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ドーン
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メーカー
ミッション
コラムオートマ
グレード
ドーン
ボディタイプ
外装色
ホワイト
年式
2016 年型
走行距離
15300km
乗車定員
4 名
サイズ
長 529 cm 幅 194 cm 高 150 cm
エンジン形式
排気量
6591 cc
馬力
571
トルク
83.6
車検
令和7年8月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
アイボリーレザー
燃料区分
ガソリン
幌色
ブラック

 ロールスロイスはチャールス・スチュワート・ロールスとフレデリック・ヘンリー・ロイスという二人の偉大な英国人の運命的な出会いから生まれた。進取の気性に富んだ若い貴族のロールスと、社会の底辺に育ち独学で電気工学を究めた、稀に見る良心的な技術者ロイス。対照的な二人が1904年に創業したロールスロイスは「シルヴァーゴースト」とよばれる高い性能と極度の信頼性、耐久性をもつモデルで世の中にロールスロイスを知らしめる事となる。技術者ヘンリー・ロイスは絶えず細部の改良を怠らず、同社の「The Best Car in the World」の伝統は、その後も引き継がれ完璧を追い求め続けて、万人が認めるプレスティッジ・カーとして、自動車界に君臨する存在となった。そのロールスロイスの商標権を1998年にBMWが獲得すると、200311日をもってロールスロイスはベントレーと袂を分ちBMWの傘下となり、イングランド南部のブライトン近郊、グッドウッドに新たなるロールスロイスの故郷ともいえる新工場を建設する。いかにもイングランドらしく丘陵地に建つガラスと木で覆われた本社工場は、ロンドンのウォータールー国際鉄道駅などを手がけた、巨匠ニコラス・グリムショウの設計によるもので、モダンで景観を損なわない美術館の様な外観を持っている。イギリスでは伝統的にバーミンガムやオックスフォードが「モータウン」となるが、ロールスロイスは敢えてウェストサセックスに居を構えた。それは新たなるロールスロイスを作るためのレザーやウッドを扱う為の熟練工を集める必要があり、海に近いこの地では古くからヨットや家具製造に携わる経験豊富な職人が多数存在するからに他ならない。そしてドイツのBMWで生産され送られてくるボディを受け入れるのに、ドーヴァー海峡に近いこの地のアドバンテージも大きなポイントとなっている。順調にこの工場で生産台数を伸ばしてきたロールスロイスは、20093月のジュネーブショーで「200EX」と名付けた「ファントム」より一回り小型のサルーンを発表し、このサルーンは翌4月に開催された上海モーターショーでは「ゴースト」として発表されることになる。ベイビー・ロールスの愛称で開発が進められた「ゴースト」はシャーシ、エンジンともに「ファントム」とは異なる成り立ちをもつ。また小型といっても「メルセデスベンツSクラス」や「BMW7シリーズ」より一回り大きなボディのサルーンとなり、観音開きのドアが採用されているのが特徴となる。「ファントム」がアルミスペースフレームを持つのに対して「ゴースト」は、コストと生産性を考慮されスチールモノコック製ボディを選択し、ロールスロイス車としては、よりカジュアルな日常使いの出来るサルーンとなっている。この「ゴースト」のパーソナル・クーペ版として開発されたのが「レイス」となり、2013年ジュネーブショーで発表される。ルーフからリアにかけてなだらかなラインをもつファストバックスタイルをもち、装備される大きな2枚のドアは、後ろヒンジで前開きとなる「コーチドア」が採用される。「ゴースト」より約180mm短いホイールベースをもちながらも全長5mオーバー、2.4トン超えの大型クーペとなっている。「レイス」に搭載されるのは「ゴースト」と同様に6.6ℓ・V12気筒エンジンをツイン・ターボで過給したもので、当時ロールス・ロイス史上最強の623馬力を発揮し、0100km/h加速を僅か4.6秒でこなすハイ・パフォーマンス・モデルとなる。ロールスロイスは「レイス」に続いて20159月にフランクフルトショーで、この「レイス」のオープンモデルともいえる「ドーン」を第4のモデルとして発表した。発表の場で、ロールスロイス最高責任者トルステン・ミュラー・エトヴェシュは「ドーンは、オーナーが全てに可能性を感じ、漲るような一日の始まりをもたらすミューズ(女神)」というコメントをもって、このモデルを表現している。「ドーン」という車名は、英語で「夜明け」を意味し、1949年に発表された1950年代の新しいロールスロイスの“夜明け”を担って誕生した「ロールスロイス・シルヴァ・ドーン」のバリエーションの中に、僅か28台だけ存在したオープン4シーターモデルに由来している。大型の6層からなるファブリック製の幌屋根をもち、ボディはクーペモデルの「レイス」と共有のデザインに見えるが、80%のボディパネルが「ドーン」専用となっている。フロントの45mm奥まったパルテノン・グリルと15°前に傾けられたスピリット・オブ・エクスタシーからの長いボンネットによりひと目でロールス・ロイスとわかるエクステリアは、ヘッドライトやデイライトの形状を変更することで「レイス」との差別化が図られている。幌を畳むとAピラーからウェストライン、リアシート後方のバルクヘッドまで一回りする「スリングショット・フォルム」が特徴となる「屋根を開けても閉めても、同じ様に美しいデザイン」が採用されている。「ロールス・ロイス ドーン」が搭載するエンジンは、BMW760Li(F02)に搭載されていた6ℓ・V12気筒(N74B60)6.6ℓまで拡大したN74B66型とよばれる60°V12気筒DOHCツインターボとなる。ボア×ストローク89.0mm×88.3mmから6591ccの排気量を得て、圧縮比10.0でピエゾ・インジェクターにより200barの高圧で、直接、燃焼室に燃料を噴射する直噴エンジンとなっている。インタークーラーを装備したギャレット社製ツインターボを採用するこのエンジンは、本来、ロールスロイスの慣習により出力・トルクは「sufficient(必要なだけ充分)」と表現されるところだが、最高出力570馬力/5250rpm、最大トルク79.5kgm/1500rpmを発揮する事が公表されている。ハイパワーでありながらも少燃費で高効率、環境に配慮されたエンジンで、BMWにより手組みにより生産されている。組み合わされるトランスミッションは変速スピードが速く、滑らかなチェンジが自慢のZF8速トルコン式AT(8HP90)となっている。この8ATには「Satellite Aided Transmission」とよばれるナビゲーションシステムのGPSデータを使って、クルマの進む先の、道の曲率や勾配の情報から最適なギア・ポジションを自動選択するシステムが搭載されている。足回りはフロント・ダブルウィッシュボーン式、リア・マルチリンク式となり、電子制御式のエアサスペンションとアクティブ・スタビライザーを装備する。この電子制御式のエアサスはスポーティなモデルに採用される“スポーツ”や“スポーツプラス”などのドライビング・モードの切り替えは設定されていない。GPSと地図データを使って、走行している道のカーブを先読みし、ドライバーの走らせ方と照らし合わせて、いかなる場合でも高級車らしくコンフォートな乗り味をプログラムの中から瞬時に自動で選択するとともに、キビキビとしたステアリングレスポンスを提供し、エンジン、変速機、パワステ、エアサスの連携したものとなっている。ブレーキは前後ともにベンチレーテッドディスクを装備し「コーナリング・ブレーキ・コントロール」が採用されている。これは、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)使用時にオーバースピードでコーナーに入った場合、自動的にブレーキがかかり、速度を落としてコーナーをクリアし、その後、設定されたスピードに自動復帰するというシステム。足回り、ブレーキともに正確なステアリングと連携し、高いスタビリティを備えるが、例えばBMWの様にオープンスポーツモデルである事を声高に主張せずに、見た目以上に軽快なダイナミクス特性をもっているところがロールスロイスらしいといえるかもしれない。タイヤサイズはフロント255/40R21Y XL、リア285/35R21Y XLとなっている。インテリアは、いかようにもオーダーが可能となりビスポークによる仕立てが楽しめる。ひと月以上かけられて磨き込まれたウッドパネルは、ヴァイオリンなどに用いられるブックマッチ加工(はぎ合わせ)が採用され、車両の中心線を軸に左右対称のデザインとなっている。上質なナチュラル・グレイン・レザーや、くるぶしまで埋まる毛足の長いコーンシルクによるカーペットなど、これ以上は望めない高いクオリティが展開する。イグニッションをオンにすると、センタークラスターの木目のパネルが開きインフォテイメントシステムのモニターが現れる。センターコンソールに備わるインフォテイメントシステムの操作パネルにはタッチパッド付きのロータリー式コントローラーが備わる。ダッシュボードの形状や、メーター類のレイアウトは「レイス」のインテリアに沿った、オーソドックスなデザインとなり、ステアリング・ホイールの径や太すぎないリムの形状はシャーシのセットアップと絶妙な調和を感じさせるものとなっている。ドライバー正面には3つのメーターが備わり、中央には260km/hまでのスピードメーター、その右側には燃料と水温のコンビメーター、左側にはパワーリザーブメーターが備わり、ロールスロイスの伝統どおりタコメーターは置かれていない。メインの計器類と共通のデザインとなるダッシュボードに取り付けられたアナログ時計は、盤面に白いエナメルの様なクリスタル・オプティックとよばれる上品な素材が採用され、それはスピードメーターはじめ計器類にも用いられている。「コーチドア」の採用によりアクセスしやすいフロントシートには、シートベルトの収納機構が組み込まれている為、リアシートへのアクセスを容易にするとともに、煩雑な見た目を排除したものとなる。オープンモデルとなる為、リアシートには専用の空調とシートヒーターが装備される。フロントシートでは、GTカーに乗るような低めのドライビング・ポジションとなるが、それでも座面は地上からかなり高い位置となり、スポーティでありながら見下ろす感覚も伴う独特のものとなっている。幌の開閉は約20秒を要し、その作動につきもののノイズは、限りなく低く抑えられている。このルーフ・メカニズムは、エンジニアが「サイレント・バレエ(音のない舞踏)」と表現し、試行と困難を経て実現したものとなり、50km/h以下であれば走行中も作動可能となる。この6層の幌は骨格が浮き上がってフォルムを台無しにしないよう配慮されたデザインとなり、閉じればそれまで聞こえていた騒音は、一瞬にして遠くに感じられる程、遮音性も高いものとなっている。
全長×全幅×全高は5295mm×1947mm×1502mm、ホイールベース3112mm、トレッド前1625mm、後1670mm、車両重量2560kgとなり、新車時価格は3740万円となっている。最小回転半径は6.35mとなる。メーカー公表性能値は0100km/h加速4.9秒、リミッター作動による最高速度は250km/hとなる。ドアハンドルを引くと後ろヒンジとなる大きなドアは、まるで大理石がスルリと滑るように重々しく無音で開く。高めにセットされたドライバーズシートに腰を下ろしてAピラーの根本にある「DOOR」のボタンを押すと、厳かにコトリとドアは閉まる。すっかりと靴の埋まる程のカーペットから足を浮かせてブレーキペダルを踏み込みエンジンスタートのボタンを押すとV12エンジンは遠くでささやかな咆哮を聴かせてくれる。コラムから生えたシフトレバーで「D」レンジを選びブレーキをリリースすると2.5トンオーバーの巨体はユサリともせず、鏡面上を滑走するように走り出す。シフトチェンジの際のショックはまるで感知出来ずに、街中を流れに任せながら走るのは容易で、車内の静かさだけが印象的なものとなる。軽くスロットルを踏み込むと周囲の交通の流れを簡単に置き去りに出来る程の加速を見せ、その車体の質量をまるで感じさせない。ステアリングインフォメーションは油圧式により正確かつ秀逸なものとなり、フロントタイヤの接地感がしっかりと伝えられる。高速走行では良好な直進安定性を示し、ロードノイズの少なさから長距離ドライビングも安楽なものとなっている。他のどの車種とも似ていないロールスロイスならではの乗り味は、オープンモデルの「ドーン」にもしっかりと受け継がれ、あらゆる条件、環境、速度において「マジックカーペット・ライド」が維持され、そのしっとりとした乗り心地には、2.5トンを超える車両重量もプラスに働いている。8ATにはマニュアルモードは無く「D」と「LOW」のポジションとなるが、この「LOW」モードが実質的な「スポーツ・モード」となり、音や振動の高まりを感じさせることなく、胸のすくような加速を見せてくれる。高速コーナーにおいても、これだけの巨体でありながら緩慢さや茫洋とした感じは全く無く、ステアリングに極めて忠実に安定感の高いコーナリングが可能となる。走らせる事に充分に楽しみを見出せるドライバーズカーであるとともに、インテリアにはひと月以上かけて仕上げられたウッドパネル、5時間かけて塗装面をチェックされ、更に5時間ラムウールで磨かれ鏡の様な光沢を放つボディ、リスの尻尾で作られた筆で人の手で描かれたコーチラインなど、古くから引き継がれた職人の技もしっかりと活かされている。BMW傘下になってからのロールスロイス各車は、メカニズム面で大きくアップデートされるとともに高いパフォーマンスを発揮し、もう一方では長く続く伝統も疎かにせず、見事なバランスを保っての、伝統と新しい技術の融合を見せ更なる進化を見せている。そんなラインナップの中で「ドーン」は、ロールスロイスならではの独特の乗り味による奥深い世界を見せてくれる貴重な存在であるとともに、世俗から一線を画した世界にありながらもクルマ好きの究極の夢が実現されたモデルのひとつとなっているのかもしれない…