レクサス LFA 4.8
ニュルブルリンクパッケージ仕様 ( 純正部品使用 ) オリジナル交換部品御座います。
︎現代のスポーツカーでは、設定された価格や製造コストなどの制約により、構成される多くの部品に乗用車用のメカニズムを流用せざるを得ない場合が多い。それが、目標とする運動性能や基本的な設計に様々な影響を与え、商品化する為にはある程度の妥協が必要となってしまう事も想定される。高価格なスーパーカーにおいてもコストは深刻なテーマとなり、専業メーカーでもそれぞれのモデルに可能な限り必要なパーツの流用が行われ、生産されているのが現実となっている。そんなスーパーカーの世界に車両構成部品のほとんど全てを、僅か500台を生産する為だけに白紙から専用設計されたモデルが「レクサスLFA」となる。モノづくりに賭ける日本人ならではの気骨と心意気が凝縮され、コストの掛け方とその設計、開発、製造の徹底ぶりに自動車開発の常識を覆しながら、他に類を見ない日本オリジナルのスーパーカーとしての成り立ちをもつモデルとなっている。また「IS F」に始まる”富士スピードウェイ“の頭文字「F」の称号を与えられたレクサスブランドのレース直系のDNAを宿すプレミアムスポーツ「F」シリーズの頂点に立つ本格的スーパースポーツとして開発されたモデルが「LFA」となる。︎「レクサスLFA」は、2005年と2007年の東京モーターショーでプロトタイプが公開され、当初「LF-A(Lexus Future Advance)」と命名されていた。2005年に登場したプロトタイプは平面造形を軸にデザインされ、この時点での量産はまだ少し遠く感じらるものだった。しかし2007年に発表された2世代目のプロトタイプは見違える程の進化を遂げ、まとまりのある美しささえ感じさせるデザインを実現していた。凹面を巧みに生かした造形が用いられ、5ℓ近いV10エンジンを搭載するとは思えない程コンパクトなボディは、'70〜'80年代の代表的な「フェラーリ」各モデルのデザインで知られる、イタリアのカロッツェリア・ピニンファリーナに在籍していた、レオナルド・フィオラバンティの関与を窺わせるものとなっている。車名の「LF-A」とフィオラバンディのイニシアル「LF」が重なるのもあながち偶然とは考えにくいと、見た者に想像させる印象を与えるデザインとなる。ボディデザインの進化とともに2004年10月から「LF-A」はドイツのニュルブルクリンクを拠点に本格的に開発走行テストを実施していた。これは統括エンジニアの棚橋晴彦と、チーフテストドライバーとしてトヨタが誇る熟練の”マスターテストドライバー“成瀬弘が中心となり実現したもので、毎年春と秋に1回ずつこのオールドコースを何百ラップも走り込むことでその性能を鍛えあげていた。トヨタのテストドライバー300人の頂点に立つ成瀬弘は、1963年にトヨタに入社しモータースポーツ用の車両開発やレース活動を担う「第七技術部」に所属し「トヨタ7」のチーフメカニックを務めていた。そして1973年、トヨタがレース活動を中止する寸前に、スイスのトヨタディーラーが「セリカ1600GT」で耐久レースに参戦する事をきっかけにメカニックとして渡欧し、生涯走り込む事となるニュルブルクリンクと出会う。ここから成瀬は”道がクルマをつくる“という事を直感し、誰よりもこのコースを使いクルマを鍛える事の重要性に着目、このコースでの新型車の開発を担ってきた。様々な量産スポーツモデルの開発に関わる中で「LF-A」の走行評価は、この成瀬ただ一人に委ねられていた。開発が進む中でデビュー前の「LF-A」のプロトタイプでの2008年と2009年の「ニュルブルクリンク24時間レース」へのエントリーも開発プロジェクトに含まれ、2008年のレースでは数々のトラブルを乗り越えながら121位での完走を果たし多くの知見を得る。続く2009年のレースでは、成瀬にドライビングを教わっていた、豊田章男本人も「モリゾウ」として成瀬とともに「LF-A」をドライブしレースに参戦。成瀬組はリタイアに終わるが、豊田組は87位でレース完走を果たしている。チーフテストドライバーとして成瀬は「LF-A」の開発にあたり、常に「クルマは最後までドライバーを見放してはならない」というダイナミクス性能を目標に掲げニュルブルクリンクを中心に世界各国での試験走行を繰り返した。これは統括エンジニアの棚橋がロードモデルとして操縦性の限界まで保証する為に、敢えて「LF-A」はミドシップモデルとせず、FRレイアウトを採用した事と同じ方向性を意味し「LF-A」が持つ重要なエレメントとなっている。そして世界超一級レベルの動力性能を誇る「LF-A」の市販モデルが、2009年の第41回東京モーターショーで正式にデビューを果たす。この時、車名は「レクサスLFA(Lexus F-sports Apex)」へと改められている。「LFA」は、トヨタ自動車元町工場の「LFA工房」にて、全てを熟練職人によるハンドメイドにより生産され、2010年12月15日にラインオフ式を済ませると、同年末からデリバリーが開始された。月産21台という少量生産を続けながら、2010年の「ニュルブルクリンク24時間レース」にエントリーすると、SP8クラスで見事クラス優勝(総合18位)という結果を残し、これまでの雪辱を果たす事に成功する。この頃、成瀬は「GRMN(GAZOO Racing tuned by MN)」と「G's」というトヨタのコンプリートカーブランド発足にも関与している。「GRMN」の「MN」とは「ニュル・マイスター(Meister of Nurburgring)」に由来し、成瀬の様な熟練テストドライバーが過酷なニュルブルクリンクで走り込んで開発したモデルを指し「GR」のラインナップの中でもトップモデルを意味する。クラス優勝からひと月後の2010年6月23日、追加販売が予定されていた「LFA」のスペシャルモデル”ニュルブルクリンク・パッケージ“の開発テストの為、ドイツのニュルブルクリンク近郊の一般道を走行中、対向車線を走っていたBMW車との正面衝突事故により成瀬は命を落とす事となる。それから1年と少し経過した2011年の8月〜9月、2回に分けて統括エンジニアの棚橋とともにニュルブルクリンク入りした開発チームは「ノルドシュライフェ」において「LFAニュルブルクリンク・パッケージ」によるテストの中で、ラップタイム7分14秒台を記録し、当時このコースで最速だった「ポルシェ911GT2RS」のもつ記録、7分18秒を破り世界最速の1台という栄誉を獲得する。「ノルドシュライフェを7分20秒を切れるクルマを世に出したい」という想いを胸に抱き、それを目標のひとつに掲げていたのは他ならぬチーフテストドライバーの故・成瀬弘だった。その遺志が開発チームと「LFA」により報われる事となった。︎「レクサスLFA」最大の見どころとなるのは、100%自社でつくられるカーボンコンポジット製のそのボディと言えるだろう。トヨタのF1参戦により、その技術が活かされた車体の中心となるキャビン部分はカーボン成形法としては従来からあるプリプレグ法とSMC法に加え、RTM法(E46型BMW・M3CSLのルーフに使われた手法で、強度はプリプレグ法より若干低いが生産性に優れる)と呼ばれる成形法を組み合わせ、強度と軽量化のバランスを取りつつ生産性の向上も図られている。またルーフサイドレールはABS製のチューブが「三次元編み機」によりカーボンの糸で包まれる構造をもち、織機の技術を活かしたトヨタ独自の画期的な製法が用いられている。このカーボンコンポジットボディの前後にアルミ製フレームがボルト締めされた「LFA」のボディは、開発当初(2003年)はアルミプレス構造によるボディの採用を想定していた。強度を増したカーボンコンポジット65%アルミ35%で構成されるこの新たな骨格は、それに比べ約100kgも軽量化された236kgに仕上げられている。被せられる外皮は、面積が広く剛性が必要なエンジンフード、ルーフにカーボンコンポジット(CFRP)、フロント及びリアフェンダー、サイドスカート、ドアなど剛性を必要としないエリアには、ガラスコンポジットが用いられ、軽量で剛性の高いボディが形作られている。︎搭載されるエンジンは1LR-GUE型と呼ばれる、水冷72°V型10気筒DOHC40バルブの「LFA」専用エンジンで、吸排気ともに可変となるVVT-i機構を備えたコンパクトで軽量な設計となっている。このエンジンは、ハードウェア開発は「トヨタ2000GT」のエンジン開発以来、永きにわたり技術提携をしてきたヤマハ発動機が担当し、設計グループ主務の吉岡伸二を中心として2000年から開発が開始されていた。電子デバイスや制御システムの開発はトヨタ自動車が主に担当し、同クラスV8エンジン並みのエンジン単体重量200kg+aを実現している。ボア×ストロークは88mm×79mmから4805ccの排気量をもち、12.0の圧縮比により560馬力/8700rpm、48.9kgm/7000rpmのトルクを発揮する。パフォーマンスはもちろん、NAエンジンならではのレスポンスとコンフォート性、耐久性を考慮して開発されたエンジンは、10個のピストンが等間隔爆発となる様に、72度のバンク角を採用している。10連独立スロットルとステンレス製等長エキゾーストマニフォールドを装備し、アイドリングから9000rpmまで僅か0.6秒という電光石火のレスポンスを実現している。それとあわせて「NVHは極力減らしてエンジン音はなるべく消す」と言い続けてきたトヨタが、180度の方向転換を図り「エンジン音は消すのではなく美しく奏でるもの」として「天使の咆哮」と例えられる程の魅力的なサウンドをもつエンジンに仕上げられている。中空構造をもつ4本のカムシャフトはエンジン前端でチェーン駆動され、バルブ駆動はロッカーアーム式を採用、ロッカーアームの上下滑り面には摩擦損失低減の為のDLC(Diamond Like Carbon)シリコンコーティングが施されている。 17ℓを必要とするエンジンオイルの潤滑はドライサンプ方式とし、2個のプレッシャーポンプ(オイル圧送用)と7個のスカベンジポンプ(オイル回収用)で循環させている。ウォーターポンプは2個装備され、それぞれのポンプ類をエンジン両サイドにレイアウトすることでエンジン高を低く抑えながら、なるべく低いエンジン搭載位置を確保し低重心化に配慮している。ピストンは高強度アルミ鍛造製、コンロッドはレーシングエンジンでは定番となるオーストリアのパンクル・レーシング・システムズ社によるチタン鍛造製、クランクシャフトはニッケルクロモリ鋼の鍛造製となり、表面は窒化処理され強度を高めながら2ℓ〜2.5ℓ・4気筒エンジン用のものと同等の重量18kgを実現。このエンジンの組み立てはヤマハ本社工場内に特設されたクリーンルームが用意され、4人の専従作業者のみで行われる。ボルト1本からダイナモテストまで、その組み立て工程を全て1人が担当し、エンジン左バンク前方にその担当者のネームプレートが付けられている。︎組み合わされるトランスミッションは、6速ASG(オートメーディット・シーケンシャル・ギアボックス)と呼ばれるアイシン製シングルクラッチ式の電子制御MT(RB60M型)となっている。自動変速モードを持ち、ステアリングホイール裏側に付くアルミ製シフトパドルにより任意の変速も可能となる。エンジンレスポンスや変速のダイレクト感、パワーの変化を余すところなく味わう為に、この時代に選択可能だったトルコン式やツインクラッチ式を見送り、あえてシングルクラッチ式にこだわり採用されている。1速〜4速までがトリプルコーン、5速、6速がダブルコーンで、全段カーボンシンクロナイザーが採用され、シフト方向とセレクト方向を担当する2個のシフトアクチュエーターにより期待をはるかに上回るチェンジ・レスポンス・マナーを実現するとともに、最速の変速モードを選択するとレーシングカーに匹敵する程の速さでのシフトチェンジが堪能出来る。またこの素速い変速を実現する為に乾式単板クラッチが採用されていて、リアデフにはトルセン式LSDが装備されている。「LFA」はフロントミッドシップによるFR駆動となる為、クラッチとギアボックスはリアに搭載するトランスアクスル方式を採用、ここでもこだわりの設計を見る事が出来る。それはエンジンとミッションを結ぶトルクチューブが、低く搭載されたエンジンから85mm上方へカウンターギアにより移され、その下部に排気管を通す方式が取られている。これによりセンターコンソールの幅を狭くする事が出来、乗員の着座位置を中央に寄せる事が可能となり乗員数の変化による重量変化を最小限に留めている。また全面投影面積を拡大する事無く、側突要件もクリアするとともにフラットなフロアは空力に有利な設計を可能としている。ここで使用されるトルクチューブは、バナジウム鋼管の内側をくり抜き、厚さ僅か2.2mm、重量6.9kgの、強度と軽量のバランスを考慮したものが採用されている。トランスアクスル方式とフロントにラジエーターを置かず、リアに配置されたクーリングシステムなどにより「LFA」の前後重量配分は48:52とされ、FR2輪駆動モデルとして運動性能を高める為に理想的な数値を実現している。︎足回りは、前ダブルウィシュボーン式+スタビライザー、後マルチリンク式+スタビライザーとなり、サスペンションアーム類、及びホイールキャリアは全てアルミ鍛造製となる。軽量化と剛性確保に配慮して、前後サスペンションアーム類はH型断面を採用し恐ろしく細い。ショックアブソーバーはカヤバ工業製の、圧力室を別体タンクとしストロークをしっかり確保した車高調整式とし、軽量なアルミ製シリンダーが採用されている。その内壁にはニカシルメッキ加工がされるとともに、ピストンロッドにはDLCシリコンコーティングが施され固められながも、滑らかな伸縮を実現している。スプリングは中央発條製が採用され、フロント、リアともにスタビライザーを装備している。フロントサスペンションは12ヶ所のマウントのうち2ヶ所以外ボールジョイント方式(ピロボール)となり、リアサスペンションにおいては12ヶ所のうち8ヶ所が同様の方式となっている。ブレーキはカーボンセラミック製ドリルド・ベンチレーテッド・ディスクが採用され、前390mm径×34mm、後360mm径×28mmサイズとなる。組み合わされるキャリパーはアケボノ製で、前が対向異径6ポッド・モノブロックキャリパー、後が対向異径4ポッド・モノブロックキャリパーとなり、ブレーキシステムはフライ・バイ・ワイヤーによるABS付き電子制御式となっている。ホイールはBBS/ワシマイヤー製のアルミ鍛造製の20インチとなり前9.5J(12.4kg)、後11.5J(14.3kg)が装備される。組み合わされるタイヤサイズは前265/35ZR20 95Y、後305/30ZR20 99Yとなり、BSポテンザS001が採用されている。インテリアはカーボンと本革を贅沢に組み合わせたものとなり、特に助手席前方の2段構えのダッシュボード形状が特徴的なデザインとなる。世界の超高級車にならいフルオーダー方式が採用され、本革は基本12色、アルカンターラは基本10色が設定され、注文時にシート、インパネ下部、ドアなど、カラーとマテリアルを自由に組み合わせる事が可能となる。縫製ステッチは12色から選択可能で、これらの組み合わせは1440通りにもなり、特色カラーでのオーダーにも対応していた。またキャビン内にも心地よくエンジン音を響かせる為に、ヤマハの音響技術が生かされた設計が施されている。革張りのバケットシートは極端に硬くは無いが、座面はそれ程の厚みは無く、電動調整の操作感はレクサスらしい滑らかさを持つ。直径360mmとなる小径カーボンコンポジット製ステアリングホイールは、円周部全体に芯金が備わるのが通常となるが「LFA」用ではイナーシャ低減の為、中空構造の軽量設計となっている。「LFA」のステアリングはダイレクト式の電動パワーステアリングが採用され、コラムアシストとなるので剛性の高いダッシュパネルに取り付けられている。これは低いエンジン搭載位置の為、太いステアリングギアボックスがエンジン下に収められない事情による。量産車ではブッシュマウントされるステアリングギアボックスは、リジットマウントされることにより、高い剛性感を実現している。エンジンはステアリングコラムにキーを挿し、ステアリングホイール上のスタートボタンを押すことにより始動する。ステアリング裏には左右それぞれに変速用のパドルが備わり、右がアップで左がダウン、左右同時に引けばニュートラルとなる。リバースギア選択は、ステアリングコラム左側のスイッチで行う。ドライブモードはAUTO/SPORT/NORMAL/WETがメーターパネル右上のダイヤルで選択可能となる。エンジン始動後はNORMALモードがデフォルト設定され、AUTOモードを選択するとギアボックスは自動変速となり、他のモードではパドルによるマニュアル変速が必要となる。またAUTO選択時でも、パドルによるマニュアル変速は常に可能となっている。それぞれのモードにおいてVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management=VSC、TRC、ABS、電動スロットル、電動パワステなどを統合制御する車両運動統合制御システム)とよばれるアクティブセーフティ装置が黒子となって、様々な状況で巧みにドライバーを支援する。またクラッチミートの速度はそれぞれのドライブモードでデフォルト設定されているが、任意に7段階からの選択が可能となり、最短では僅か0.2秒を実現している。メーターは機械式ではエンジンレスポンスに追従出来ない事から、TFT液晶パネルによる映像式が採用されている。映像で投影される円形の針式タコメーターとその内側にデジタル数字のスピードとギアポジションが表示され、アイドリング時のタコメーターの針の細かい動きまで再現される映像は、アナログ製と見間違える程の見事なグラフィックとなっている。12スピーカーによるオーディオはマークレビンソンソン製プレミアムサラウンドシステムを採用。ドライバーズ・シートからフロント、サイドの視界は全く問題無くリアも何とか確保されているが、斜め後方の視界と、長めのフロントオーバーハングに対して110mmたらずという低めの地上高とリア・デフューザーのフィンの低さは「LFA」の数少ない弱点と言えるのかもしれない。︎全長×全幅×全高は4505mm×1895mm×1265mmでホイールベースは2605mm、トレッド前1580mm、後1570mm、車両重量1580kg、燃料タンク容量73ℓ、最小回転半径6.1m、新車時価格3750万円となる。生産台数は500台、そのうち国内販売台数は165台とされ、この数字は当時の国内におけるレクサス販売店の数と一致する(200台販売されたという説もある)。︎生産される500台の「LFA」のうち50台は「ニュルブルクリンク・パッケージ」というスペシャルモデルとなっている。このモデルは「LFA」開発の拠点となった「ニュルブルクリンク」の名前が授けられたスペシャルモデルで、他のスポーツカーメーカーも新型車開発の為に使用することで有名な難攻不落のコースとなる。この一周、20kmを超えるノルドシュライフェと呼ばれる北コースを「LFA」は開発段階で何百ラップも走り込むことにより、高い性能を獲得する為の鍛錬の場とした事から、感謝の念を込めてこのスペシャルモデルに「ニュルブルクリンク・パッケージ」と命名したと言われている。このスペシャルモデルの熟成を目的として、2011年の春夏に2回にわたり改めてニュルブルクリンクでの走行テストが行われ、その最終段階に於いて7分14秒64というラップタイムを記録している。当時のトラクション面では不利なFR2駆としては驚異的なこのラップタイムこそ、統括エンジニアの棚橋が操縦性の限界まで保証する為に採用したNAエンジンとFR2駆というパッケージを、チーフテストドライバーの成瀬弘が鍛え上げ高めてきたドライバビリティの賜物と言えるだろう。「ニュルブルクリンク・パッケージ」は、この「LFA」がもつ潜在能力を最大限に発揮出来る様に開発されたモデルで、軽量化と空力特性の向上により更なるハイパフォーマンスを獲得したモデルとなっている。今回入荷した2011年型の「レクサスLFA」は、レクサスの純正部品を使って、そのエクステリアを「ニュルブルクリンク・パッケージ」と同様に仕立てた、たいへん希少なモデルとなる。フロントスポイラー下部を取り囲むノーズフィンは、ノーマルのEPDM合成ゴム製から、より大型化されたCFRP製に変更され最低地上高は10mmダウンし、サイドウィンカー直下にもCFRP製のカナードが追加されている。フロント部と同様にサイドシル下部にもCFRP製のスポイラーが追加装備されている。リアには本来80km/hで上昇するアクティブ・リアウィングが装備されるが、この車両には「ニュルブルクリンク・パッケージ」が採用する、固定式で接着や継ぎ目の無い完全一体中空構造のCFRP製大型リアウィングが装備されている。これらの「ニュルブルクリンク・パッケージ」と同様のエアロパーツは、空力的安定効果は抜群で100km/hの速度域から有効となる。ここで採用される専用エアロパーツは、トヨタ・テクノクラフトが製造しているもので、トヨタ・テクノクラフトとは、かつては「トヨペット綱島」という愛称や「TRD」の商標で知られる、トヨタのモータースポーツ活動を支えた「(株)トヨペットサービスセンター」のこと。この会社は1954年に設立され「トヨタ2000GT」の開発にも関与し、ボンドカーとしてそのオープンモデルの製作まで担っている事でも知られ「LFA」の開発にも初期段階から参画してCFRP製モノコックの先行開発も行っている。今回入荷した車両には、そのエアロパーツを使ったボディワークだけに留まらず「ニュルブルクリンク・パッケージ」専用のメッシュタイプのホイールも装備されている。このホイールは、ベースモデルと同サイズで製造も同じくBBS/ワシマイヤー製のアルミ鍛造ホイールとなっている。ベースモデルのスポークタイプのホイールは、トヨタによるデザイン・設計が施されているが、メッシュタイプのホイールは、ワシマイヤーによる既存品の専用バリエーションモデルで、デザイン上、面剛性の点で有利で単体重量は僅かにメッシュタイプの方が軽い。これらのエクステリアパーツに加え、本来の「ニュルブルクリンク・パッケージ」では、低フリクション化と機械的精度の向上により11馬力アップされた専用エンジンの搭載、スプリングレートを前+30%、後+40%強化し、ダンパーの減衰力を前+10%、後+5%アップ、スタビライザーを前+15%、後+20%強化することで10mm低く設定された専用のサスペンションの採用。そしてCFRP製パーツとアルカンターラによる専用インテリアにより約100kgの軽量化が図られている。新車時販売価格はベースモデルより700万円高額な4450万円となっている。国産車としてはかなり高額なモデルとなるが、作り上げていく手間とこだわりの品質を考えると、メーカーでの利益は全く望めないと思える内容をもったスペシャルモデルとなっている。︎メーカー公表性能値は、0→100km/h加速3.7秒以下、最高速度325km/h以上(国内販売車両は180km/hに制限)となる。カーグラフィック誌による実測テストでは、雨天によるウェット状況下で0→100km/h加速4.5秒、0→400m加速12.3秒、0→1000m加速21.9秒、最高速度250km/h以上となっている。また、ニュルブルクリンク・パッケージは、ドライの状況下で 0→100km/h加速4.25秒、0→400m加速12.03秒、0→1km加速21.44秒を記録している。︎路上で目にする「レクサスLFA」は、イメージするより遥かにコンパクトに感じられるボディをもつ。その存在感はとても強く、驚かされるのはノーズの低さで、そこに4.8ℓのV10エンジンを納めているとはとても想像出来ない。サイドビューは凝縮感と繊細さをもち、他のスーパースポーツモデル程、強く主張すること無く日本らしさを感じさせる斬新的な美しさを宿している。リアから見ると左右のLEDテールランプの下のL字型に切られたグリルの奥にはラジエーターが覗き、3本のテールパイプを逆三角形にレイアウトしているのが特徴となっている。サイドウィンドウ後方にあるインテークにつながる窪んだラインの中にあるプッシュボタンでドアを開ける。幅が広めのサイドシルを越えて豪華なレザーで設られたバケットシートに腰を下ろすと、囲まれ感のあるキャビンは上質な造りを感じさせるものとなる。包み込まれるようなシートのドア側にレイアウトされたシルバーの2つのレバーによりスライドとリクラインを調整し、電動のリーチと上下調整が可能な手に馴染む円周部に芯金を持たない軽量なCFRP製ステアリングホイールにより、ドライビングに最適なポジションを確認する。SRSシートベルトエアバック内蔵の3点式ベルトを装着し、ステアリングコラムにキーを挿し込んでイグニッションをオンにする。ステアリングホイール上のエンジンスタートボタンを一瞬押すことでエンジンが始動するまで自動的にクランキングが行われ、すぐに安定したアイドリングが始まる。エンジン始動後のドライブモードのデフォルトはNORMALとなる為、右手でステアリング裏のパドルを引いて1速を選択する。そしてアクセルペダルをゆっくり開けていくと、電子制御式のクラッチが自動的にエンゲージされ滑らかに走り出す事が出来る。シングルクラッチ式のトランスミッションにもかかわらず、ジャダーを発生させずに動き出す仕草はトルコン式ATに近いものとなっている。タウンスピードでは足回りの固さと、過剰な遮音がされていない事によるメカニカル・ノイズが気になるが、それ以上にソリッドな乗り味は印象的なものとなる。ドライブモードをAUTOに変更すると自動変速が可能となり、2000rpmにも届かずにシフトアップがくりかえされ、斜め後方の視界さえ気をつけていれば、タウンスピードでの走行も難なくこなす事が出来る。この場合でもパドル操作を行えば、自動的にマニュアル操作も受け付けてくれる。極上のサウンドをもつ「LFA」のエンジンは、メインマフラーの排気入口部分にバルブが備わりエンジン回転数に応じて排気流路を切り替える仕組みをもつ。そのサウンドを試すべく高速に上がってみると、トップ6速で100km/hのエンジン回転数は2600rpmとなる。高速走行時のスタビリティもエアロシステムによる強力なダウンフォースの恩恵で、ケタ外れの直進安定性を示し路面に貼りついたような走行感が味わえる。キャビンには澄み切った荘厳なエンジンサウンドが響きわたるが、3000rpmを超えるとV10エンジンらしい高音系のサウンドを響かせ始める。驚くばかりのフレキシビリティーと滑らかなトルクを紬だし7000rpmあたりからは吸気音とメカニカルノイズを加えた渾然一体となったドラマチックなサウンドを楽しめる。エンジンのレスポンスは鋭く、素晴らしい快音を伴いながらレブカウンターは一気の勢いで跳ね上がり9000rpmまで全く勢いが衰える事なく回り切る。この「ミュージック」ともいえる鮮烈なV10サウンドは、ヤマハ楽器の金管部門が関わって完成されたもので、その快音に包まれて「LFA」を走らせる事は快感以外の何ものでもない。そのサウンドのグラデーションに伴い、回せば回しただけリニアに盛り上がりを感じさせる560馬力のエンジンパワーは、しっかりとしたボディと締め上げられた足回りに支えられ、洗練されたマン・マシーン・インターフェイスが保たれる。各操作系のバランスは軽すぎず重すぎない範囲で、敏感だけれど過敏にならない、上々のバランスと出来栄えを見せる。その圧倒的な高精度感はワインディングロードにおいても発揮され、スペチアーレ系の「フェラーリ」各車や、かつての「マクラーレンF1」など、並外れた高水準のスーパースポーツモデルに匹敵する雑味の無い一体感をドライバーに感じさせ、ずっと走り続けていたくなるモデルとなる。穏やかでコントロールしやすい抜群の操縦性を、コンパクトで控えめなオリジナリティの高いボディデザインの中に独自のメカニズムとともに内包しているのが「LFA」となる。国内のサプライメーカーにより日本製らしくこだわりの高品質で高性能車に仕立てられ、並いるスーパースポーツモデルとは異なり回しきればしっかりと独自の世界を感じられるV10エンジンがリニアにパワーを積み上げて行く。その緻密なエンジン特性も漸進的で”FR2駆“にとても良く馴染んで、懐深いドライバビリティを発揮する。100%内製される軽量で高剛性の車体と、的確に働くサスペンションは、極めてナチュラルにドライバーの意思に忠実にエンジンのパワーを活かしきれるものとなっている。6千km近くニュルブルクリンクでテスト走行を続け、イタリアのナルド・サーキットでは1万2千kmに及ぶ超高速耐久テストまでこなし、約10年の開発期間を費やし完成させたモデルとなる。この「レクサスLFA」は、純粋な内燃機関を持つクルマとして、おそらく空前絶後となる日本オリジナルの情緒あふれる本物のスーパースポーツとしてこれから先も語り継がれる1台となるだろう…