものとなり、これまで多くのオープンモデルを発表してきたメルセデスベンツの技術と経験が活かされた装備となっている。3層ファブリック構造の「アコースティックソフトトップ」は、マグネシウム合金、スチール、アルミニウム製のフレームにより軽量に仕上げられ、低重心化に大きく貢献している。リア・ウィンドウはヒーター付きのガラス製が採用され、高い静粛性をもつこのトップは、50km/h以下ならボタンひとつで自動開閉が可能となり、開閉に必要な所要時間は11秒となっている全長×全幅×全高は4550mm×1995mm×1260mm、ホイールベース2630mm、トレッド前1695mm、後1685mm、車両重量1740kgとなっている。ディーラー正規輸入台数は僅か23台で、新車時価格は2325万円、燃料タンク容量は75ℓ、最小回転半径は5.5mとなっている。メーカー公表性能値は、0→100km/h加速3.6秒、最高速度317km/hとなっている。︎「AMG GTRロードスター」の佇まいは、低く構えてとても幅広く感じられ、何よりもその獰猛な顔つきに圧倒される。ブリリアントブルーとマキアベージュというシックなカラーの内外装を組み合わせても、この迫力なのだから近づくのに緊張感を伴う。ボディ全長の半分がボンネットの様なサイドビューにより、かなり後方に位置するドアハンドルを普通に引いてドライバーズシートに乗り込めるのは幸いな事となる。上方に開くドアをもつクルマは駐車場所を選び、なかなか日常には相容れない場面が多くなってしまう。シートに腰を下ろすと、キャビンに幅広いセンタートンネルが存在することにより、かなり外側に座らされる感覚となりパッセンジャーとの距離を感じさせる。それほどエンジンがキャビン側に搭載され、フロントタイヤはそのエンジンの前方にあるのでドライバーからは遠くなる。ほとんど2mの車幅と長いノーズ、ステアリングを切ると離れた位置にあるフロントタイヤからの軌跡に、少し慣れは必要となるかもしれない。しばらく走ると、長いノーズはステアリングにシャープに反応しているのがわかる。そしてリアタイヤにかなり近い位置に座っているわりには尖った突き上げ感はカドが丸められ、硬いながらも乗り心地はそれほど悪くはない。慣れてくると真っ直ぐ走らせるだけのクルマでは無く、回頭性が高くステアリングを切る度にだんだんクルマが小さく感じられる。アクセルを開けられずにストレスを感じてしまう場面では、オープンにしてみるとエキサイティングなマフラーサウンドを楽しむ事が出来る。クロスプレーン型クランクを採用したV型8気筒特有のビート音をもつAMGサウンドは北米を中心に多くのファンをもち、アクセルワークやエンジン回転の変化により様々な表情の変化を見せる。オープンボディにより、スピードを上げなくても、そのサウンドを直接楽しめるのは「ロードスター」ならではの特権となる。風を感じながら走らせていると少しずつ日常を離れ、季節を身近に感じることで豊かな気持ちを取り戻すきっかけを得ることもある。たとえ寒い季節でもあっても、キャビンの空調とシートヒーター、エアスカーフにより、寒さより爽快さが上回る。晴れた空が広がっていれば寒い季節こそオープンカー日和となる。少しずつアクセルを踏み込むと、そのパワーの漲る感覚とスピードの上がり方は、スーパースポーツならではのもので、それ以上にそのパワーを受け止める、足回り、ブレーキ、そしてアルミ製フレームのしっかり感には、メルセデスベンツの長い歴史の中で培われた技術力の高さを感じさせられる。中でもクーペボディとの差を全く感じさせないアルミ製フレームからは、オープンボディという事を忘れさせるほどの堅牢さと強固な造りが味わえる。ペースを上げる毎に俊敏さを増す「AMG GTRロードスター」を走らせる事にドライバーは集中する裏で、様々な電子デバイスは気取られることなく黒子となって常にサポートとスタンバイを怠らない。長いノーズとオープンボディ、V型8気筒エンジンによる迫力あるサウンドから“直線番長”に見られがちだが「AMG GTRロードスター」には粗削りなところは全く無い。むしろそのきめ細やかなドライビング感覚から、現代の「シェルビーコブラ427SC」とも表現出来る。ハイパワーで溢れるトルクを後輪2輪のみで効率的にトラクションを生み出す「AMG」のノウハウには、ドライバーの介在する余地が残され、そこに楽しみを見出すことこそスポーツカーの存在価値ともいえる。それ故、様々な電子制御技術を内包していても、搭載するエンジンの圧倒的ともいえるパフォーマンスとレスポンスを活かしきるなら、よりストイックな「AMG GTR」を選ぶのがセオリーともなる。それでもオープンボディの「AMG GTRロードスター」は、古典的なFR2輪駆動の楽しみと、進化したエンターテイメント性を高次元で融合させ、機能主義的なスポーツカーから少し離れた存在の「300SLロードスター」との共通したキャラクター性を見せる。この一筋縄ではいかないスポーツカーの魅力こそ、人を惹きつけて離さないところとなっている様に思う…




















