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Type R
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メーカー
いすゞ
ミッション
マニュアル
グレード
Type R
ボディタイプ
外装色
オレンジ
年式
1971 年型
走行距離
54.420km
乗車定員
4 名
サイズ
長 400 cm 幅 149 cm 高 132 cm
エンジン形式
排気量
1584 cc
馬力
120
トルク
14.5
車検
令和7年11月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

令和5年に総合点検及び不具合箇所等整備を行っており、整備資料等揃っております。社外装備として、社外ステアリング、クロモドラ14インチホイール、ETCが装備されております。

いすゞ自動車の先祖を遡ると1876年に創業した東京石川島造船所に辿り着く。ここで初めて手がけた自動車が「ウーズレーA9」となり、石川島は本業の造船の他に民間の移動手段である自動車に興味を持っていた。1917年には研究用にイタリアで製造された「フィアット」を取り寄せ、分解して図面をとったり、組み立て直したりして自動車の生産準備をしていた。翌1918年には英国のウーズレー社と提携、技術を導入し生産を試みるが、製造に必要な材料の質の悪さもあり、満足のいくものには仕上がらなかった。その上アメリカからの輸入車が60007000円の時代に、石川島製「ウーズレー」は1万円と高額になってしまった。この結果から、戦争の匂いが色濃く漂い始めた日本では、政府がトラック製造に補助金を支給していた為、石川島は生き残る方法としてトラック造りに専念した。第二次世界大戦が終了し1949年になると石川島は「いすゞ自動車工業」として再出発することになり、トラックやバスなど大型ディーゼル車両の生産で日本を代表する自動車会社となった。「いすゞ自動車」の社名は公募によるもので、伊勢神宮に沿って流れる「五十鈴川」が、その語源となっているといわれている。この時代の「いすゞ自動車」のエンブレムは「いすゞ」の文字を囲む縁のデザインを「五十鈴川」のさざなみをモチーフとして用いている。1950年代をむかえ、英国のルーツ・グループの技術援助により「ヒルマン・ミンクス」のノックダウン生産をきっかけに再び乗用車の生産にも乗り出し、総合自動車メーカーを目指した。そしてトヨタ自動車、日産自動車とならび日本自動車業界の御三家といわれる程の成長を見せることとなる。1953年に1265ccエンジンを搭載して販売を開始した「ヒルマン・ミンクス」は、1955年には1389ccに排気量をアップし、当初は英国から輸入されていた製造部品も1957年には純国産化に成功する。そこで得られた技術を応用し、独自設計により開発を進めたモデルが1962年発表の「ベレル」となる。車名の「ベレル」とは「Bell=鈴」と「el=L=ローマ数字の50」を併せて「いすゞ=五十鈴」からの命名となり、モノコック構造のボディとフロント・ダブルウィシュボーン/コイルの独立、リア・リーフリジットサスペンションが採用され、スタンダードモデルとしての登場だった。1.52のガソリン・エンジンの他に、ディーゼル・エンジン搭載モデルもラインナップされていた。続いて1963年に登場した「ベレット」は、小型の「ベレル」という意味をもつ車名のとおり、4m級の小柄なボディながら、巧みなパッケージングによりキャビンの広さを確保し1.54気筒OHVエンジンを搭載して、高度経済成長期の日本マーケットで人気を博したモデルとなった。またリジットアクスルが一般的だった時代にダイアゴナルリンクによる後輪独立懸架を採用する事でシャーシ性能も高く評価されていた。1964年になるとオーソドックスな4ドア・サルーンから派生したスポーティな2ドア・クーペモデル「ベレットGT」が発表された。車名に用いられる「GT」とは、1950年代にイタリアのランチアが、自社の「アウレリアB20」に最初に採用した称号で、イタリア語の「Gran Tourismo」の頭文字を表したものとなり、快適に長距離をドライブ出来る高い性能と充実した装備をもつ車両を意味する。国産車として初めて、この「GT」の称号を与えられた「ベレット1600GT」は、SUツイン・キャブレターを装備し、88馬力を発揮する1.64気筒OHVエンジンを搭載、160km/hの最高速度を誇り、フロントにはディスク・ブレーキが採用されていた。四輪独立懸架や、ラック・アンド・ピニオン式ステアリングなどにより、スポーツ志向の強い「ベレット」のシリーズ中、トップモデルとして「GT」の称号に相応しい内容を持ち「ベレG」の愛称で親しまれ人気を博したモデルとなった。19635月に鈴鹿サーキットで開催された「第1回日本グランプリ」以来、年を追うごとに成長を続ける日本のモータースポーツでは、トヨタと日産の2大ワークス・チームに加え、1967年から滝進太郎の率いる、タキ・レーシングが海外から新鋭レーシングモデルを導入し、かつてない程エキサイトしたものとなっていた。196910月の「日本グランプリ」では2大ワークスに加え、本格的にワークス参戦を果たした「いすゞ」は「ベレットR6」と「いすゞR7」というミドシップ・プロトタイプ・レーシングモデルをスターティング・グリットに並べる事となった。「ベレットR6」に搭載されるエンジンは、19693月にレース・デビューを果たし、8月に開催された「鈴鹿12時間レース」で浅岡重輝/形山寛次により総合優勝を飾ったレーシング・モデル「ベレットGTX」に搭載されていたG161W型・直列4気筒DOHC1.6となり、ノン・シンクロ5段のヒューランドFT200トランスミッションと組み合わされていた。一方「いすゞR7」には、5のシボレー製V8エンジンが搭載され、総合上位を狙ったものとなった。「ベレットR6」に搭載されたG161W型エンジンのベースとなるG型エンジンは、1963年にデビューした「ベレット」の為に開発されたもので、扱い易く高性能を目標に鋳鉄ブロックでOHVヘッドを装備し、1.5版のG150型では63馬力を発生していた。ここから「ベレット1600GT」に搭載された1.688馬力のG160型を経て、ボア・ストロークが変更された1.6G161型に発展する。1968年に登場する「117クーペ」に搭載されるDOHCヘッドを装備したG161W型エンジンの構想は1965年頃から始まり、試作段階ではイタリアの名チューナーであるコンレロに委託され、そのノウハウを含めて熟成され開発されたエンジンとなっている。「ベレットR6」搭載にあたっては同じボア・ストロークを用いながら、ドライサンプ化によりエンジン高を下げ、キャブレターの口径拡大や圧縮比を高めることにより、180馬力迄パワーアップを実現していた。デビュー・レースでは同じクラスの優勝車である「ロータス47GT」に大差をつけられ総合18位に終わるが、翌年19704月の「全日本鈴鹿500キロレース」に参戦した2台の「ベレットR6」は、浅岡重輝、津々見友彦のドライブにより総合2位、4位の好成績を残し、そのポテンシャルの高さと併せて搭載するエンジンのパフォーマンスと耐久性をアピールした。19698月のレースで勝利したレーシングモデルの「ベレットGTX」のロード・モデルとして、同年9月に発表されたのが「ベレット1600GTR」となっている。「ベレットGTX」ではハンドメイドによるアルミ軽量ボディが用いられていたが、ロード・モデルではスチールボディとされ、正式な車名は「ベレット1600GT type R」とされた。このモデルには、前年に発表された同社のトップモデルとなる「117クーペ」用に開発されたG161W1.64気筒DOHCエンジンが搭載され、足回りを強化して、一回り小さなボディを活かした当時クラス最強を誇ったモデルとなる。そのエクステリアでは分割タイプの専用バンパーが装備され、ステーを介してフォグランプがレイアウトされるフロントマスクが強い個性を主張している。艶消し黒で塗られたボンネットとリアパネル、サイドストライプはスポーティさを強調し、フロントフェンダー上には後に「ベレGミラー」と呼ばれる流線型の専用ミラーが装備されている。フロントホイールアーチ後方とリアサイドに装着される「type R」のエンブレムは「R」の文字がグリーンで塗られているのが特徴となっている。「ベレットGT type R」に搭載されるエンジンは、G161W型とよばれる水冷4気筒DOHCでボア×ストローク82mm×75mmから1584ccを得る。ソレックスN40PHH-3キャブレターを2(今回入荷した車両は、ウェーバータイプのキャブレターに換装されている)備え、10.3の圧縮比から120馬力/6400rpmの最高出力と14.5kgm/5000rpmのトルクを発揮する。いすゞ自動車初となる、チェーン駆動のこのDOHCエンジンは、国産各メーカーで鎬を削る1.6DOHCエンジン搭載のスポーツ・モデルの中で、高い出力とレスポンス、高い耐久性を誇っている。同世代の「トヨタ・セリカGT」に搭載される2T-G型エンジンが115馬力/14.5kgm、「三菱ギャランGTO-MR」に搭載されるサターンAとよばれる4G32型エンジンが125馬力/14.5kgmを発揮し、70年代の排ガス規制が施行されるまでレーシングエンジンのベースユニットとしてもその性能を競い合った。G161W型エンジンと組み合わされるトランスミッションは4段フルシンクロ・クロスレシオのMTとなり、リア・デフにはLSDが標準装備されている。足回りはフロント・ウィシュボーン式+コイル、リア・ダイアゴナルリンク(スウィング・アクスル)+コイル+横置きリーフ・スプリングの4輪独立懸架が採用されている。「ベレットGT type R」のサスペンションは、GTに比べ格段に強化されフロントのバネは3.5kg/mmから5.3kg/mmへ、リアのコイルは同じものだが、横置きリーフが1枚から3枚に増やされ0.94kg/mmから3.1kg/mmとされている。ダンパーも強化型となり車高は10mm低い。ブレーキはフロントにディスク、リアがアルフィン付ドラム式となりサーボが装備されている。入力に応じて斬新的な効き示し、急制動時の姿勢変化も少ない。ホイールサイズは4.5J×13インチとなり、165HR13サイズのタイヤと組み合わされている。今回入荷した車両には、貴重な6J×14インチのクロモドラ製CD68ホイールが装備され、175/60-14サイズのタイヤが組み合わされている。インテリアは、前席の広さは必要かつ充分な空間をもち、現代の基準をもってすれば大径となる細身の皮巻き3スポークステアリング(今回入荷した車両には、オリジナルより小径となるアバルト・タイプの3スポークステアリングが装備されている)が比較的高めにレイアウトされている。ステアリングを通してその先には大径の7000rpmからレッドゾーンのはじまる8000rpmまでの回転計と、220km/hまで刻まれたスピードメーターが並び、小径の油圧計が併せてレイアウトされる。ダッシュボード中央には小径の左から燃料、電圧、水温の矢崎総業製の3連メーターが並ぶ。ダッシュボードは左右対称のデザインとされ、輸出用の左ハンドル仕様が考慮されたものとなっている。ステアリングから手を下ろした位置にあるウッド製ギアレバーはフロアから直立し、良く比較される同時代の「アルファロメオ ・ジュリアGT」との差を見せるが、ドライビング・ポジションには共通性が感じられるものとなる。その要因となるのはハイバック式シートなどによりGTらしさを感じさせるところや、理想的な配置のABCペダルにより、ヒールアンドトゥにも適しているなど、積極的にドライビングに集中出来る環境が整えられているからと考えられる。後席はヘッドルーム、レッグルームともに不足気味でオケージョナルシートの域を出るものではない。全長×全高×全幅は、4005mm×1495mm×1325mm、ホイールベース2350mm、トレッド前1260mm、後1240mm、車両重量970kgとなる。燃料タンク容量46、最小回転半径5.0m、新車時販売価格111万円となっている。メーカー公表性能値は、0400m加速16.6秒、最高速度190km/hとなる。カーグラフィック誌による実測データでは、0400m加速16.8秒、01000m加速31.9秒となり、ライバルとなる「セリカGT」の16.8/31.2秒、「ギャランGTO MR」の16.3/32.0秒と伯仲するタイムとなる。「ベレットGT type R」が4段ギアボックスであるのに対し、他の2車種は5段ギアボックスを装備し、01000m加速に於いては、その半分以上の距離をトップギアで走る為「ベレット」は不利となるところを、前面投影面積の小さなボディとエンジンパワーを活かしたギア比により世界的にも高水準といえる性能を記録している。どこから眺めてもバランスの良い「ベレットGT type R」のボディデザインは、ウェストラインから上下の量感の比率が、同世代の「アルファロメオ ・ジュリアGT」をイメージさせ、ライバルとなる「セリカ」や「ギャラン」がアメリカン・スペシャリティモデルの方向を意識しているのに対し、明らかに異なるテイストが感じられる。先に発表されたジュジャーロ・デザインによる「117クーペ」も同様に、この時代のいすゞは、ヨーロッパ志向を強く感じさせ「ベレットGT type R」には主張の強いシンボルカラーとして、凄みを効かせた艶消し黒のボンネットとメイプルオレンジのコンビカラーを用意する。他にマグノリアホワイト、ソレイユゴールドを標準色とし、更に13色のボディカラーが注文可能となっていた。フロントの分割バンパーや、左右フェンダーサイドとテール左に置かれた「type R」のエンブレム、のちに「ベレGミラー」とよばれたフロントフェンダー上の専用ミラーなど、ひと目でそれとわかる強い印象のモデルに仕上げられている。ドアを開けてシートに座り、エンジンを始動させるとキャブレターの吸気音とともにDOHCサウンドを奏で始め、標準装備となるスラッシュカットされたツインテールマフラーから排気音が存在感を主張する。心もち大きめなストロークをもつしっかりとした手応えのギアレバーで1速を選び、クラッチをエンゲージすると、意外な程スムーズに走り出すことが可能となる。G161W型・DOHC1.6エンジンは、低めの回転数でも極めてフレキシブルでよく粘り、扱いやすい印象をもつが、4000rpmを超えると俊敏なレスポンスとパワーの盛り上がりが感じられるものともなっている。排ガス規制を受ける前の活き活きとしたエンジンの息吹きと、小気味良く操作出来るシフト、ラック・アンド・ピニオン式ステアリングによるクイックなステアフィールによりドライバーは軽量ボディを思うままにどこまでも走らせる事が可能となる。固められた4輪独立懸架と、信頼性の高いブレーキシステムによるダイレクトなコントロール性を味わうと、新車販売当時「国内生産車中、最も優れた操縦性を備えていた」と賞賛されていた事が実感出来るだろう。個性的なエクステリアデザインと、元気なエンジン、ダイレクトな操縦性をもつ「ベレットGT type R」を味わうと、ヨーロッパ車だけに限られたことではなく国産車の歩みの中にも、豊かな時間があったことを改めて思い出させてくれる。これ程のインパクトある内容をもった個性溢れるクルマを生産していたメーカーが、乗用車部門から撤退してしまったことは残念なこととなるが、生産されて、いまだ元気に走れるモデルが残されている事がクルマ好きにとっては幸いなことだと思う…