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6速MT ワンオーナー
410
万円
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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
6速MT ワンオーナー
ボディタイプ
外装色
グリジィオツーリング
年式
2002 年型
走行距離
28.700km
乗車定員
4 名
サイズ
長 451 cm 幅 182 cm 高 130 cm
エンジン形式
排気量
3216 cc
馬力
370
トルク
50.0
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラウンレザー
燃料区分
ガソリン
幌色

ボローニャ市のマッジョーレ広場にある海神ネプチューン像が持つ「三叉の矛(トライデント)」を、マセラティ兄弟の中のアーティストであるマリオが、図案化し自社のエンブレムとして採用するイタリアの名門マセラティ。創業以来、波乱に富んだ道のりを歩んで来たマセラティだったが1997年、かつてレースやロードモデルで競い合ったライバルでもあるフェラーリの傘下にあった。それはフィアット会長ジャンニ・アニエッリの要請によるもので、企業としては巨大なフィアットだったが少量生産によるプレミアム・モデルを扱うノウハウを持ち得ていなかった事による。199212月に脳溢血で倒れたアレッサンドロ・デ・トマソから引き継ぎ、フィアット傘下となっていたマセラティの再建は、エンツォ亡き後のフェラーリ率いるルカ・ディ・モンテゼーモロに託された。ボローニャ生まれのモンテゼーモロは、すぐにドラスティックな改革に乗り出し、デ・トマソ傘下時に定着してしまったマセラティ製ロードモデルの、製造クオリティの低さによる信頼性の回復を目指した。マラネロからの全面支援を受け、200億リラ(12億円)を使って製造ラインの近代化を進めるとともに、当時のトップモデルであったマルチェロ・ガンディーニによるデザインの「クアトロポルテⅣ」は、800箇所の改善と、400点にも及ぶ新設計パーツを組み込まれ、改良されると「マセラティ・クアトロポルテ・エボルツィオーネ」として1998年春のジュネーブショーで発表された。搭載されるエンジンとボディスタイリングは、基本的には継承されるが、そのクーリング・システムは見直しが図られ、電装品は一新されることでメカニカル面での信頼性は大きく向上している。ほとんど手造りだったインテリアは、ステアリングが遠く感じられる典型的なイタリアン・ポジションから、シートフレームを作り直す程の改良が施される等、仕上がり精度や耐久性で進化を見せていた。その一方でデ・トマソ時代のマセラティの代名詞とも言われた、ダッシュボード中央部のナツメ型アナログ時計は姿を消し、フェラーリによる改革の意気込みをアピールしていた。新体制となり復活の烽火を上げる名門マセラティを象徴するモデルとして、1998年秋のジュネーブショーで発表されたブランニューモデルが「3200GT」となる。その車名は、開発段階では「ミストラル」という車名が復活するいう噂もあったがそれを覆し、マセラティがワークスレース活動を中止して本格的にGTメーカーとして方向転換をはかり、1957年のジュネーブショーで発表した「3500GT」に倣ったシンプルなものとされた。これは再生に向かうマセラティの気概を表したものとなり、モンテゼーモロの意向が反映されている。そのボディデザインはジョルジェット・ジュジャーロ率いるイタルデザインによるもので、エレガントなラウンドシェイプを基本とした、力強い張りのあるボディサーフェスを強調したスタイルをもつ。またイタルデザインらしく、スペース効率にも配慮された素晴らしいパッケージングと、ピニンファリーナに在籍していたエンリコ・フミアによるインテリアデザインが採用されている。ベースとなるのはガンディーニがデザインした「クワトロポルテⅣ」で「3200GT」ではホイールベースが10mm伸ばされているにもかかわらず、些かもそれを感じさせないところにデザイナーの技が活かされている。開発はマセラティがフィアット傘下にあった時代に始まり、同じフィアットグループ内のフェラーリが採用する足回りやブレーキシステムが活用され、当初は1996年のデビューを目標に開発が進められていた。マネージメントがフェラーリへと移行する中で、モンテゼーモロの指示により少なからぬ変更とスケジュール変更が行われ、開発は蛇行を余儀なくされた。モンテゼーモロは、リアトランク容量に拘り、当初は滑らかな曲線で構成されていたリアエンドを、後ろへ伸ばし垂直に切り落としたコーダトロンカ形状へと変更し、マラネロでの風洞実験とデザインの微調整を繰り返しながら、トランク容量拡大と空力的改善が図られた。ここで生まれたのが「3200GT」の特徴となるブーメラン型テールランプで、当時のフェラーリとマセラティを統括するフィアットオートのCEOだったパオロ・カンタレッラが、新テクノロジーとしてLEDライトの採用を強く要望した事がきっかけとなり、イタルデザインのスタッフが提案したデザインだった。市販車としては初採用となったLEDテールランプは、各国の型式認可を取得するのが困難で、販売を予定していた北米市場では認可が下りなかった。「3200GT」の鋼板モノコックボディはトリノのITOCA社で造られ、塗装はモデナのフェラーリが担当、COMAU社の当時最新のトロリーシステムが導入されリノベーションが図られたチーロ・メノッティ通りに面したマセラティ本社工場でアッセンブルされる。後に発表される「マセラティ・クーペ/スパイダー」は、良く似たボディデザインが採用されているが、テールランプのデザイン変更だけにとどまらず、大きく膨らんだボンネットはじめそのボディパネルに共通するものは無いに等しい。量産化に有利なパネル構造を持つ「マセラティ・クーペ/スパイダー」に対し、Aピラー付け根とフロントフェンダーの繋ぎ目を鑞付けし一体化されるなど、比べると手間の掛かる造りとなっているのは「3200GT」の方。今年87歳を迎えたマエストロ・ジュジャーロは、7月の終わりにサルデーニャ島のコスタ・スメラルダ(エメラルド海岸)のつづら折の道で、自身のランドローバー・ディフェンダーで回転しながら谷底へ転落。命の境界線が目前に現れる様な事故を起こし、腰椎3箇所の骨折に見舞われた。そのジュジャーロは「3200GT」のデザインに関して「カタチと快適性という、相反する要素を調和させる事が目標だった」とカーグラフィック誌に自身がもつコラムで語り「実用性と美しさを融合させ、街中でも喜んで使えるクルマで、愛好家のイベントに飾られるだけのモデルに終わらない、力強さの際立つ2+2GTを目指した」と結んでいる。そのコメントに表れている様に、力強さの際立つ「3200GT」のデビューをきっかけとして、伝統であるピュアなグラントゥーリズモの世界に回帰したマセラティは、今世紀に入り再び活力を取り戻す事となった。3200GT」が搭載するエンジンは、デ・トマソ時代のビトゥルボの最終進化型だった「シャマル」にも搭載された、コックドベルト駆動による水冷90°V8気筒DOHC32バルブとなり、ボア×ストローク80.0mm×80.0mmから3217ccの排気量をもち、IHITTW9型ターボチャージャーを2基装備する。「シャマル」のエンジンと大きく異なるのは、新型ターボチャージャーが採用されている事と、IAWウェーバーによるエンジンマネージメント・システムから、電子制御スロットルを採用するマニエッティ・マレリ製に変更されたこと、そしてアクセルは、バイ・ワイヤー化され、レーシーなシングルプレーン式クランクシャフトからスムーズな回転感をもつクロスプレーン式クランクシャフトに変更されている。8.0の圧縮比と「クワトロポルテ・エボルツィオーネ」同様に大きく信頼性のアップが図られたエンジンは最高出力370馬力/6250rpmと最大トルク50.0kgm/6400rgmを発揮する。ターボチャージャーの最大過給圧は1.1バールと高く、2700rpm5500rpmの広い範囲で45kgm以上のトルクを発揮する。近年の「MC20」に搭載されるネットゥーノ・エンジンと同様、純粋なマセラティ製エンジンとなっている。開発期間中にフェラーリ傘下へとマネージメント変更があった「3200GT」は、それまでのマセラティ製ロードモデルとは異なり、フィオラノ・テストコースでの最終評価も受けている。このマセラティ製V8エンジンは、ミッションケースがエンジン剛性の一部を補う構造を採用しているので、パワートレインのレイアウトはトランスアクスル方式では無く、オーソドックスなFR方式となる。組み合わされるトランスミッションは、ゲトラグ製の6MT(タイプ226)となり、12速にはトリプル・コーン、34速にはダブル・コーン・シンクロナイザーが採用され、滑らかな変速を可能としている。エンジンからの出力は、MTを経てアルミ製プロペラシャフトを介し「フェラーリ456GT」に採用されているものと同型のリア・ディファレンシャルへと伝達される。このリア・デフは、増速/減速時に25/45%のロッキングファクターをもつZF製の機械式LSDとなる。また精妙なプログラミングが施されたボッシュ製ASR (アンチ・スリップ・レギュレーション=ABSのセンサーを利用しスリップするタイヤに個別にブレーキをかけエンジン・トルクを制御しながら、車体を安定させる仕組み) が装備される「3200GT」は、このASRを常時オンの状態にしておく限りLSDは必要ないと、開発プロジェクト・リーダーのロベルト・コラーディはコメントしている。それでもLSDが装備されているのは、ASRをオフにして、サーキットでのドライビングでフルに性能を楽しんでもらうためだという。1999年には、6MTに加えオーストリアのBTR社が製造する4速トルコンATも選択可能となっている。このATはノーマルモードで8通り、スポーツモードでは16通りのシフトプログラムが備わり、走行状況に応じてコンピューターが最適なものを選択するシステムとなる。また2001年には足回りを強化して15mm車高を低め、BBS製専用ホイールにピレリP-Zero Corsaというソフトコンパウンド・タイヤを装備した「アセット・コルサ」という限定モデルも発表された。足回りはフロントにダブル・ウィシュボーン式、リアにマルチリンク式が採用されている。アルミ製のケースが採用されるショックアブソーバーは、ビルシュタイン製の高圧ガスを封入した電子制御式となり、14段階に自動調整され、スイッチによるノーマル/スポーツを任意で選択可能ともなっている。フェラーリのノウハウを用いて、前後ともにサスペンションアームとアップライトまで含めて、全て軽量な鍛造アルミ製の新設計となり、極太の鋼管サブフレームを介してボディに取り付けられている。「3200GT」がそれまでのビトゥルボ系の各モデルと大きく異なるのは、向上したパワーとトルクを、シャーシと足回りがしっかりと受け止め路面に伝えられる様になっているという事。ブレンボ社と共同開発されたブレーキシステムは、フロントに330×32mm、リアに310×28mmサイズのドリルド・ベンチレーテッド・ディスクが採用され、それぞれ4ポッドのアルミ製キャリパーと組み合わされるとともに、ボッシュ製ABS5.3を備える。ホイールはフロント8J×18インチ、リア9.5J×18インチとなり、それぞれ235/40ZR265/35ZRサイズのタイヤと組み合わされている。フィアット・グループに在籍しているエンリコ・フミアのデザインとなるインテリアは、それまでの水平基調のダッシュボードデザインとは大きく異なり、V字型のモチーフを使ったモダンな造りとなる。高めのスカットルと低くされたルーフ前端により、開放感より包まれ感を強く感じる上質なキャビンとなっている。光沢のあるウッドパネルがふんだんに使用された煌びやかさは影を潜めたが、中央部にはナツメ型アナログ時計がレイアウトされている。それまでのステアリングが遠く感じられる典型的なイタリアン・ポジションから、シートの電動スライドとステアリングのチルト/テレスコピック機構により、理想的なドライビングポジションを得ることが可能となった。ステアリングの奥には、ブルーの盤面が採用された6連メーターをおさめたメータークラスターがレイアウトされている。クラシカルなデザインのメーター類はマセラティではお馴染みのイェーガー製となる。センターコンソールの、空調ダイヤル、オーディオ、各種スイッチ類が収まるエリアにはウッドパネルが採用され、GTらしさを演出している。16速でダブルH型を形成するMTシフトレバーは短いロッドを介してギアボックスにつながる為、ダイレクト感は充分となるがストロークがやや大きめとなっている。コノリーレザーで覆われた前後シートは上質感あふれる造りとなり、前席シートバックを前方へ倒すと自動的に座面がスライドし、後席へのアクセスは容易に可能となる。後席シートは大人2人の乗車が可能で、荷物を放り込むにはためらう質感とスペースが確保されている。全長×全幅×全高は4510mm×1822mm×1305mm、ホイールベース2660mm、トレッド前1525mm、後1539mm、車両重量1590kgとなる。前後重量配分は56:44となり、燃料タンク容量は90、新車時販売価格は1100万円(6MT)/1150万円(4AT)、生産台数は4795台となっている。メーカー公表性能値は、最高速度280km/h0100km/h加速5.12秒、0400m加速13.3秒、01000m加速24.2秒となっている。カーグラフィック誌による実測テストでは0100km/h加速5.7秒、0400m加速13.7秒、01000m加速24.4秒を記録している。歴代のマセラティ製のGTは、エレガントなボディをもちながらパワフルで粗削りなテイストをもつエンジンが搭載されている。デ・トマソ時代終盤のガンディーニがデザインした、ビトゥルボ・モデルは、直線を活かした四角いボディを特徴としていたが、フェラーリ傘下で新時代のマセラティとして誕生した「3200GT」は、60年代的な美しい丸みを近代的に解釈した、他のモデルとは類似性をもたない個性的なモダンデザインが採用されている。モンテゼーモロはマセラティの持つヒストリーとエレガンスを深く理解し、それをフェラーリのもつスーパースポーツのイメージとの差別化に活用した。フェラーリは、当初ロードカーのビジネスをレースの糧と割り切っていたのに対し、マセラティのマネージメントを創業者であるマセラティ兄弟から引き継いだアドルフォ・オルシは、グラントゥリズモと名乗る事の出来る、格式あるロードカー造りを企業理念として持っていたところに両社の違いが発生する。発売当初の「3200GT」は、バイ・ワイヤーによるアクセル・レスポンスが過敏なセッティングとされ穏やかに発進させる事さえ危ぶまれる程と表現される事もあった。それが意図したものなのか、初採用による電子制御スロットルの熟成不足なのかは別にしていかにもこのモデルらしいエピソードとなっている。1999年のジュネーブショーでAT搭載モデルを発表した段階で、マッピングがマイルドな方向に修正されるが相変わらずハイチューンでレスポンシヴなターボエンジンと、ローギアードな6MTの組み合わせは、マセラティ製GTらしさを表現したものとなっている。ドアノブに手をかけドアを開いて、それほど低くはないドライバーズシートに腰を下ろし、ドライビングポジションを調整してエンジンを始動する。乾いたマフラーからのサウンドを響かせるターボ・エンジンは、アクセルに対してとても軽快にレスポンスを返す。重めのクラッチを踏んで、ギアレバーを1速に送り込みクラッチをエンゲージして走り出す。1速は低めのギア比をもつため、すぐに2速へつなぐ。2000rpmを超えたあたりからターボチャージャーがトルクを膨らませて、1.6トン近いボディを押し出すのがわかる。1500rpm以下のボトムエンドではトルクが細く低速域ではギクシャクしがちになるが、オープンロードでアクセルを開ければ、それまでの鬱憤を晴らす様な目眩く加速を味わう事が可能となる。絶好の舞台といえるのは高速道路で、100km/h6速で僅か2100rpmとなる。そのまま踏み込めば即座にターボが過給をはじめスピードを上げていく。4速あたりまでシフトダウンすれば、マセラティらしい蹴飛ばされる様な加速が楽しめる。タウンスピードでも硬すぎないカドの取れた乗り心地は、高速では一段と快適なクルージングが可能となり長距離も難なくこなす。ワインディングロードでは、ホイールベースの長さを意識させられるものの、ボディの大きさを持て余す事はない。フィオラーノで鍛えられた足回りは、かつてのビトゥルボ系とは比較にならない程、確実なロードホールディング性能を披露し、コーナーからの脱出時にアクセルを開け過ぎると、ASRが出しゃばる事無く介入し安定を保とうとする。重厚で快適な乗り心地と使い勝手の良さを併せ持つ「3200GT」となるが、ツインターボによるトルクの扱いは、それ相応のスポーツモデルを扱うセンスも必要とされる。「3200GT」は、コンペティションモデルとロードモデルの境目が明確では無かった時代の、グラントゥリズモの雰囲気を色濃く残しフェラーリの技術を導入して名門マセラティの復活を目指した貴重なマセラティ製GTとなる。その本性はASRのスイッチをオフにした先にありそうだが、並のロードモデルとは別次元の素早い反射神経をドライバーに要求するといわれ、乗りこなす程に達成感が感じられる辛口の本格GTとなっている。