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カブリオレ ティプトロニック ミツワ
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
カブリオレ ティプトロニック ミツワ
ボディタイプ
外装色
ブラックメタリック
年式
1992 年型
走行距離
69200km
乗車定員
4 名
サイズ
長 424 cm 幅 166 cm 高 131 cm
エンジン形式
排気量
3600 cc
馬力
250
トルク
31.6
車検
令和7年9月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
ディーラー
内装色
サンドベージュ
燃料区分
ガソリン
幌色
ブラック

ポルシェの名前を初めて冠して1948年に登場した「356 No.1 ロードスター」はコンバーチブルトップを備えたオープンモデルだった。その後量産された「356」にも「カブリオレ」や「スピードスター」など魅力的なオープンモデルが存在しメインマーケットとなる北米で大きな人気を博した。オープンモデルは屋根が無い事で軽量化と低重心化を図る事が出来、風を浴びて走る事と構造上エンジンやエキゾーストの音がより多くキャビンに侵入する事により、スピード感を得やすくスポーツカーにとっては理想的なボディ形状のひとつとなっている。「356」の後継車となる「911」のチーフデザイナーであるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは初期の段階から「911」のオープンモデルを視野に入れてデザインを進め「セーフティカブリオレ」のスローガンのもと、最初に誕生したオープンモデルが「911タルガ」となる。1967年に発表された「911タルガ」は、オープンモデルの危険性について議論の高まりをみせていたアメリカ市場を考慮して、約20cm幅のロールバーが残るデザインが採用され、取り外し可能なトップとソフトな樹脂製リアウィンドウにより、オープンエアモータリングが楽しめるモデルとして存在していた。しかし1969年になるとリアウィンドウは耐熱のガラス製パノラマウィンドウに変更され、オープンモデルとしての楽しみは半減してしまう。改良を続けながら進化を続けた「911」は、排ガス規制やオイルショックを乗り越え、モデルチェンジの危機も乗り越えた1981年に「911ターボ・カブリオレ・スタディ」というプロトタイプが発表される事で、更なる進化を予感させた。このモデルが後の「911」シリーズ初の量産フルオープンモデル「911SCカブリオレ」や、パリ-ダカール・ラリーで活躍する「953」をはじめとする「911」の4WDモデルへの布石となった。当時ポルシェの社長だったペーター・シュッツは、1980年に初めて採算割れとなってしまったポルシェを再生するべく「911」をモデルチェンジすること無く、ラインナップの中心に置く再生政策を展開し、販売台数を着実に伸ばしていく事を試みた。その再生政策の手始めとして1983年に発表されたのが「911」初となるフルオープンモデル「911SCカブリオレ」となる。堅牢な幌により高速走行時の幌のバタつきを全く感じさせず、風切り音もクーペモデルと同等に抑えながら、コックピットに届くエンジン音はクーペより澄んで聞こえる程と高い評価を得た。また、オープン時には開放感を充分に感じられながらもウィンドウシールドが高めとなるため、正面より後方から巻き込む風に対策が必要とされた。ワインディングロードを走らせるとボディの剛性不足は最小限におさえられ、強いて言うならクーペと比べるとステアリングの感覚に幾分の変化が感じられる程度に抑えられている。「911」の持ち味をスポイルする事無くオープンエアモータリングが楽しめる「カブリオレ」は、3.2エンジンを搭載した「911カレラ3.2」にも引き継がれ「タルガ」とともに人気のオープンモデルとして、現代まで続く「911」が代替わりするごとに進化を続けながらラインナップされる人気のグレードとなっている。「ポルシェ911」は、1974年から生産されてきたビックバンパーが特徴となる「Gシリーズ」から始まる「930型」がモデルチェンジを受けて、1989年に新たに「964型」となる。この「964カレラ」のボディデザインは、ナローボディ時代から長く続いてきた見慣れた「911」のシルエットはそのままに、それ以前の「930型」から実に85%もの部分が新設計のパーツで組み上げられている。前後バンパーは「959」や「928」を思わせる、新たな時代に相応しく一体感のあるモノとされ、サイドスカートが加えられている。そうすることで「964カレラ」は、ずっとモダンなイメージにリニューアルされ、ダックテールスポイラーやターボウィングではなく、エンジンフードに収納される可動式リアスポイラー(電動モーターにより80km/hで起き上がり10km/hで元の状態に自動格納され、マニュアル操作も可能となる)を採用したリアエンドはテールライトのデザインを含めて、とてもスマートな「911」に仕上がっている。最初にお披露目された「ポルシェ964カレラ4」は、1988年終盤にプレス発表を南仏のニースで行い、ショーデビューは1989年パリ・サロンとなる。それは「911」にとって25周年という記念すべき年でもあった。翌年の1990年になると4WDの「カレラ4」に加えて従来からの2輪駆動となる「カレラ2」が加わり、それぞれの駆動方式に対してクーペ/タルガ/カブリオレのボディが用意された。またトランスミッションも5MTが「カレラ2」と「カレラ4」に、新開発となる「ティプトロニック」と名付けられた4ATが「カレラ2」と組み合わされている。また「964カレラ」のフロアパンは徹底的に新設計され、部分的に樹脂製のパネルが使われるフロアは、完全にフラット化されている。それと合わせて可動式リアスポイラーやウィンドウ周りのフラッシュサーフェス化などの効果で、空力特性が大幅に向上しCd0.395から0.32へと、より高速走行に有利なボディにアップデイトされている。また今回入荷した1992年モデルからはドアミラーの形状が「964ターボ」と同じエアロルックなデザインに変更されることにより、更にスタイリッシュなエクステリアとなっている。「964カレラ2カブリオレ」が搭載する、新型エンジンは空冷式を継承しながら、それまでの「930型」が搭載していた3.2エンジンからボア×ストロークともにそれぞれ5mm2mm拡大され、100mm×76.4mmとなり3600ccの排気量を持つ。スパークプラグを各シリンダーごとに2本ずつ配しデュアル・イグニッション化された空冷水平対向6気筒SOHC12バルブ・エンジンは「M64型」とよばれ、ボッシュ・モトロニック燃料噴射装置で制御され、11.3の圧縮比をもつ。またエキゾースト系も完全新設計となり、最高出力250馬力/6100rpmと最大トルク31.5kgm/4800rpmを発揮する。セラミック・ポート・ライナーの採用やクランクシャフトの軽量化、マグネシウム・パーツによる軽量化、更にクーリング・ファンの改良など様々なリファインが徹底して施されている。ドライサンプによるエンジンオイルの量は11.5リットルとなり、このエンジンと組み合わされるギアボックスは、ボルグワーナータイプのシンクロを備えた5速マニュアルトランスミッションと、ZFとポルシェの共同開発による新型4速トルコン式ATの「ティプトロニック」となる。「964型」以前の代々の「ポルシェ911」のトランスミッションは、MTメインの設定となっていたが、トルコン式ATが選択出来るようになった事で「911」史上初の本格イージードライブを可能とし、新たな顧客層の開拓に成功した。ポルシェが敢えて「ティプトロニック」と名付けたこの新開発のトルコン式ATは、従来の「Dレンジ」による自動変速だけで走らせるATとは異なり、シフトレバーを「Dレンジ」から右側のフリップゲートに倒し、前後に動かす事で任意にシフト・アップ/ダウンが可能となるマニュアルモードが装備されているところがポイントとなる。これによりATであっても積極的にシフトダウンをして「911」らしくスポーツドライビングを楽しむ事が出来るようになっている。このマニュアル操作が可能なATをスポーツカーに組み合わせるという発想は、以降ライバルとなる他のスポーツカー・メーカーに大きな影響を与えることとなった。足回りは「911」らしくフロントにストラット式、リアにセミトレーリングアーム式が採用され、それぞれにスタビライザーを持つ。大きく変化を見せたのはショックアブソーバーと組み合わされるバネが、ポルシェ伝統のトーションバー式から一般的なコイル式に変更されている事。特にリア・サスペンションはブッシュのコンプライアンスを利用してコーナリング時にトー・アウトを防ぐ「928」に採用されていた「バイザッハ・アクスル」と同じリア・ステア・システムが採用されている。更にステアリング・システムには「911」としては初めてZF製のパワーアシストが採用されたのも大きな注目ポイントとなっている。定評のあるブレーキは前後ともにブレンボ製のアルミ4ピストンのキャリパーに四輪ベンチレーテッドディスクが組み合わされ、初めてABSが標準装備された。1992年モデルからは5スポークタイプにデザイン変更されたホイール/タイヤのサイズは、フロント・6J×16サイズに205/55ZR16、リア・8J×16サイズに225/50ZR16がそれぞれ組み合わされている。今回入荷した車両には当時オプション設定されていたフロント・7J×17サイズに205/50ZR17、リア・8J×17サイズに255/40ZR17のホイール/タイヤセットが装備されている。インテリアはそれまでの「911カレラ」と同様のイメージでハイバック型シートを備えるが、調整は電動式となりシートヒーターが備わる。イグニッションキーは「911」の伝統となるステアリングポスト左側にレイアウトされ、見慣れたVDO製の5連メーターをおさめるナセル中央には6800rpmからレッドゾーンとなる大径のタコメーターがドライバー正面に備わり、キャビンの雰囲気はそれまで25年間作り続けられた「911」のスタイルが保たれている。また今回入荷した1992年モデルからはドライバー側/パッセンジャー側共にエアバックが装備されることで安全面でのアップデイトも怠りない。「ティプトロニック」を搭載するモデルの場合、スピードメーター内にシフトポジションを表示するランプが備わり、シフトレバーで「Dレンジ」をセレクトし普通にアクセル・ペダルを踏んでスタートする時は2速発進となっている。ペダル類は変更無くオルガンタイプとなるが、それほど時間を必要とせずに違和感なく操作出来るようになる。「964型」となって大きく進化したのはキャビンの空調システムで、クーラーではなくエアコンが装備されるようになった。そして「カブリオレ」の幌屋根の開閉はボタン操作による電動オートマチックとなるが、リアウィンドウは樹脂製スクリーンが採用されているので、クリアな視界を維持するための注意は必要となる。またスポーツカーとしては、ドライバーズシートからの視界が開けた「964型」となるが「カブリオレ」では、幌をかけた状態ではリア・クォーターウィンドウが無い為、制限されてしまうのが、クーペモデルとの違いとなる。全長×全幅×全高は4252mm×1652mm×1320mm、ホイールベース2270mm、トレッド前1380mm1374mm、車両重量1350kg、燃料タンク容量77、最小回転半径5.6mとなっている。「964カレラ2カブリオレ」の新車価格は1320万円(1992年・ティプトロニック・モデル)となり、生産台数は「964型カレラ2/4カブリオレ」あわせて14349台。「ポルシェ911カレラ2カブリオレ(ティプトロニック)」のメーカー公表性能値は0100km/h加速6.6秒、最高速度260km/hとなる。カーグラフィック誌による実測値は、最高速度259.2km/h0100km/h加速6.6秒、0400m加速14.4秒、01000m加速26.0(1992年型測定値)となっている。「ポルシェ911」が「930型」から「964型」にモデルチェンジを行った時期は、ちょうど「バブル経済」とよばれる時期と重なる。景気の急激な上昇と、3ナンバー車には23%5ナンバー車18.5%、軽自動車15.5%が掛けられていた物品税の撤廃により、新たに消費税3%が導入されるようになった。「バブル経済」に突入する直前、まだ「930型」が販売されていた1986年のポルシェの新車登録台数は831台。翌年「バブル経済」に突入すると倍の1676台となり、その後も年を追うごとに増え続け「964型」のラインナップが揃う1990年には4589台まで増加する。この記録を破るのは「991型」がデビューし「カイエン」や「パナメーラ」「ボクスター/ケイマン」がラインナップされる2012年の4661台まで待たなければならない。ちなみに2023年のポルシェの新車登録台数は8002台となっている。「バブル経済」や「取得税の撤廃」に後押しされたとはいえ、ここまでユーザー層を広げたきっかけが「964型」にはある。それは「ティプトロニック」をはじめとする、パワーステアリング、エアコン、ABSの採用など、技術の進化によるアップデイトを行いながらも「911」らしいフォルムを継承した事が大きな要因となるだろう。1963年フランクフルトショーで発表された「901」から始まった「911」の最終進化型が「964型」といっても差し支え無い。空冷フラット6エンジンを搭載する最後のモデル「993型」では、特徴的だったヘッドライトから続くフェンダーの峰は低められ、リア・サスペンションにマルチリンク式が採用されるなど、次の水冷エンジン搭載モデルである「996型」との繋がりをより強く感じてしまうからなのかもしれない。「911」の文法を守った「964カレラ2カブリオレ」のキャビンで強く感じられるのは、ノイズレベルの低減…空冷フラット6エンジン特有のサウンドは聞こえるが防音、遮音が「930型」から格段の向上を見せている。「カブリオレ」であっても、Cd値向上による風切り音の低さも効果的に働いている。トーションバーからコイルスプリングに変更された足回りは、低速での乗り心地は若干硬い印象になるかもしれないが、速度を上げる事により印象は好転し、ダンピングは極めて有効なモノとなる。その足回りと取り回しのしやすいボディサイズ、そして「ティプトロニック」によるクラッチ操作からの開放は街乗りでのクルージングにもゆとりをもって対応することが出来るようになっている。加えて、室内環境もエアコンが装備された事により近代化され、安定した空調環境の中リラックスしてドライビングする事が可能となった。充実した装備は約200kgの車重の増量をともないパワーアップしたエンジンを持ってしても、絶対的な性能は中速レンジまでは3.2・ヨーロッパ仕様の「911カレラ」と同等となる。しかし空力性能が向上した「964カレラ」では「ティプトロニック」であっても180km/h以上の高速レンジでは、200km/hからのフルスロットルで、ポルシェらしい力強い加速を味わうことも可能となっている。そんな場面でもキャンバス製の幌はバタつく気配を見せる事なく、クーペモデルと変わらないドライバビリティを味わうことが出来る。フルオープンボディでありながら、ボディ剛性が充分に保たれているのは「356」の時代からオープンモデルを作り慣れたポルシェならではとなり、スカットルシェイクやドアの軋みが気になる事は無い。幌をたたんでオープンで走り出すと抜群の開放感とともに、よりダイレクトに空冷フラット6のサウンドが耳に届く。それほどエンジン回転を上げて走らなくても充分に官能的なドライビングを味わう事が出来、それでも周囲の流れをリードするのはたやすく「ティプトロニック」の自動変速に任せてももどかしい思いに駆られる事は無い。空冷フラット6エンジンの鼓動を感じながら、古くからの基本設計を磨き上げる事で常に一線級のスポーツカーであり続けた「911」に、現代に必要なアップデイトを施された「964カレラ」。「ポルシェ911」の名前に相応しい動力性能をもちながらも「ティプトロニック」と「カブリオレ」を加える事で、少し肩のチカラを抜いて走らせるてもその存在感は充分に表現することが出来る。「964カレラ2カブリオレ」は、小型ハッチバックの代わりに街中を流す事も出来、多くの癖のあるクルマ達を乗り継いできた、クルマ好きの行き着く果てにも相応しい一台ともなっている。多くが存在する「911」の中でもとても希少な存在と言えるのかもしれない