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190SL
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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
190SL
ボディタイプ
外装色
ブルーメタリック
年式
1959 年型
走行距離
18650km
乗車定員
2 名
サイズ
長 429 cm 幅 176 cm 高 132 cm
エンジン形式
排気量
1897 cc
馬力
105
トルク
14.5
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
内装色
ダークブルー
燃料区分
ガソリン
幌色
ダークブルー

フルレストア車両、レストア資料ございます。

第二次世界大戦の戦時下で、工場の大半を失ってしまったメルセデスベンツは、戦前に築いた数々の輝かしい戦績も遥か遠くに想うだけのものでしかなく、彼らのレーシングヒストリーは完全に途絶えていた。そんな中で、再びサーキットでの栄光を手にするべく会社を立て直し、テクニカルディレクターのルドルフ・ウーレンハウトを中心に1952年、グランプリ用フォーミュラーとなるW196型と、レーシングプロトタイプ・W194型の開発が行われた。W194型プロトタイプは、ル・マン、カレラ・パナメリカーナ、ミッレミリアで次々に好成績をおさめた。このW194型の活躍に着目し、当時のメルセデスベンツに量産車としての生産、及びオーダーを入れるという行動をおこしたのが、オーストリアで生まれたドイツ系アメリカ人で第二次世界大戦後、ニューヨークで自動車ディーラーを経営していたマックス・ホフマンだった。ここから初代「SL」となる「300SL(W198)」が誕生する訳だが、マックス・ホフマンはポルシェには「356スピードスター」を、BMWには「503/507」の製作を依頼した人物でもある。メルセデスベンツの「SL」とは「Sport Leicht(シュポルト・ライヒト)」のイニシアルで「軽量なスポーツカー」を意味する。1954年に登場した「300SL」は、W198型のコードナンバーを持ちはマルチ・チューブラー・スペース・フレーム構造による軽量で高剛性のシャーシと、量産車としては初となるボッシュ製燃料噴射装置を備え、ドライサンプ式となる直列6気筒SOHC3エンジンを搭載した、スーパー・スポーツだった。比類なき高性能を備え、ボディサイドにも備わるスペースフレームの構造材から、特徴的なドア形状が採用され「ガル・ウィング」というニック・ネームが付けられた。日本のモータージャーナリスト小林彰太郎は、自動車専門誌カーグラフィックを創刊するにあたり、この「300SL」の動力性能テストを掲載するべく友人を通じて奇跡的に借り出す事に成功した。そしてそのインプレッションの冒頭で「メルセデス300SLのハンドルを握って思い切り飛ばす事、それは恐らくすべてのスポーツカー愛好家の見果てぬ夢に違いない」と綴っている。「300SL」は19542月のニューヨークで開催された第3回国際モーター・スポーツ・ショーで発表され、その場で同時に発表されたのがW121型とよばれる「190SL」のプロトタイプとなる。そして翌年19553月にはジュネーブモーターショーにおいて生産型がデビューをはたす。スーパースポーツである「300SL」は6820ドルと当時としては超高額車であったにもかかわらず、予想をはるかに上回る1400台という販売台数を記録する。メルセデスベンツは、マックス・ホフマンの進言により大きな利益をおさめたが、第二次世界大戦後のスポーツカー人気が高まる、当時、世界最大の自動車消費国であるアメリカにおいて「300SL」をイメージリーダーとして、更なるシェア拡大を狙って造られたのが「190SL」だった。広い国土をもちその移動手段として早期にモータリングが発達したアメリカではあったが、スポーツカーを楽しむという文化では後進国であり、第二次世界大戦後、同盟国であるイギリスから小型スポーツカーを持ち帰り自国で楽しむ帰還兵達により広めらた。戦争から10年近くが経過し、スポーツカーブームに湧くアメリカではオープンエア・モータリングを求める声も高く、そのリクエストにも対応していた「190SL」は、W120型とよばれたポントンセダンの愛称で親しまれる「180」セダンをベースに開発され、車名に含まれる「SL」のネーミングに相応しく250mm短縮されたホイールベースもち、チューンナップされたエンジンを搭載し性能向上が図られている。「300SL」のイメージを落とし込んだエクステリアデザインは、社内デザインスタジオのカール・ウィルフェルドを中心に行われたといわれている。4000ドル以下という価格設定により1963年までに25881台が生産され、そのうちの8割にあたる台数が輸出され、更にそのなかの4割はアメリカに渡り人気を得た。「190SL」とともに、19573月のジュネーブ・ショーには特徴的なルーフをカット・アウトした「300SLロードスター」も追って発表される。オープン化に伴い「ガル・ウィング・ドア」は取り払われ、左右座席の外側にあったフレームを低めるとともに乗降性の高い通常タイプのドアがつけられた。トランクスペース拡大の為、リア・アクスルの上のクロスメンバーは低められ、車重は補強の為やや重くなったが、エンジン出力を高める事で補われたパフォーマンスは「300SL」と同等を誇り、生産台数は1858台とクーペモデルを上回る人気を得た。「Sport Leicht=軽量なスポーツカー」から始まった「SL」の歴史は「190SL」と「300SLロードスター」の販売台数の結果から1963年にデビューするW113型「230SL」に引き継がれていく。以降「SL」はメルセデスベンツのラインナップ中のスポーツモデルとして代を重ねながら現代に至っている。中でも最新のR232型「SL」は、フロントグリルに大型のスリーポイントを掲げ、ターボとモーターで武装しながらも4気筒エンジンを搭載、キャビンのリアにはオケージョナル・シートを備え、屋根はキャンバス製とされ、まさに先祖返りともいえる成り立ちで登場している。ラグジュアリーでありながらも、初代同様に低重心と軽量化に配慮されたコンセプトはしっかりと「SL」として受け継がれている。「190SL」のエンジンは「180」セダン用をベースとしたM121型とよばれるもの。ベースエンジンは、同じ水冷直列4気筒ながらOHVサイドバルブ式で1767ccの排気量をもっていたが、SOHC化されボア・ストローク85.0mm×83.6mmから1897ccとされ「190SL」に搭載された。6.7だった圧縮比も8.5に高められソレックス製44PHHツインチョークキャブレターを2基装備しベースエンジンの倍近い105馬力/5700rpm14.5kgm/3200rpmのトルクを発揮する。このエンジンのパフォーマンスは、同時代の「トライアンフTR3」の2OHVエンジンの95馬力や、「オースティンヒーレー100」の2.7OHVエンジンの90馬力と比べると、ハイチューンなのがわかる。このM121型エンジンの圧縮比は57年のマイナーチェンジ時に8.7に高められ、更に60年以降のモデルでは8.8とされるが、エンジン出力値に変更は無い。組み合わされるトランスミッションは4速フルシンクロのマニュアルトランスミッションとなる。「190SL」はフロアユニット、フレーム、足回りを「180」セダンから流用され、セミモノコック構造のボディをもち、ドア・ボンネット・トランクリッドは軽量なアルミ製となっている。フロントサスペンションはコイルスプリングとテレスコピックダンパーによるダブルウィッシュボーン式、リアはシングルピポッドのスウィングアーム式となる。ブレーキは4輪ドラム式となり、1957年モデルからはATE製のブレーキサーボが装備される。タイヤサイズは前後とも6.40-13サイズとなっている。インテリアは、ウィンカーレバーを兼ねたクラシカルなホーンリングを持つ細身の大径ステアリングを通して、左に7000rpm迄のレブカウンター、右に210km/h迄のスピードメーターが並び、メーターはともにVDO製となる。クロームメッキされたメーターリングやトグルスイッチ類は良いアクセントとなり、製造された時代を感じさせる。ダッシュボード上に配置されたルームミラーはじめ、大小メーター類のレイアウトは「300SL」に倣ったものとなっている。グローブボックスに埋められた時計は56年のマイナーチェンジ時に追加されたもので、より「300SL」の雰囲気に近いテイストとなる。このマイナーチェンジ時にシートデザインと一部ベンチレーション・システムが改善され、より近代的にアップデイトされた。全長×全幅×全高は、4220mm×1740mm×1320mm、ホイールベースは「300SL」と同じ2400mm、トレッド前1430mm、後1480mm、車両重量1160kg。燃料タンク容量65、最小回転半径5.5mとなっている。メーカー公表性能値は0100km/h加速14.5秒、最高速度は、100mph(160km/h)出れば高性能スポーツカーといわれた時代に180km/hを標榜している。「190SL」のふくよかなボディデザインは50年代の柔らかさを感じさせる。ドアを開いてドライバーズシートに腰を下ろしダッシュボードまわりを見渡せば「300SL」にそっくりなメーターレイアウトとクロームの輝きが華やかでいながらシックにおさまる。前方に視線を移せばフロントウィンドウ越しに左右のフェンダーとボンネットセンターにあるパワーバルジを臨む事でスポーティな車に乗っている事を改めて実感するだろう。ドアを閉めるとオープンボディでありながらメルセデスベンツらしいしっかりとした剛性感を感じられる。これは、フロアから立ち上がりドアを支えAピラーへと続く部材と、ドア後方でドアキャッチを受け幌屋根の根元を支持する部材が分厚い鋳物の一体成形となっていることによる。センタートンネルも叩いてみると同様の固さを感じられ1160kgの車重におさめながらもオーバークオリティな圧巻のメルセデスベンツらしさが感じられる。イグニッションキーを捻りステアリングホイール右下のスターターボタンを押すとエンジンがかかり、まろやかな音でアイドリングが始まる。時代を超越した「300SL」のボディデザインを落とし込んだエクステリアデザインをメインで語られる事が多い「190SL」ではあるが、街乗りで扱いやすく、その上想像以上に「SL」の車名に相応しく車体を軽く感じられるくらい、エンジンの出力には余裕がある。レスポンシブと呼ぶには些か抵抗はあるが、低速トルクに不足は無く50年代に設計されたものとは思えないメルセデスベンツらしい快適性とスムーズさが味わえる。端正なデザインのシフトノブをもつシフトは小気味良く決まり、確実なチェンジが可能となる。やや重めのブレーキとリサーキュレーティング・ボール式のステアリングは年式を感じられるところとなるかもしれない。多くのヒストリックカーが把握すべきクセをもち、ひと通り修得する事でツボをおさえたそのクルマなりの気持ちの良い走りが出来るものとなるが、「190SL」には、その必要性を感じること無くセオリー通りの操作を受けて、それ以上の走りを実現してくれる。少しバタつく乗り心地は、メルセデスベンツにしては、ソフトなクッションのシートに助けられ不快とまでは感じないと思う。耐候性に優れた高品質の幌は、折り畳むとトノーの下に収まり、内部の骨組みはアルミ製となり、しっかりとしたものとなる。それでもやはりオープントップで走らせる「190SL」の開放感を味わって欲しい。フルオープンでこれからの季節、暖かさを感じさせはじめる風の香りや、咲き始める花を慈しむくらいのスピードで走らせるシチュエーションは、格別なものとなる。風で季節を感じながら街角にあるショーウィンドウに映る「190SL」のサイドビューを見るたびに、気持ちの高まりを感じられる事だろう